初詣
年が明け、わたしたちは早速神社に初詣。
『ちゃりーん、カランカラン』
「蘭、何お願いしたんだ?」
「内緒だよ!こういうのは人に話しちゃうと御利益が無いって言うからな」
「そんなもんなのか・・」
「あっ蘭くん、絵馬があるよ」
「合格祈願でもするかあ!」
「ありゃ、500円入れてくださいだってよ」
「4人で2000円もする・・」
「ちょっと高いわね!」
「神様もお金かかるんだね!」と翼くん。
「こうなったら、ひとつに4人分書かせてもらうか」
「蘭くん、そんなことしていいの?」
「俺たちまだ子供だから、神様も許してくれるよ」
「うん・・?」本当かな。
「とりあえず皆100円ずつ入れて・・」
「100円足りないね」
「じゃああと20円ずつ」
「まだ足りないぞ!」
「あと20円、一也出しといて!」
「えっ俺!」
渋々お金を出してくれる和久井君。
「じゃあ20円多く出した一也から書いていいよ」
「わかった。でもなんて書こうかな・・」
「ここは無難に『合格祈願』とか」
「よし決めた!見るなよな」
「見えちゃうよ!皆同じ絵馬に書くんだから」
そして
『恋愛成就』 和久井一也
『みんなの幸せ』 安藤理奈
『お友だちいっぱい』 佐藤翼
『△△高校受験突破』 佐藤蘭
「なんだ一也のは?!」
「だから見るなって言ったろう」
「翼くんもお願い叶うといいね!」
「うん」
「理奈ちゃんが『みんなの幸せ』で蘭が『△△高校受験突破』ねえ。一番神様にとって難しいのは蘭のお願いだな!」
「なんだよそれ」
「ふふっ」
「甘酒があるわ」
「頂こうか!」
「蘭、酔っぱらっちゃうよ」
「一杯くらいなら大丈夫さ!それに父さん達が飲むお酒とは違うよ」
「俺結構好きだぜ」
「私も好きかな」
「理奈お姉さんが飲むならぼくも飲む!」
「なんだ翼、げんきんなやつだな!」
「いいじゃんか」
そして私たちは甘酒を買った。
「わっ熱い!翼くんヤケドしないでね」
「うん」
「フーフーッ・・熱っ!」
「もう、蘭くんも気を付けてね」
「蘭、意外とオッチョコチョイだからな」
「黙れ翼」
「あっ、理奈お姉さん、おみくじ引こうよ!」
「うん」
「蘭は、おみくじ引くのか?」
「なんで?引いてもいいけど」
「俺、やめとくわ!」
「ん?」・・なんで?和久井君。
「俺ダメなんだよな。いつも変なの引いちゃってさ!凶とか」
「和久井君、今日はお正月だよ。こんな日に凶なんてあり得ないわよ!」
「うん!俺も聞いたことあるぞ。お正月のくじには、凶は入ってないって」
「そうなのか!じゃあ引いてみるか・・また100円か」
「いいじゃないか一也、たった100円で大吉が買えるんだからさ」
「だれから引く?」
「ぼくから!」
「よし、じゃあ翼からだ!引いてもまだ開けたらダメだぞ。みんな一緒に開けるからな」
「うん、わかった!」
そして翼くん、蘭くん、和久井君、私の順でくじを引いていった。
「よし翼、開けるぞ!」
翼くん・・大吉
蘭くん・・大吉
私・・大吉
「やっぱりな!皆大吉だ」
「そうみたいだな。じゃあ俺も開けるぞ」
和久井君・・凶
「うっ・・」
この結果に、誰も声がでない!
「一也、足元気を付けろよ。石につまずいて大ケガでもしたら大変だからな!」
「車にも気を付けてね和久井君」
「水溜まりもね!」
「・・・」
「俺もう帰るよ」
「俺たちももう帰るから、一緒に帰ろうぜ」
「お願いだからひとりにして・・」
そして和久井君は行ってしまった。
「一也お兄ちゃん行っちゃったね」
「相当ショックだったみたい」
「みたいだな!」
「お正月でも凶ってあるのね・・」
「あるみたいだな・・」
「あるんだね・・」
ごめんなさい和久井君、凶なんてあるわけないなんて言っちゃって。
プルプル・・お母さんだ。
「新年会をやるから皆と一緒にエトランゼに来てください」
「お母さん、何だって?」
「エトランゼで新年会をやるって!」
「ヤッホー!急いで帰ろう」
「うん」
「翼行くぞー!」
「一也お兄ちゃんは呼ばないでいいの?」
「そうだな!メールしとくか・・」
「ただいま!」
「お邪魔しまーす」
「ああ、蘭君に翼君、明けましておめでとう!」
「おめでとうございます」
「おめでとうございます」
「あれ?一也君は」
「先に帰っちゃったんで、一応メールはしたんですけど。エトランゼに来るようにって」
「そうだったの」
「はい、色々ありまして」
「ん?」
「いえ、何でもないです」
「理奈、料理運ぶの手伝って」
「はーい」
「俺たちも手伝います」
「ありがとう。じゃあお皿を運んでもらおうかな」
「はい」
「はーい」
「準備OKね!」
「そうね」
そこにひとりの見知らぬ女性が、エトランゼにやって来た。
「こんにちわ」
とても色が白く、髪の色も金髪に近いブラウン。日本人でないことは明らかだ。
蘭くんも翼くんも扉の方を振り向くけど、二人も彼女のことを知らないようだ。
「お母さん?」
「あっ、いらっしゃい!待ってたわよ」
「待ってた?」
お母さんの知り合いなの?
「初めまして、ニーナと言います」
「ああ、ニーナちゃん!よく来てくるたね」
「川口さん、ニーナさんて?」
「今度うちで働いてもらうんだよ」
「じゃあアルバイトの」
「うん」
「こんどこちらのお店でお世話になることになりました。宜しくおねがいします」
「ニーナちゃんはロシア出身で、語学留学のため日本に来てまだ一年だそうです。それでも日本語はなかなか達者だよ!」
「ロシア・・」
ロシアと言う言葉に私は敏感だった。
「ニーナちゃん、どの席でもいいよ座って!」
「ニーナさん、ここ、よかったらどうぞ!」
「ありがとう」
「私、安藤理奈です」
「安藤さんって・・」
「ここのお店で、川口さんと働いているのは私の父です」
「ああ、なるほど!」
「それと友達の佐藤蘭君と蘭君の弟の翼くん」
「こんにちわ」
「こんにちわ」
「こんにちわ、ニーナです宜しく」
そして私たちの新年会がスタートした。
「ニーナさん、年齢はいくつなんですか?」
「蘭君、レディーに年齢を聞くのは失礼よ」
「いいじゃないか、若いんだし」
「二十歳です」
「蘭君たちは中学生?」
「はい、中三です」
「ぼくは10才です」
「もう一人紹介したい親友がいるんですけど、今日は訳あって欠席なんです」
「えっ?」
「蘭君、まだ欠席かどうかわからないでしょ」
「どうかな・・」
結局、和久井君は新年会に顔を出さなかった。お家で用事があったのかもしれないけど。
ニーナさんか・・すごくステキでチャーミングな女性。長くこのエトランゼで働いてもらいたいな。そしてお友だちになれたらいい!うんん、お友だちじゃなくて、お姉さんかな。