瞳の趣味
♪ラララ・ラララ・・
「理奈、なんだか気分が良さそうね!」
「わかる?!そうだお母さん、黄色とオレンジの組み合わせってどう思う?」
「黄色とオレンジ?」
「具体的には黄色のシューズにオレンジの紐なんだけど・・」
「いいと思うよ!お母さん好きだなあーその組合わせ」
「よかった!」
「誰かにシューズをプレゼントするの?」
「紐だけね」
「蘭君でしょ?!」
「うん・・じゃあ行ってくるね!」
「いってらっしゃい」
♪ラララ・ラララ・・
おっ、いつもの場所に蘭君登場!大きなあくびをひとつ。
「おはよう蘭君」
「おはよう!」
「はい!蘭君これ」
私はオレンジの紐が入った袋を蘭君に手渡した。
「ん?なにこれ」
「気に入ってくれるかわかんないけど・・」
歩きながら、蘭君は袋の中身を取り出した。
「あっ!」
「サッカーシューズの紐。前に買ったのが残ってて」
「そう、ありがとう!・・あっ」
「どうかした?」
「いや、今日早速使わせてもらうよ!」
「蘭君のシューズに合うかな?」
「黄色にオレンジ・・超ベストな組み合わせさ!」
「ホント、よかった!」
蘭君気に入ってくれたみたいだな。これでシュートをバンバン決めてよ!
そして放課後・
「蘭君、まだ教室にいたのか・・」
「シューズの紐を取り替えてるんだって・・でも蘭にしては素敵な色を選んだじゃない!」
瞳のその言葉、私は嬉しかった。
「瞳もそう思う?!」
「うん!それにしてもへただね蘭、もう見ていられない!ちょっと私に貸して・・」
紐を取り替えるのにてこずってた蘭君。それを見ていた瞳は、蘭君からシューズと紐を奪い取ってしまった!
そして鮮やかな手つきで紐を通していく・・それはあっという間だった!
「はい!出来たよ」
えつ!もう二足とも取り替えちゃったの。瞳すごい!たった5分のはやわざだった。
「サンキュー瞳!」
「瞳、上手だね」
「これ私の趣味なの!」
「趣味?」
紐通しが瞳の趣味・・?
「さあ蘭、これを履いて部活頑張ってきなさい!」
「なんだよそれ?!」
「うふっ・・」
蘭君と瞳の関係も、なんかおもしろいな・・。
「あれ?みんなまだいたのか?」
「一也、どこに行ってたんだ今まで?」
「職員室!呼び出されちゃってさ・・」
「なにやったのよ?」
「ん?瞳、なんだよその疑いの目は・・」
「だって職員室に呼び出されたんでしょ!」
「だからって悪いことをしたと思わないでほしいなあ」
「なにしたんだ一也?」
「蘭、よくぞ聞いてくれた!・・今朝、学校に来る途中でさ、重そうな鞄を持つおばあさんがいてさ!だから俺が運んでやったんだよ。ほんの50メートル位だったんだけどな。そしたらそのおばあさんが、今日学校に来てその話をしたらしいんだ。俺の名前も知ってたって。多分名札を見たんだろうな」
「へー、一也やるじゃんか!」
「うん、人助けなんてすごいわ!」
和久井くんのホントの優しさだね!
「いいとこあるじゃん一也」
瞳も認めてるよ!
なかなか心温まる話だったな!なんかこんな日は心がウコウキするわ・・。見直したな和久井くん!
「蘭君、また後でね!」
「ああ」
いよいよあさってに迫った△△中との試合。自然と練習にも熱が入る!ましてや和久井くんのいい話も聞けたし。今日の私は絶好調って感じ!
蘭君の方はどうだろうな!?あのシューズで、蘭君もきっと絶好調かな。
おっ、走ってる走ってる・・。えっ!蘭君先頭だ。早速オレンジの紐のパワー全開ね。私は蘭君の走りを目で追っていた。
あっ!蘭君転んじゃった・・蘭君のところまで走って行きたいところだけど・・大丈夫かな!?よし立ち上がった。
フアイト蘭君!
♪yesterday・・・♪
「あーあ、もう最悪!」
「張り切りすぎよ蘭君!」
「見てた・・よね?」
「見てたわ。もうビックリよ」
走って助けに行きたかったけど・・。
「紐が片方ほどけちゃってさ・・」
「それで転んじゃったの」
「ああ」
「半分私のせいかな?!」
「そんなことないよ!俺の結びかたが甘かったんだ。新しい紐ってほどけやすいからさ」
「うん・・ケガは?」
「ほんのすり傷」
よかった!
それにしても瞳のはやわざには驚いたな。ピアノが上手で、シューズの紐通しが趣味の瞳。心がとっても温かい和久井くん。友達の知らなかった一面も、こうやって少しずつ気付いていくんだなあ・・。