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蘭君と同じよ

「お邪魔しました。ケーキまでご馳走になっちゃって!」

「どういたしまして。またいらっしゃいね」

「ありがとうございます」

「お姉さん、また来てね!」

「うん、ありがとう!またね翼くん」


蘭君が外階段まで見送ってくれた。

「さあーて、頑張るぞー!」

「なにを頑張るの?理奈ちゃん」

「えっ・・うんん、こっちのこと。蘭君、明日楽しみにしててね!」

手作りチョコレートよ!世界一美味しいチョコレートをプレゼントするからね。

「うん」

「じゃあね!」


「ただいまー!」

「お帰りなさい」

「さあ、お母さん始めようか!」

「ずいぶん気合い入ってるわね!」

「あたりまえよ!世界一のチョコレートを作るわよ・・」

「フフフッ」


「あっそうだお母さん、今日ね、図書館じゃなくて蘭君の家で勉強したのよ!」

「あら!そうだったの」

「蘭君のお母さんにケーキまでご馳走になっちゃった」

「じゃあ今度お礼を言っとかないとね」

「うん」


「よし、始めましょうか!まずこの板チョコを包丁で細かくするのよ」

「OK !」

「こうやって角のところからね!」

「・・こんな感じでいいかな?」

「うん、上出来。次にガナッシュを作るわよ!」

「ガナッシュ?」

「チョコクリームのこと」

「どこの言葉かな?」

「さあ・・フランス語?かな」

「ふーん」

「生クリームを火にかけて、沸騰しそうになったら細かくしたチョコと合わせて、素早くかき混ぜる!」

「・・意外とこれは力仕事」

「そうでしょ!家事って意外と力仕事が多いのよ」

「ふうっ・・」

「あとはラム酒をたらして・・はい、じゃあちょっと休憩」


・・「そろそろかなあ・・うん、いい感じに固まってきてる。これをしぼり器でしぼり出して!」

「うう・・よーっと!」

「おう!理奈センスいいわね」

「お母さんの娘ですから・・」


「冷えたらこれを均等に切り分けて、あとは団子みたいに丸めるよ」

「うわ!チョコが溶けちゃう」

「手が温かいのよ!手を冷やしてからやってごらん」

「そうか!」

「ほら、うまくいったでしょ!」

「ホントだ!」

「あとは湯せんした残りのチョコで、団子をコーティング。最後にココアパウダーを振りかけて・・」

「・・よいしょっと!あとはこのパウダーね」

「そう!」

「これでいいかな!?」

「うん、パッチリよ!」

「やったー!世界一のチョコレートの完成よ」

「こういうチョコのことをトリュフって言うのよ」

「トリュフかあ・・あっ!入れる箱がないわ」

「ちゃんと買ってきてるわよ!」

「良かった・・でも2つはないよね?!」

「翼くんでしょ!あるわよ」

「さすがお母さん!」


13日の金曜日、今月は1日が日曜だったから、必ず13日は金曜日!世の中にはこの日は不吉だと言う人もいるけど、私にとっては、忘れられない日になりそうだ。

初めて蘭君の家に行き、好きな男性(ひと)のために、初めてのチョコレート作り!私の特別な記念日。


そしてバレンタインデー・・。

私はトリュフの入った箱を、キレイにラッピングして並べた。うん完璧!

「理奈、あなた味見はしてみたの?」

「うんん」

「あげる前に1つ食べてみたら!」

「そうだね!美味しくなかったらシャレにならない・・」

私はチョコの団子を1つ指でつまんだ。チョコパウダーが指につく。そしてそれをゆっくりと口に運んだ!

「・・美味しい!」

「どれどれお母さんもいただこうかな・・うん、最高の出来!」

チョコとクリームが口の中でとけてゆく、ほどよい苦味と甘味。鼻からぬける絶妙な香り・・。


「お母さんは何点つけてくれる?」

「もちろん100点満点よ!」

「イエーイ!」

「さあ、早く渡してらっしゃい」

「うん・・ん?」

「どうしたの?」

「メッセージカード・・」

「ああ・・いらないわよ!そんなの」

「えっ!?」

「直接渡すんだから言葉で言えば!」

「えー・・」

「『いつもありがとう』とか『これからもよろしく』とか『愛してます!』とか」

「愛してます!!?」

「えっ?愛してないの」

「そんなことないけどさ・・」

「だったら・・」

「・・とりあえず行ってくるわ!」

照れちゃって!


私は2つの箱をもって外階段をかけ下りた。そして扉をあけ205号室の前で、大きく息をはいた!


何て言って渡そうかなあ・・。まさか愛してるなんて言えるわけないし。そのときだ!

「あら、理奈ちゃん!」

「えっ!・・あっ、蘭君のお母さん。昨日はありがとうございました」

「うんん、いいのよ。もしかしてバレンタイン?!」

「はい」

「蘭なら中にいるわよ!どうぞ」

「いえ、今はこれを渡すだけで・・」

「そう・・蘭、理奈ちゃんのことが大好きみたいよ!」

「えっ!」

「これからもあの息子()のことよろしくね!」

「・・はい!」

「いま呼んでくるね」

大好きか!


そして蘭君が現れた。

「理奈ちゃん!」

「蘭君、これ!」

「おっ、ありがとう!」

「蘭君・・私も蘭君と同じよ!」

「ん?何がだ」

「何でもいいの!翼くんいる?」

「いるよ」

「翼くんにもこれ!」

「翼のやつ喜ぶぞー!・・翼、翼」

「どうしたの?」

「翼くん、はいこれ!チョコレート」

「わあー!ありがとう理奈お姉さん・・お母さーん、これもらったよー・・」

「じゃあ、またあとでメールするね」

「うん、わかった」


蘭君と同じ!そう、私も蘭君のことがとても好きよ!











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