ダブルデート
そしていよいよダブルデートの日・・。
瞳はロングスカートをはいていくって言ってたなあ!私はどうしよう・・。
思いきってスカートでいくか!
窓から空を見ると真っ青でいい天気だ。でも空気はとっても冷たいはずよね。北海道育ちの私も、寒いものは寒いんだ!
でも今日のメインは映画だから、それほど寒さを気にすることもないかな。今大ヒット中の『◇◇の女王!』
蘭君と和久井君が気をきかせてくれたって感じかな。
「じゃあ、行ってくるね!」
「気を付けてね」
「うん」
理奈は活発で伸び伸びと育ってくれている。いい友達にも恵まれて何よりだ。小さい頃は肌の色が原因で、友達から仲間はずれにされたこともあった。もう学校に行きたくないと泣いた時も・・。そんなあの娘の心の支えは、父親だった。日本にいるときにはいつもあとを追いかけていた。そんな理奈もホントは父親に会いたいに決まっている。だけど・・。
外階段の2階の踊り場。約束の時間になっても蘭君が現れる様子はなかった。メールをしても返事がない。何かあったのかなあ蘭君・・?
そして10分が過ぎてもまだ。仕方なく、私はマスターキーで扉を開け205号室の前に立った!
『ピンポン』
私はインターフォンを鳴らした。
「はーい!」
ドアを開けてくれたのは翼くんだ。
「翼くん、おはよう!蘭君いるかな?」
「うん、蘭!蘭!・・」
翼くんは蘭君を呼びに行ってくれた。しかし、待てども待てども蘭君の姿は現れない。なんで?
私は不思議な思いで家の中に入っていった!
「お邪魔しまーす・・蘭君・・」
そこにはゲームを楽しむ蘭君と翼君がいる。ん?・・。
「蘭君!」
「えっ?あんた誰?」
「えっ?!」
「翼、知ってるか?」
「うんん」
「・・私よ!安藤理奈」
「安藤理奈さん!?」
「蘭君、悪い冗談はやめてよ!」
「俺、あんたなんか知らないぞ!」
「私を知らない?・・蘭君!蘭君!・・私よ・・」
・・はっ!私はベッドの上で上半身を起こした。夢かあ・・。
そんな嫌な夢をみたばかり。少し不安な気持ちで、現実の私は蘭君の登場を待っていた。そして扉が開いた。
「おはよう!理奈ちゃん」
「・・・」
「理奈ちゃん?」
私は少し涙を浮かべ、蘭君にしがみついていた。
「・・あっ、ごめん」
「どうしたの?」
「・・蘭君やっぱり来てくれたんだなって!」
「・・だって今日はデートの約束だよ!」
「うん」
「さあ、行こう!一也達が待ってる」
蘭君はそれ以上私に聞いてくることはなかった。でも、そんな蘭君の優しさが、私の身体中に染み渡った!そんな感じがしていた・・。
和久井君と瞳はコンビニの前で私達を待っていた。
「ごめん遅くなって!」
「ん?」
瞳は私の顔をのぞきこむように見ている。
「ん?・・」
しかしなにも言わない。
「なかなかお似合いだぜ!お二人さん」
「バカ!なにいってるんだ」
蘭君の言葉に、むきになって怒る和久井君。
「ホントにお似合いよ!」
「理奈まで・・」
映画館では、入館を待つ人の列が早くもできていた。
「うひゃー!さすが人気のアニメだけあるなあ」
和久井君の言う通り、私たちまで入れるか心配になるほどだ!
それでも入場が始まると意外とスムーズに動き、私たちもやや後ろの席だが、4つ並んで確保することができた。瞳と私を挟むように、和久井君と蘭君は両サイドの席に!
「ジュースとか買ってくるよ!」
「じゃあ私も一緒にいくわ」
蘭君ひとりじゃかわいそうだもんね。
「じゃあ俺コーラ」
「私もコーラがいいかな」
「OK !」
そして、蘭君と私は売店に向かった。
「わあっ!ここもすごい人ね!」
「うん。並ぶしかないな・・」
「ねー蘭君」
「なに?」
「さっきはごめんね!」
私は夢のことを蘭君に話した。
「えっ!俺がそんなことを・・」
「すごく冷たい感じで言ってた!」
「そうなの・・ごめん!」
「謝ることないよ!夢の中の蘭君なんだから」
「そうだね!」
「蘭君は私にそんなこと言わないよね?」
私はうつむきながら蘭君に尋ねた。
「絶対言わない!」
「・・ありがとう。安心したわ」
「好きな子にそんなこと言えるわけないだろう・・」
「えっ?!」
「さあ、コーラ買って早く戻るぞ!」
「ん・・うん」
好き?私のことが・・。
そして映画が始まった。
私は、目ではスクリーンを見つめ、頭でさっきの蘭君の言葉を考え、心で蘭君の存在を思い、微妙な距離で蘭君の温かさを感じていた。
「理奈!理奈・・」
「・・えっ!」
「なにボーっとしてるのよ。映画終わったわよ!」
「はあっ?もう・・」
私はいったいどのくらいボーっとしてたの・・。
映画の内容がまるきし頭に残っていない!
映画館を出てハンバーガーを食べて、街を4人でぶらぶら・・。そしてコンビニで瞳たちと別れた。
「理奈ちゃん、なに考えてるの?」
「えっ!別になんにも・・」
「そう」
「映画楽しかったね!」
「ん?・・実は俺、ほとんど観てなかったんだ!」
「えっ!蘭君も・・」
「って、理奈ちゃんも・・」
「ふぅ・・アハハ・・」
「ホント笑っちゃうな」
「ねー蘭君、今度二人きりでもう一度観ない映画!」
「うん、それがいいかも!」
「やったー!」
私は蘭君のことで頭と胸がいっぱいで、映画どころじゃなかったけど、蘭君はなんで映画を観てなかったの?もしかして私のせい・・だったらメチャ嬉しいけどな!




