♪ラララ・ラララ
その日の朝刊には驚きの文字が並んでいた!
『○○社設計ミスが原因! 1993年のシベリア鉄道の大惨事』
1993年、4名の乗客が犠牲になった鉄道事故。原因は・・・。
「お母さんどうしたの?怖い顔して」
「・・えっ?」
「なにか事件?」
「あっ、うん。理奈も気を付けてね!学校の行き帰りとか」
「それなら蘭君と一緒だから大丈夫よ」
「そうだったわね・・」
なんか変だな?今日のお母さん。
「行ってきまーす」
「いってらっしゃい」
「おはよう理奈ちゃん」
「おはよう」
「あれ?なんか元気ない?」
「そんなことないんだけど、ちょっとお母さんが気になって・・」
「どんなふうに?」
「怖い顔で新聞を見てるし、私が聞いてもなんだか上の空だし・・ちょっと様子が変だったんだ」
「そう」
「私の勘違いならいいんだけど・・」
あの人がついに動いたんだわ!お義父さんに似て正義感の強い人だから、黙ってはいられないのよね。しかし、あなたが危険な目にあっては絶対にいけない!理奈のためにも無茶なことだけはやめてほしい。
『22年前のシベリア鉄道の脱線事故が、○○社の設計ミスが原因だったという噂の真相を探るため・・・』
それは不意にテレビから流れてきた言葉だった。
「○○社・・お母さん、○○社ってお父さんの会社だよね!?」
「ええ」
「設計ミスが原因の鉄道事故って・・」
「・・理奈には話しておくべきだったわね。お父さんが今やろうとしていること、そして、お母さんと理奈だけが、なぜ好きだった北海道を離れなければならなかったかを・・」
お母さんは、お母さんの知るすべてのことを私に話してくれた。おじいちゃんのこと、お父さんのこと、私とお母さんのこと、そしてあの鉄道事故のこと・・。
「じゃあ、私たちに危険が及ばないようにわざと?!」
「それがお父さんの指示だった!」
「お父さんは、お父さんは危険じゃないの?」
「お父さんは自分の立場をちゃんとわかってる人よ!自分には家庭があるということをね・・だから無茶はしないわ!」
「ホント?」
「ええ、本当よ!」
「うん・・」
「理奈、明日は△△中と試合なんでしょ!?」
「うん」
「お父さんのことは心配ないから、今日は早めに休みなさい」
「わかった」
ベッドに横になってもなかなか眠くならない!お父さんの顔が嫌でも頭に浮かんでくるから・・。
蘭君はまだ起きてるかなあ?この真下に蘭君がいるんだ。私はスマホを取りメールした。
「なかなか眠れないなあ。蘭君はもう寝ちゃった?」
ブーブー・・あっ!蘭君。
「まだ寝てないよ。明日の試合のことで眠れないの?それとも他に心配なことでもある?」
「うん・・お父さんのことでちょっと」
「北海道にいるんだよね。会いたくてもそう簡単に会える距離じゃないもんね・・」
「うん、でもきっと大丈夫。ゴメンね!遅い時間に。明日の試合頑張ろうね。お休み」
「じゃあ明日!お休み」
お父さんなら心配ない!
でも、少し冷静になって考えてみると、お父さんはやっぱり、家族のことを一番大切にしてくれてたんだってことがわかった!すこし、お父さんことを良くないふうに思う自分がいたけど、今日のお母さんの話でそんな気持ちもすっかり消えていた!
お父さんは、やっぱり私の大好きなお父さんだったんだ!
♪ラララ・ラララ・・♪
朝から理奈の鼻唄が聞こえてる!どうやら気持ちの整理はついたみたいだわ。
「おはよう、お母さん!」
「おはよう・・・」
お母さんは私の顔色をうかがっている。
「ああ、よく眠ったら頭がスッキリだわ!」
「あれからすぐ眠れたの?」
「うん!さあ今日の試合も頑張るわよ」
「今日も蘭君と一緒なの?」
「うん」
「じゃあ心強いわね!」
「瞳も和久井くんも応援に来てくれるって!」
「そう・・」
「忘れ物はない?」
「大丈夫よ!行ってきまーす」
あの子も大分大人になったわね・・。