シベリア鉄道
おじいちゃんがロシア人かあ・・。ところでロシアってどこにあるんだっけ?俺は世界地図を広げた。
・・でかっ!ロシアってこんなにでかいのか。それに比べ日本のなんと小さいこと!
首都はモスクワかあ・・。
「あっ!蘭が勉強してる」
「翼、学生は勉強するのが当たり前なの!」
「わかった、明日テストがあるなあ」
「ない!」
「えっ!おかしいじゃんか・・母さんに報告しないと」
「翼!・・」
あっ、行っちゃったよ!
なんで?
「えっ!蘭が勉強してる」
翼の報告を受けてマジで驚く母さん。
すぐさま俺の部屋をのぞきこんで
「あらホント!」
「ねー・・」
「・・なに二人でこそこそやってるのかな?」
「うっ!・・翼が変なことを言うからさ」
「変なことって、俺が机に向かってるってこと!?」
「うん」
「それのどこが・・・」
「ところで何の勉強してるの?蘭」
「ロシアについて・・」
「ロシア!・・ああ、母さんわかっちゃった」
「えっ?」
「理奈ちゃんね!」
「ギクっ」
「なるほどねー・・」
そして母さんは去っていった。なんだ?
「蘭、今日は珍しく机に向かってたんだって!」
「なんだよ父さんまで・・」
「で何の勉強?」
「それがね、ロシアについてですって!」
なんか含みのある言い方だな。
「ロシアかあ・・ユーラシア大陸だね!」
「それそれ!」
「ユーラシア大陸を横断する有名な鉄道があるんだけど、蘭は知ってるか?」
「鉄道まではちょっと・・」
「シベリア鉄道だ!歌にもなってる」
「そうなんだ・・」
「おはよう」
「おはよう」
「理奈ちゃん、シベリア鉄道って知ってる!?」
「えっ?」
「ユーラシア大陸を横断する世界最長の鉄道!」
「知ってるけど、どうして蘭君?」
「いや、別に意味はないんだけどさ。昨日たまたま父さんと話題になってさ」
「そう」
「実は、理奈ちゃんのおじいちゃんがロシアの人だって不意に思い立ってさ、その話の流れでシベリア鉄道の話も出て・・」
「私のおじいちゃん、そこを走る列車を設計したり製造したりする会社に勤めてたのよ!今はお父さんがその会社に勤めてる」
「えっそうなの!知らなかったよ」
「私も突然シベリア鉄道なんて言うから驚いちゃった!」
「そうかあ、カッコいい仕事してるんだなあ!理奈ちゃんのお父さん」
「そんなことないよ・・」
「もしかして乗ったこともあるの?シベリア鉄道」
「私はないわ!ロシアにも行ったことないもん」・・。
「安藤、すまんが至急モスクワまで来てくれ!」
「何かあったのか?」
「親父さんのノートに書かれていたことはやはり事実のようだ。詳細を話したい!来れるか?」
そして・・。
「わざわざすまないな」
「証拠が見つかったのか!?」
「ああ、パスワードの解読に苦労したがなんとかな!ご丁寧にHDに裏帳簿として残されていたよ。これにコピーしてきた。早速見てみるか」
「ああ!」
・・「これだ」
「1993年の鉄道脱線事故!」
「うん、俺が入社した年だ。4人もの死亡者を出した大事故だ!原因は運転士の判断ミスによる列車のスピード超過ということで処理されたんだが、どうもそれだけじゃない。うちの設計ミスだ!」
「じゃあそれを隠すために・・」
「10億という大金が、闇から闇に動いた!」
「それを親父は知ってしまったというのか!」
「ああ、そして永久に口を塞がれた・・」
「うっ・・」
「それを主導したのが当時のトップ、フラトコフだ!もし事故原因がうちにあることが明るみになれば、東西冷戦後、軌道に乗り始めた経営もたちまち行き詰まってしまう」
「けど、前にも言ったが、親父はどうやってこの事実をつかんだんだろうか?やっぱり何だかの形でこれに関わっていたんだろうか・・」
「その事だが、親父さんのノートの最後にこんなことが書いてあった。この内部情報は、当時、部長クラスだった人間からの告発を、正確に記したものであるとな!九分九厘親父さんは白だ。それに、この事を公にしようとしたのかももれないな・・」
「そうか。それでその告発をした人物は今どうしてる?」
「・・消息不明だそうだ!」
「消息不明・・」
「どうする安藤?」
「・・その列車の運転士はその後どうなったんだ?」
「事故の責任を取る形で会社を追われた。最後まで列車の不具合を訴えていたらしいが、当然聞きいれてはもらえなかった」
「事実を知った以上黙ってはおけまい!」
「リークか?!」
「ああ」