正直な気持ち
そしてデート当日・・。
「母さん!・・あれ、いないのか」
「母さんなら、ちょっと出掛けてくるって出てったぞ」
「そう」
「今日はどこに出掛けるんだ?」
「映画だよ! ◇◇女王!」
「えー、蘭だけずるい!」
「友達と行くんだから仕方ないの」
「僕も行きたかったなあ◇◇女王!」
「翼は今度お父さんが連れていってあげるよ!」
「ホント!?」
「ああ」
「蘭、そのパーカーカッコいいじゃんか!」
「お年玉で買ったんだ!」
「そうか・・」
「じゃあ、行ってくるね!」
「気を付けてな!」
「わかってる」
父さんもわかってるじゃん!このパーカーカッコいいだなんてさ・・。
「ただいま。蘭!」
「蘭はもう出掛けたぞ」
「えっ!せっかくポップコーンとコーラみんなの分まで買ってきてあげたのに」
「ポップコーンとコーラ?」
「映画を観るときの必須アイテムでしょ!この二つは」
「そうかあ?」
「そうよ絶対!」
俺は勢いよく外階段の扉を開けた。そこにはいつものように理奈ちゃんが・・。
「おはよう理奈ちゃん」
「・・・」
あれ?いつもと違う。理奈ちゃんのカワイイ笑顔がそこにはなかった。
「理奈ちゃん?」
理奈ちゃんが俺の腕に・・。
「・・あっ、ごめん」
「どうしたの?」
泣いてる?理奈ちゃん。
「・・蘭君やっぱり来てくれたんだなって!」
「・・だって今日はデートの約束だよ!」
俺は意識して、さりげなくそう言った。
「うん」
「さあ、行こう!一也達が待ってる」
理奈ちゃんの身に何かあったことは間違いない。かといって俺からはなにも言えない。理奈ちゃんがしゃべってくれるまで、それまではただ理奈ちゃんの側にいるだけだ・・。
コンビニの前で一也達と合流!
「ごめん遅くなって!」
そう言った理奈ちゃんを、のぞきこむように見る瞳。理奈ちゃんのちょっとした異変に気づいているのだろうか?しかし、瞳はなにも言わなかった。
「なかなかお似合いだぜ!お二人さん」
「バカ!なにいってるんだ」
「ホントにお似合いよ!」
「理奈まで・・」
映画館では、入館を待つ人の列が早くもできていた。
「うひゃー!さすが人気のアニメだけあるなあ」
それでも俺たちはなんとか並んで席をキープすることができた。
「ジュースとか買ってくるよ!」
「じゃあ私も一緒にいくわ」
理奈ちゃんがそう言ってくれた。
「じゃあ俺コーラ」
「私もコーラがいいかな」
「OK !」
そして、理奈ちゃんと俺は売店に向かった。
「わあっ!ここもすごい人ね!」
「うん。並ぶしかないな・・」
「ねー蘭君」
「なに?」
「さっきはごめんね!」
そして、理奈ちゃんがしゃべりだしたのは、今朝がたみた夢のことだった。夢の中の俺は理奈ちゃんを邪険に扱い、あんたなんか知らないって言ったとか。
「えっ!俺がそんなことを・・」
「すごく冷たい感じで言ってた!」
「そうなの・・ごめん!」
俺はとりあえず謝ってしまっていた。
「謝ることないよ!夢の中の蘭君なんだから」
「そうだね!」
「蘭君は私にそんなこと言わないよね?」
理奈ちゃんの不安そうな顔。
そして俺は力強く言った!
「絶対言わない!」
「・・ありがとう。安心したわ」
「好きな子にそんなこと言えるわけないだろう・・」
なに言ってんだ俺は!
不意に口からでた正直な気持ち・・には違いないが。
自分の言葉にやや赤面。
「えっ?!」
「さあ、コーラ買って早く戻るぞ!」
「ん・・うん」
そして映画が始まった。
俺の頭は理奈ちゃんのことで満杯だ!とても映画のストーリーなんて入る隙間なんてない。好きって言っちゃったけど・・どう思っただろう理奈ちゃん俺のことを・・。聞こえてなかった?・・はずないよね。
「理奈!理奈・・」
「・・えっ!」
「なにボーっとしてるのよ。映画終わったわよ!」
「はあっ?もう・・」
そこで初めて俺も我に返った!映画、終わっちゃったよ・・。
映画館を出てハンバーガーを食べて、街を4人でぶらぶら・・。そしてコンビニで一也たちと別れた。
「理奈ちゃん、なに考えてるの?」
「えっ!別になんにも・・」
「そう」
「映画楽しかったね!」
「ん?・・実は俺、ほとんど観てなかったんだ!」
「えっ!蘭君も・・」
「って、理奈ちゃんも・・」
「ふぅ・・アハハ・・」
「ホント笑っちゃうな」
「ねー蘭君、今度二人きりでもう一度観ない映画!」
「うん、それがいいかも!」
「やったー!」
理奈ちゃんはなぜ映画を観てなかったんだ?俺は理奈ちゃんのことで・・えっ!もしかしたら俺のことで頭がいっぱいで・・。ん?可能性としてはなくもないのかな!?
「ねー理奈ちゃん、なんで・・」
「えっ?なに蘭君」
「いや、なんでもない」
やっぱ恥ずかしくて聞けない!
蘭君のことを考えていたからよ・・!