このひとときが私は大好き
「蘭君、女子は今度△△中と練習試合があるんだけど、男子もあるよね!?」
「ああ、でも負けは決まったようなもんだけどな」
「まだ試合やってもないのに・・」
蘭君、そんなんじゃダメだぞ!
「△△中っていったら、この辺りでは三本の指に入る強豪だぜ。ムリムリ!それよりよく試合を受けてくれたと思ってさ」
「もう蘭君たら!」
「あそこの女子も確かそこそこ強いぞ!なめてかかったら女子も危ないかもよ」
「うん」
「でも理奈ちゃんがいればそんな心配は要らないか!」
「そんなことないよ。私だってミスすることあるもん。それに、調子が出ないときもさ・・」
今の私、蘭君からのパワーがないと全然ダメなのよ!
「大丈夫!俺、応援するからさ」
「ありがとう。蘭君の応援があれば百人力ね!」
よかった!それなら頑張れる。
「そういえば俺のサッカーシューズ、紐が切れちゃってるんだよな」
「じゃあ新しいシューズ買うの?」
「うん。でも今のシューズ愛着があるって言うか・・」
「そうなんだ・・」
蘭君のシューズ、相当履きこんでるって感じだもんな。やっぱり自分にフィットしたシューズの方がいいもんね。
愛着があるかあ・・なんかいいフレーズ!
そういえば私、予備の紐があったはずだな。でも何色だったかな・・。
「おはよう!蘭、安藤さん」
「おはよう!和久井くん」
「おはよう理奈」
「おはよう」
瞳と和久井くん。
「この間の◇◇女王!最高だったな!」
「えっ!・・ああ」
「あのラストシーン泣けたわよね!理奈」
「えっ!・・うん」私に聞かれてもなあ・・?
「なんだよ二人とも、うんうんって・・」
「いや、おもしろかったよ!」
「そう!最高だったわ」
蘭君も私も、映画観てなかったなんて言えないよね。
「・・理奈、どこが最高だった?」
瞳の意地悪な質問。
「どこって・・あっ!ラストシーンよ、ラストシーン・・」
「ん?二人とも怪しいなあ・・」
「なにがだよ一也」
「もしかして、二人でイチャイチャしてて映画どころじゃなかったんじゃないのか!?」
「ギクっ!」
そんな和久井くんの言葉に二人ともドキドキ!
「えっ!理奈そうなの?」そうなのって・・。
「そんなことあるわけないでしょ」
「ん?・・・」
「なによ瞳」
瞳、私をそんなにのぞかないでよー!
さあっ部活行かないとな・・。蘭くんはもう行ったみたいだな。
「理奈、今日も部活!?」
「うん」
「がんばり屋だね理奈は!偉いよ」
「そんなことないって」
「私なんかスポーツ全然だからなあ、理奈がうらやましい」
「瞳だってピアノ上手じゃない!この間の音楽の時驚いちゃったよ。私はそっち方面は全然ダメ。だからピアノが弾ける瞳がうらやましいよ」
「ありがとう。今度試合があるんでしょ!応援行くからね」
「うん」
「じゃあね」
「じゃあね」
「蘭君!」
「理奈ちゃん!」
私は蘭君のもとへ走っていった。
「今日も頑張ろうね!」
「うん!」もちろんさ!
あっホントだ!シューズの紐が片方切れてる。これじゃあ蘭君の得意なシュートがうてないや・・。
蘭君のシューズは黄色がベースになってるのか。
そしていつもにまして気合いの入った練習が終了。
いつものようにゴールネットの脇に蘭君の姿はあった。早く着替えて、蘭君の所に行かなくちゃ!
『みなさん下校の時間です・・』
あっ、始まっちゃった。急げー!
「蘭君!あー間に合った」
「何が?」
「歌よ!蘭君と一緒に聴きたいからさ」
素敵な歌は、素敵な男性と一緒にね!
♪yesterday・・・♪
「あっ!」蘭君も知ってるみたい。
「うん! yesterday・・♪ラララー・ラララ・・」
私は思わず口ずさんでしまった。
蘭君とのこのひとときが私は大好き!
「じゃあね蘭君!」
「うん、また明日」
「ただいま」
「おかえりなさい」
シューズの紐探さないとな!
確かここにしまっておいたと思ったけど・・。
あった!この袋の中だ。私は袋の中をのぞきこんだ。
オレンジだ!
黄色にオレンジ・・いい感じだわ!私はそれをカバンの中にしまった。