顔はそんなに悪くないか
「理奈、準備は出来たの?」
「うん!」
「本当に一緒に行かなくていいの?」
「大丈夫よ!私もう中2よ」
「そうよね」
「じゃあ行ってくるね!」
心配性のお母さん。いくつになっても子供は子供か・・。
さて、今日から新しい学校だ!みんないい人たちだといいけどな。
歩いて20分。○○中学校に到着だ!大きく深呼吸をして・・。
「失礼します。今日からお世話になる安藤理奈です。宜しくお願いします」
「ああ、安藤さん。随分と早かったね!」
「初日で道に迷うといけないから、早めに家を出ました」
「ああ、ちょうど良かった。横山先生!安藤理奈さんだ。こちら担任の横山先生」
「安藤理奈です。宜しくお願いします」
「横山です。宜しくお願いします」
「まだちょっと早いから、応接室で待ってもらったら」
「そうですね」
女の先生か!助かった。男の先生はちょっと苦手なんだよな・・。
「まだ30分ぐらいあるからコーヒーでも飲みましょうか!インスタントの・・」
「いえ・・」
「私が飲みたいのよ!ちょっと待っててね・・」
優しそうな先生だ。美人だし、歳はいくつなんだろうな?
「はいどうぞ」
「ありがとうございます」
「安藤さんはお母さんと二人暮らしね!」
「はい」
「お父さんは?」
「まだ北海道に・・」
「そっか!ちょっと寂しいね」
「ええ、まあ」
「時間になったら呼びに来るわね。それまでゆっくりしてて。ここは誰も入ってこないから安心して」
「はい」
お父さんかあ・・今ごろどうしてるかなあ?
そして
「じゃあ行きましょうか!緊張してる?」
「少し」
廊下を歩きいよいよ教室へ!
「安藤さん、深呼吸をして3回!」
「いい、フー・ハー・・・よし入るわよ!」
『ガラガラ~』
さっきの深呼吸でだいぶ落ち着いたけど、やっぱり緊張するな。
「起立・・おはようございまーす」
「昨日も話したと思うけど、昨日から新しいお友だちが増えます。じゃあ、自己紹介をしてもらいますね・・」
「はじめまして!安藤理奈と言います。今日から宜しくお願いします」
「えー、安藤さんは北海道からこの町にやって来てくれました。お父さんの仕事の関係でね。じゃあ席は、蘭の隣が空いてたわね!」
蘭?男の子?それとも女の子?それとも・・。
「安藤理奈です。宜しく」
「俺、佐藤蘭。宜しく」
「俺、和久井一也。宜しく」
男の子だ!それにしても蘭なんて変わった名前だな。
顔はそんなに悪くないか!
それに瞳がすごくキレイ!
身長は170センチ位かな?
勉強は苦手そうだ!
スポーツは好きそうだな!
何か部活やってるのかな?
たぶんラーメン好き!
彼女は・・?
以上、蘭君の第一印象。
休み時間になると、女子たちが私の周りに集まってきてくれた。
「かわいいね!その制服。前の学校の?」
「うん!この学校のも注文してるんだけどまだこなくて」
「こっちの方が断然いいよ!」
「そうかなあ・・」
確かに私も、この制服のデザインは気に入ってる!
なんとか初日が終わった!帰り道を歩き新しい家に到着・・ん?後に誰かいる・・。
「あの・・」
「あっ佐藤君!」
「あの・・ここ俺の家だよね!?」
「えっ?」
「俺ここの205号室」
「私は305号室」
「お隣さん、じゃなくて上下さん!?」
「みたいね!」
「お帰り!どうだった?新しい学校は・・」
「良かったよ!先生も優しいし、クラスのみんなも。うまくやっていけそうよ」
「なら良かったわ!あっそうだ、下の階の佐藤さん。理奈と同い年の息子さんがいるって言ってたわね」
「うん、同じクラスだった」
「あっそう、良かったね近くにクラスメートがいてくれて」
「うん」
「佐藤君とも話したの?」
「一緒に帰ってきたよ!」
「えっ!」
「同じマンションだもの!」
「そうよね・・」
次の日
「マンションを出て学校に向かおうとしたら、背後に誰かの気配がした。振り返ると制服姿の男子がマンションに駆け込んでいくところだった。蘭君だ!
忘れ物かなあ?それとも、私に会うのが嫌で戻っちゃったの・・?
結局、蘭君に会うことなく学校に到着!
「おはよう」
「おはよう理奈!」
やっぱり蘭君はまだ来ていない。
「えー!蘭君と同じマンションなの」ややオーバーアクションなのは瞳。
「うん、私もびっくり!」
今日から部活も始まる。
「安藤理奈です。宜しくお願いします」
「お願いします!」
私は小学校からサッカーを習っている。4年前、なでしこジャパンがワールドカップで優勝したのをテレビで見て、一層サッカーに打ち込むようになった。ドリブルなら誰にも負けない!
練習が終わり部室に戻ろうとしたとき、男子の方もちょうど練習を切り上げたようだった。
その時、ゴールネットの横で、ひとり着替えをしている男子がいた。蘭君!いつもこんなところで着替えをしてるのかな・・。私は思いきって声を掛けてみた!
「佐藤君!」
そして、恥ずかしかったけど勇気を出して言った。
「部活終わりでしょう。今日も一緒に帰っていいかな?」
キャアー!言っちゃった・・。
男子に対してこんなこと言うなんて、今までの私では考えられなかったことだ。
「えっ!・・うん」
『下校の時間です。気を付けて帰ってください!』
「お待たせ!」
「ああ・・」
『♪♪♪・・・』
「あっ!コンドルは飛んで行く」
「えっ?」
「今かかってる曲よ!私このメロディーが好きなんだ」
「ふーん」
「いつもこんな風に曲が流れるの?」
「うん。放送部の人たちがやってるんだ!」
「なんかいいなあー・・」
この曲がこの瞬間にかかるなんて!お父さんがよく聴いていた曲で、いつの間にか私も大好きになっていた。
「あっ!メガネ」
「これは伊達メガネ」
「そうなんだ」
「視力は両方とも1.5」
私は肌が白すぎて、それが私の最大ののコンプレックス!それを少しでも隠そうと伊達メガネを使い始めたのだった。
「じゃあ、また明日学校でね!」
「うん」
♪ラララ・ラララー・・・♪
「理奈、随分と上機嫌じゃない!」
「えっ?!」
「あなたが鼻唄を歌うときは、何かいいことがあった証拠!」
「そうかなあ・・」
「昔からそうよ!」
「お母さんには隠し事はできないね。実は今日も佐藤君と帰ってきたんだけど、その時にね放送部の人たちが『コンドルは飛んで行く』をかけてくれたのよ!嬉しいって言うか、懐かしいって言うか・・」
「そう!お母さんもその曲好きだなあ。お父さんがよく聴いてたもんね」
「下校の時間になると、毎日放送部の人たちが選んだ曲が流れるんだって!明日は何の曲かなあ・・」
「おやすみ」
こ下の階に蘭君がいるんだよな。部屋の作りは同じはずだから、もしかしたら私の真下に蘭君が・・。
『蘭』・・"検索"
・・やっぱり花の名前よね。だからって男の子がつけてはいけない名前でもないわよね!蘭・・だって、なかなかいい名前だもん。