本当か!?理奈
ニーナさん、身長はどのくらいあるんだろう?170㎝は優にあるわよね。
私たちはまたエトランゼに集まり、おしゃべりの真っ最中!これで何回目だろう?エトランゼでこうしてご飯を食べるの。
よそのお店に比べたら、料理の値段が安いのがこのお店の売りなんだけど、いくら安いとはいえ、私たち子供にとっては結構大きい出費。
でも私たちは4人は特別で、川口さんはいつも1人200円しかお金を受け取らない。
お父さんは、そんなことをしてもらっては申し訳ないと断ったらしいが、結局200円にしてもらってる。ありがとうございます!川口さん。
「ニーナさんすごく働き者だね」
「俺ニーナさんのファンになろう!」と和久井君。
「あっ、瞳にチクろっかなあ・・」
「何をだよ」
「一也がこっちで浮気してるってさ!」
「違うよ、俺はただ・・」
「そうだよ蘭君、それは言い過ぎよ!」
「はーい」
「蘭が怒られた!」・・ふふっ。
「黙れ翼」
すると私達のところに川口さんが来てくれた。
「いらっしゃい」
「あっ、川口のおじちゃん」
「翼君、スパゲティーは美味しかった?」
「うん、ほら全部食べちゃったよ!」
「ホントだ」嬉しそうな川口さん。
「翼、口のまわりがケチャップだらけだぞ」ホンだ!
「いつもすみません川口さん。私達が来ると、お店損しちゃいますよね」
「そんなこと気にしないで!いつでも、何回でも来ていいんだよ」
「ありがとうございます」
「お父さんも休憩もろくにとらないで、働いてくれてホント助かってる。でも体が壊れたらそれこそ大変だから、理奈ちゃんからお父さんに言ってくれないかな。もう少しからだを大切にしてって!」
「はい、わかりました」
「頼んだよ!じゃあ、ごゆっくり」
「それでかなあ、お父さん最近、元気ないような気がするんだよね」
「そうなの?」
「私が話しかけてもなんか上の空ってことが多くて」
「働きすぎは体に毒だぜ!」
「そうだよね・・」
お父さん、まだまだ馴れない仕事なんだから、あまり無理をしないで!
蘭君の言う通り、働きすぎは体に毒よ。
今度はニーナさんが、私達のテーブルにやって来てくれた。
「こんにちわ」
「こんにちわ、ニーナさん」
ニーナさんて本当に日本語が上手!
でも、ニーナさんがそばに来ると、なぜかちょっとだけ緊張すしてしまう・・?!
「ニーナさん、初めまして!俺和久井一也って言います」
「初めまして、ニーナです」
「一也!」
「・・・」
「一也!!」
「なんだよ蘭?」
「ニーナさんのことジロジロ見すぎ!」・・それ言えてる。
「えっ!」
「ニーナさん、今度ロシア語を教えてもらえませんか?挨拶程度の簡単なのを」と私は思いきって聞いてみた。
「いいわよ!理奈さんはロシア語に興味があるの?」
「ええ、実は私、クオーターなんです。父がロシアと日本のハーフで!」
「あら!私もクオーターよ。同じく父がロシアと日本のハーフ。でも、私はお父さんの顔を知らないの」
「えっ!ニーナさんもクオーターなんですか」・・それに、お父さんの顔を知らないって・・。
「似てますね!私達」
「はい・・」・・ニーナさんのお父さん、どうしちゃったんだろう?
「蘭、クオーターとかハーフって何だっけ?」
「確かピザの種類にそんなのあったけど・・」
「ふーん、じゃあ、理奈お姉さんもニーナさんもピザが好きってこと!?」
「多分な・・」
「蘭、弟に適当なこと教えるなよ!」
「すみません」
和久井君と別れ、私たちはマンションに向かっていた。
「理奈ちゃん、また明日ね」
「理奈お姉さん、バイバイ!」
「バイバイ!」
「ただいまー」
「お帰り。今日もお父さんのお店!?」
「うん、そう」
「お父さん、しっかり働いてた?」
「そういえば、顔見なかったなあ」
「そう、厨房に入りっぱなしだったのかな?」
「そうだと思う。ねえお母さん、川口さんが言ってたんだけど」
「ん?」
「お父さん、エトランゼでは休憩もろくにとらないで、働いてばかりなんだって!体を壊さないかって心配してたわ」
「まだ覚えることがいっぱいで必死なのよ!お父さんらしいわ」
「でも、最近のお父さん、なんか疲れてない?」
「そうかな」
「そうだってば!話をしてても上の空ってこと多いし」
そしてお父さんは、夜遅くに帰宅してきた。
「ただまいま」
「お帰りなさい」
「理奈は勉強中?」
「だと思うけど・・」
「あなたご飯は?」
「店で済ませてきた」
「お店をやりはじめて、家で夕食をとることがなくなりましたね!」
「うん、川口さんがまかないを作ってくれるからね」
「助かりますね」
「ビールでももらおうかな」
「はいはい」
お父さんの声が聞こえて、私は部屋を出てリビングにいった。
「あっお父さん、お帰り」
「ただいま。勉強してたのか?」
「ちょっとだけね」
「私もビールいただこうかなあ」
「うん、理奈コップを頼む」
「はーい」
「今度ね、ニーナさんにロシア語教えてもらうんだ!」
「あら、良かったじゃない!」
「うん、あとね私もビックリだったんだけど」
「どうしたの?」
「ニーナさんも私と同じクオーターなんですって!」
「えっ!」・・すごく驚いた様子のお父さん。
「しかもお父さんが、ロシアと日本のハーフだって・・」
「本当か!?理奈」
「うん、ニーナさんが言ってたもん。でもね、お父さんのこと、顔も知らないんだって!」
「あら、何があったんでしょうね?」
「そこまでは話してくれなかったけど」
お父さんの様子が明らかにおかしい!急に驚いたような声を出したり、「本当か!?」だなんて怖い顔で聞いてきたり・・。
「そうだ理奈、川口さんに言われたこと、お父さんに言うんでしょ!」
「川口さんがなんだって?」
今度はそう静かに聞いてくるお父さん。
「お父さん頑張りすぎだってさ!自分の体をもっと大事にしなさいって」
「川口さん、そんなことを・・」
「体を壊しにゃったら、元も子もないって」
「そうだな」
それにしても不思議なことがあるものだ。私とニーナさん、似てるよなあ・・。
ニーナさんのお父さんて、どんな人だったんだろう?そして、なんでニーナさんは、お父さんの顔を知らないの?