預言
私は外階段を急ぎ足で下りていった。約束の時刻よりまだ早いけど、なんか気持ちが晴れ晴れして・・。
そして、いつものように蘭君が現れた。
「あっ、おはよう蘭君！」
「おはよう」
「今日の試合頑張ろうね！」
「うん・・あの？・・」
「なに？」
「いや」
「変な蘭君。さあ行きましょう！瞳たちと合流しないと」
「ああ」
蘭君どうしたんだろう？なんか不思議そうな目で私を見てたけど・・。あっ！昨日のメールが原因かな。
「蘭君、昨夜は遅い時間にメールしてゴメンね」
「俺なら全然へいきだよ！いつもまだ起きてる時間だから」
「そう」蘭君っていつも何時に寝てるの？
「理奈ちゃん、何か良いことあった？」
「良いことっていうか・・お父さんは、やっぱり私たち家族を愛してくれてるんだって！それが嬉しくて・・」
「ふーん・・」
今はお父さんのやさしさがとても感じられて、ウキウキさえする気持ちなのよ！蘭君にも会ってもらいたいな、私の大好きなお父さんに・・。
そして私たちは瞳たちと合流して、△△中に向かった。
「集合！練習試合だからといってダラダラとしたプレーはしないこと。男子も女子も、公式戦のつもりで挑むように！今日の課題は、チームプレーの再確認だ。それと、相手に対するリスペクトも忘れるな！」
「はーい！」
まずは女子から。私たちは位置についた。
「理奈ファイト！」
「理奈ちゃんガンバレよー！」
なんかちょっぴり照れ臭いな。
ピーッ！
試合が始まった。
私の足元におもしろいようにボールが飛んでくる。私は前に横にとパスを出し、ゴールのアシストに努め、時には積極的なドリブルで相手をかわしていった。
みんなの活躍で、試合は5対0の圧勝だ！
「理奈ちゃんやったね！」
俺と理奈ちゃんはハイタッチ！
「今度は蘭君たちの番よ！頑張ってね」
私はふと蘭君の足元を見つめた。蘭君が愛着があると言ってた黄色いシューズに、私のあげたオレンジの紐が絡まってる！
いよいよ男子の番だ！蘭君ガンバレ！
「蘭！しっかりー」
「蘭！シュート頼むぞー」
ピーッ！
試合が始まると圧倒的強さをみせる相手チーム。蘭君の言うように確かにレベルが違う。でも同じ中学生よ。
「くそーっ！何もさせてもらえないや」
「蘭君、はいこれ！」
私は蘭君にタオルを手渡した。
「ありがとう・・やっぱり強いなあ△△中は！」
「蘭君、まだ試合は終わってないよ」
「そうなんだけどさ・・」
「オーバーヘッドで決めちゃえ！」
そんな言葉が不意に私の口をついた。
「理奈ちゃん・・」
「必ずチャンスは来るはずよ！」
「うん！」
ピーッ！
「蘭君、あきらめないで！」
私は思いきり叫んだ！
その時だ！
D Fが相手のボールをカットして、どんどん前に走り込んでいく。そこから鋭いパスがMF に届いた。
「蘭！」
蘭君もゴール前に！
その蘭君めがけてボールが蹴り出された。
お願い、蘭君決めて！
私は蘭君の動きを見つめた。
飛んでくるボールにタイミングを合わせ、蘭君はジャンプ！空中を回転する蘭君の左足は、正確にボールを捉えていた！決まる！！
蘭君の左足から魂を得たボールは、勢いを増し激しくゴールネットを揺らした！
「やったー！！」
蘭君のオーバーヘッドでのゴールを境に、うちのチームの猛攻が始まった！切れのあるドリブル、鮮やかなバス回し。しかし、あと一歩というところ、なかなかゴールは決まらない。さすがに相手は強豪だ。
結局得点はその1点だけ。だけど最後に見せてくれたあの攻撃があれば、今度こそ勝てるはずよ！
「蘭君やったねー！」
「だけど試合に勝たないとな」
「うんん、すごかったよあのオーバーヘッド！私の預言当たったね。それに、それからのみんなの動きも良かったよ。あともうちょっとで点がとれそうだったもん！みんな蘭君のオーバーヘッドに刺激されたのね・・」
「そうかなあ・・」
「うん、絶対そうよ！今度の試合はきっと勝てるわ」
「それも預言！？」
「めちゃめちゃ当たる私の預言よ！」
ホントだよ・・。
