スーパーガール
「翼、キャッチボールでもするかあ！」
「うん、するする！」
「じゃあそこの空き地まで行こう」
俺はこうやって弟と遊んでやる優しい兄貴だ！
「よーしいくぞー！」
「こい！」
ピュー！・・バシッ！
「翼、だいぶ速い球が投げれるようになったじゃんか！」
「まだまだいくよー！それ・・」
ピュー！・・バシッ！
「ナイスピッチング！」
その時だ。
「蘭君！翼君！」
「あっ！お姉さんだ」
「えっ？・・理奈ちゃん」
「こんにちわ！二人でキャッチボール」
「はーい！」
ん？あの理奈ちゃんの隣にいる人は・・もしかしてお母さん！確か今日は、お母さんと出掛けるって言ってたもんな。
俺は慌てて理奈ちゃんのもとに駆け寄った。もちろん翼も。
「理奈ちゃん！」
「こんにちわ！いつも理奈がお世話になって・・」
「お母さんよ！私の」
やっぱりそうか。
「はじめまして、佐藤蘭です」
「佐藤翼です」
「はじめまして、理奈の母です」
理奈ちゃんのお母さんかあ。理奈ちゃんとはまたタイプの違う美人だ！
「理奈、お母さん先に行ってるね！」
「うん」
「蘭君、翼君、じゃあまたね！」
「はい！失礼します」
「失礼します」
「ウフフ・・」
すごく優しそうなひとだ！理奈ちゃんのお母さん。
「もうビックリ！こんなところで会うなんて・・」
「こっちもビックリさ！」
でもラッキー！
「弟とキャッチボールだなんて、いいお兄さんしてるね蘭君」
「いやあ・・それにしても理奈ちゃんのお母さんキレイだね！」
「お化粧してるからよ！ちっとも似てないでしょう私と」
「ん？顔はそんなに似てないかなあ・・」
理奈ちゃんの方が、全体的にスラッとしてる。
「私、お父さん似なのよね！昔からよく言われてた」
「ふーん」
なるほどね！
とそこにまた誰かが現れた。
「蘭！翼！」
「あっ、今度はうちの母さんだ！」と翼。
「えっ！」
なんでうちの母さんが・・。
「あっ、いたいた！」
「どうしたの母さん？」
「夕飯のお買い物。一緒にいってくれないかと思って・・」
どうせ荷物持たせるんだろう。
「・・あの、はじめまして、安藤理奈です」
「えっ！」
「母さん、理奈ちゃんだよ！」
「ああ、はじめまして、蘭の母です。いつも蘭がお世話になって！」
「いえ、私の方こそ。蘭君にいつも助けてもらっててます」
「うん！これじゃあ蘭がメロメロになっても仕方ないわね」
「えっ？」理奈ちゃんの照れた顔。
「なんだよ母さん、その言い方！」
「理奈ちゃん、これからも蘭をよろしくね！」
「こちらこそ・・」
「翼！お買い物行くわよ」
「えー俺が！？」
「状況を考えなさい！状況を・・」
「だって、どうせ荷物持つ係りでしょ」
「翼、よろしく頼むな！」
「蘭まで・・」
「じゃあ理奈ちゃん、またね！」
「はい、失礼します」
「なんか今日は不思議な日だね」
「そうね！お母さんたちにバッタリ・・」
「あーあ、翼のやつグローブ置いていっちゃったよ！」
「翼君に悪かったかな」
「平気平気！」
「蘭君、私とやらない！キャッチボール」
理奈ちゃんは翼のグローブを拾い上げた。
「ん、いいけど」
理奈ちゃん、キャッチボールなんてできるのか？サッカーは天才的に上手だけど。
「じゃあ私からいくわよ！」
「よーし！」
そして理奈ちゃんのピッチングフォーム・・決まってる！
理奈ちゃんの投げたボールは、俺の胸元ど真ん中にやって来た。
バシッ！
「ストライク！」
しかし、そこは女の子、球の勢いは翼といい勝負。
「今度は俺からいくよ！」
俺は易しい山なりのボールを理奈ちゃんに返した。
そんな感じでキャッチボールは続く！俺の気持ちもこのボールのように、真っ直ぐ理奈ちゃんに届けばいいけどなあ・・。
相変わらす理奈ちゃんのフォームは完璧だ！しかし、何か違和感があるんだよなあ・・。そして俺は今ごろ気がついた！理奈ちゃんは左手で投げている。俺も翼も左利きだから、グローブは当然右手にはめる。しかし、理奈ちゃんは右利きのはず・・。
「理奈ちゃん、理奈ちゃんは右利きだよね！」
「うん」
「でも、今まで左手で投げてた」
「うん、グローブが左利き用だったから！」
「ねー理奈ちゃん、右で投げてみてよ！」
「えっ？右で・・」
「うん」
「わかったわ！」
そう言って、理奈ちゃんは右手のグローブを外しボールを握った！そしてかろやかなフォームからボールは放たれた！
ビュー！！・・バシッ！！
それは、想像をはるかに超えた快速球！ボールは、瞬く間に俺のグローブに収まっていた。速っ！俺なんかより全然速っ！
俺は一瞬ボーっとしてしまっていた。
「蘭君！大丈夫」
「は~い、なんとか・・」
恐るべしスーパーガール！理奈。
俺の右手、骨折してないよなあ・・。
「今日もデートが出来ちゃったね！」
「ああ・・」
手のひらがまだ痛い。
「あれ？どうかした蘭君」
「うんん、なんでもないよ」
「そう・・後でメールするね！」
「うん」
理奈ちゃんは階段をかけ上がっていった。
この手でスマホ握れるかなあ・・？
