帰っちゃったな
「蘭、テスト勉強してるか?」
「一応な」
「俺なんか全然だよ」
「一也はもともと頭がいいじゃんか!別にテスト勉強なんかしなくてもさ」
そう、こう見えても一也は頭だけはいい!なぜかは知らないが。
「それが最近どんどん成績が落ちてきてるんだ」
「そうなのか」
「なんかこうやる気がでないというか・・」
一也でも、何かに悩むなんてことあるのか・・?
そこに理奈ちゃんがやってきた。
「蘭君、今日の勉強会なんだけど」
「勉強会?・・理奈ちゃん、勉強会って」
「えっ!」
ヤバイ!気づかれる。
「蘭、勉強会ってなんだよ?!」
「ん?・・」
今度は瞳登場。
マジでヤバイ!
「なに大きな声で?」
「蘭と理奈ちゃん、二人で勉強会やってるんだってさ!」
「それがどうかしたの?」
「えっ?どうって・・」
「そうだよ一也、お前たちもやればいいだろう!二人で勉強会」
「俺たちってまさか・・」
「瞳とに決まってるだろう!」
「なに言ってるのよ蘭」
「あーあ、それいいんじゃない!」
「理奈まで・・」
「あっそうだ!じゃあ四人でやらないか」
一也、何でそういう発想になるの。俺と理奈ちゃんは、かるく目を合わせ、『どうしよう!?』の表情をつくっていた。
「あーあ、そうしましょう!ね、理奈」
「えっ!・・そ・・そうね~」
瞳の圧力に屈してしまう理奈ちゃんでした。
「それで、いつもどこでやってるんだ?勉強会」
「図書館とかだよ」
「とかって・・蘭、他にもあるのか?」
「・・俺の家とか・・」
「そういうことかあ!」
なんか嫌な雰囲気だ・・。
「じゃあ・・今日は理奈の家だね」
「私の?」
「どう理奈?」
「私は別にいいけど・・」
「じゃあ決まりね!後で一也と行くね!」
「うん」
帰り道。
「なんか、まんまとやられたって感じだな!」
「ああいう流れになると、なかなか嫌とは言えないわ」
「そうだよね。あいつらも二人でやればいいのになあ・・」
「まあいいじゃない!たまには四人も・・」
理奈ちゃんがそう言うなら仕方ないか。
「ただいまー!」
「おかえり。蘭、アイスクリーム買ってあるから持ってって!」
「はあっ?どこに」
「理奈ちゃんの家。あれ、今日は理奈ちゃんの家でやるんじゃないの?!テスト勉強」
「ああ、俺そんなこと言ったっけ・・」
「母の勘よ!」鋭い母の勘。
「いくにはいくけど、一也と瞳も来るんだよ!理奈ちゃんの家に」
「あら、メンバーが増えたの?」
「無理矢理ね」・・あらあら!
「ちょうど4個入りだから、箱ごと持ってっていいわよ!」
「うん」
「それより、理奈ちゃんのお母さんって何歳なの?」
「そんなの知らないよ!」
「今日聞いてきて!」
「理奈ちゃんのお母さんに?」
「バカ!理奈ちゃんに聞くの」
「そうだよね・・でも、聞いてどうするのさ?」
「別になにもないけど・・気になるじゃない」
「そうかな?」
「そうよ!」
外階段にでると、ちょうど一也たちの姿が見えた。
「一也!」
「おう蘭!」
俺は1階まで下りて、扉を開けた。
「あれ?瞳、手ぶらじゃん」
「いけなかった」
「いけなくはないけどさ・・ノートぐらい持ってくればいいのに」
「一也に1枚もらうからさ」
瞳も俺に似て、勉強はあまり好きではない。
「蘭はあるの、理奈の家に来たこと?」
「いや、初めてだけど。お母さんになら会ったことはある」
「そう、初めてかあ・・お邪魔だったね私たち」
「そんなことないよ!」
俺たちは3階まで上がり、理奈ちゃんの家のチャイムを鳴らした。
ピンポン・・。
「はい」
理奈ちゃんの声だ。
「佐藤でーす!」蘭君!
そのあとドアはすぐに開いた。
「蘭君」
「おう!実はみんな一緒なんだ」
「よう!」
「来ちゃったよー!」
「うん、上がって!・・お母さん」
「お邪魔しまーす」
「いらっしやい!さあ中にどうぞ」
「はじめまして!田村瞳です」
「和久井一也です」
「・・佐藤です」
「はじめまして!理奈の母です」
「蘭の家は行ったことあるけど、なんか感じが違うな」
「そう言えばそうだね。ねっ蘭」
「うん!壁の色とか模様が違うからかな・・」
それにこっちの方が、断然きれいだ!
「冷蔵庫におやつが入ってるから!みんなで食べてね」
「ありがとうござおます」
「お母さん出掛けるの?」
「お夕飯の買い物よ。みんなゆっくりとしていってね」
「はーい」
「理奈のお母さんって綺麗な女性だね!」
「うん、すげえ美人」
「理奈のお母さんっていくつなの?」
「36歳かな」
そういえば母さんも知りたがってたな。女性ってそんなもんなのか・・それに母さんと同い年だ!
理奈ちゃんの部屋もちょっと覗いて見たい気もするけどなあ。俺からはとてもそんなこと言い出せないし。瞳がそれを言い出してくれればいいんだけど・・。
「理奈、理奈の部屋見せてよ!」
えっ!うそー!俺の考えてることが通じたのか・・!?
「いいよ!こっちだけど・・」
理奈ちゃんが指差した部屋は、下の階の俺の部屋と同じ場所だ!
理奈ちゃんがまず向かい、次に瞳。そして俺も二人に続こうとしたとき
「男子はダメよ!レディの部屋を勝手に覗いたら」
そんな瞳の低い声が、俺の頭を貫いていた!
・・だよね!
結局俺と一也は、ポカンと二人の戻ってくるのを待つ羽目に。
そして
「そろそろ終わりにしようか!」と瞳。
「そうだな、結構はかどったぞ今日は!」
「私もこんなにメモっちゃったわ!」
「瞳にしては上出来だね」
「あら蘭君、ほめてくれてありがとう」
「理奈、お母さんによろしく言っておいて!プリンアラモード、とても美味しかったって」
「うんわかった!」
「さあ、一也行くよ!」
「おう!蘭・・」
「蘭はいいの!」俺はいい?
「あっ!そうだったな」そうだったな?
「じゃあ理奈またね!」
「理奈ちゃん、ありがとうねー」
「うん」
あっ、帰っちゃった・・。
ということは、ということは、ということは理奈ちゃんと二人きり!!夢なのかあ・・。
でも、いざ二人きりになってしまうと・・身体中が緊張しちゃってるー!あー、トイレいきたーい。
「帰っちゃったな!」
「帰っちゃったね」
「あのさ」
「ん?なに」
「俺と同じってどういうこと?昨日言ってただろ」
俺は昨日から気になって仕方がない。
「ああ・・」
「教えてくれない?」
「ん・・どうしようかなあ~」どうしようかなあって・・。
「ダメなの?」
「今はちょっと・・蘭君のお母さん、答え知ってるよ!」
「えっ」
母さん、やっぱり知ってたのか!