生きてて良かったー!
昨日のハートマークの感動が、まだ俺の胸のなかを占領してる。朝ご飯さえうまく喉を通っていかない。こんなときは、あれが一番だな!俺は立ち上がり冷蔵庫にむかった。そして玉子をを取り出す。
「翼もいるか?玉子」
「うん!」
ごはんの中央に少しくぼみをつくって玉子をおとす。しょうゆをたらして少しかき混ぜて・・調味料をパッ!特製玉子かけご飯の出来上がりだ!
それを一気に喉に放りこみ、コップ一杯の野菜ジュースで流し込む!
「蘭、もっとゆっくり食べたら!まだ時間あるんだから」
「フーッ!満足」
そして俺は二回目の歯磨きを済ませた。
「蘭、なんか今日気合い入ってるね!」
「わかるか翼。今日の俺は気合い入りっぱなしなのさ!」
「空回りだけはしないでよ!」
「ん?ちょっと母さん・・じゃあ行ってくる」
「はい、気を付けて!」
「ん?お母さん、蘭、カバン忘れてる!」
「たくっ・・すぐに取りに来るわよ」
あっ!忘れた。俺は慌てて家に戻りカバンを握りしめた。
「行ってくる」
そして再び玄関を出た。
「ねっ!」
「うん」
どんな顔で理奈ちゃんに会えばいいかな・・?なにしろ昨夜ハートマークを交換した仲だもんな。理奈ちゃんなんか『×2』までつけちゃって。ん・・。
「蘭、今日学校いくの早くない?」
「そうね!いつもより10分早いわね」
「歯なんて2回も磨いてたし」
「もう一回戻ってくるわよ!」
「えっ?!」
俺は扉を開けずしばらく考え込んでいた。やっぱりちょっと緊張してるかな俺!?
そして・・俺は外階段の扉ではなく、家のドアを開けた。
「ねっ!」
「うん」
「トイレ、トイレと・・・」
俺がトイレを出ると
「さあ、僕も学校行かなくちゃ!」
「えっ!もうそんな時間なの」
「蘭、急がないと遅刻よ!」
「はーい」
俺はわけがわからない。ただ勢いのまま外階段の扉を開けていた!
「あっ!蘭君」
「おはよう理奈ちゃん!急ごう、遅刻する」
「えっ?まだいつもより早いけど・・」
「なに・・」
あの親子め!だましたな・・。
「蘭君、昨日はありがとうね!」
「いや、その・・こちらこそどうも!」
なに言ってるんだ?俺は。
俺と理奈ちゃんは、他愛のない話をしながら学校に向かった。でもやっぱり気まずい感じ・・。
そこに
「おーい蘭、理奈ちゃん!」
「あっ!和久井くん、おはよう」
「おはよう!」
一也だ!こいつが理奈ちゃんって呼ぶのは気にくわないが、こんな時には場を盛り上げてくれるナイスキャラクターの持ち主だ!
教室に行くと、今度は瞳がやって来た。
「はい蘭、これ!」
「ん?」
「バレンタイン。明日休みだからさ学校」
「サンキュー」
「あれ?・・おい瞳、俺には」
「なにが?」
「なにがって・・」
「冗談よ!一也のもちゃんとありますよ。ギリだけど」
「一言よけいだよ」
「フフッ」
愉快な二人を見てほほえむ理奈ちゃん。
「理奈は明日渡すんでしょ!蘭に」
「うん、そのつもりよ」
「蘭はいいよな!これ義理チョコなんて言われないもんな」
「瞳だってわざと言ってるんだよ!なあ瞳」
「そうなのか?瞳」
「もううるさいなあ!ギリはギリよ」
そう言って瞳は行ってしまった。
「なんだよあの態度!」
「好きの裏返し・・」と理奈ちゃん。
「えっ?!」
「早くもらってこいよ!義理チョコ」
「しょうがねーな・・」
そして、瞳を追いかける一也。
「相変わらずの迷?コンビだね」
「うん!」
バレンタインかあ・・去年は確か、瞳からの義理チョコ1個だけだったな。でも今年は理奈ちゃんの本命チョコが待ってる!あー、俺はなんて幸せな男なんだ~・・。
「蘭君、今日も図書館でいい?」
「うん・・」
「ただいまあ!」
「おかえり」
「今日も図書館に行ってくるね!」
「勉強だったら家でしたら!?おやつぐらいなら用意してあげるわよ・・」
「えっ、家で?」
「理奈ちゃんに言ってみたら」
「ああ・・」
そして俺は、一足早く、外階段で理奈ちゃんを待つことにした。そろそろかなあ・・。
しばらくすると階段を下りる足音が!
「あっ!蘭君早い・・」
「うん・・理奈ちゃん、今日俺の家で勉強しない?」
「えっ!」
「俺の・・」
「いいの?」
「ああ」
「うん!!」
「行くよ」
「あっ、ちょっと待って蘭君。なんだか緊張するな」
「遠慮しない、遠慮しない!」
「うん」
そして俺は家のドアを開けた。
「母さん、理奈ちゃんだよ!」
最初に現れたのは翼だ!
「お姉さん、いらっしゃい!」
「こんにちわ翼くん」
そして母さん・・
「あら!いらっしゃい。待ってたわよ」
「すみません、突然お邪魔して」
「いいのいいの、さあ上がって!」
「はい」
ついに理奈ちゃんが俺の家に・・来たー!!
「蘭の部屋でもいいけど、このリビングのテーブルで勉強したら!二人で出来るでしょ」
「ああ」
「ありがとうございます」
「理奈ちゃんの話は、よく蘭から聞いてるのよ!」
「毎日だよね!」
「そうね」
「私もよく母に蘭君のこと話すんですよ!」
「あらそう!こんなバカ息子のことをね・・」
「母さん・・バカ息子はないだろう」
「あっそうか」
「フフフッ・・」
母さんのはからいで、理奈ちゃんが俺の家に来てくれた。夢のようなこのひととき。
あー、生きてて良かったー!