大接近
「ただいまー!」
「おかえり。どうだった?初デートは」
「まあまあかなあ!」
何をやっても、何を言っても嬉しさがこみ上げてしまう・・。
「その様子だとうまくいったのね!」
「えっ?」
「顔や態度を見ればわかるわよ」
「へへぇ~」
「帰ってきたのか蘭は・・」
「うん!もう上機嫌で」
「ほう、それは何よりだな」
「ホント隠し事の出来ないタイプね!あなたと一緒で」
『理奈ちゃん』
『蘭君』
うひひ!ただいま妄想の真っ最中。
「蘭、にやけてるぞ!顔」
「ギクッ!こら翼、黙って部屋に入ってくるなって言ったろう」
「そんなに楽しかったんだ!デート」
「まあーな・・」
「キスしたの!?」
「うっ!」
なんだこのませガキは・・。
「ねー?」
「そんなことしてません!」
「なーんだ、つまんないの・・」
「はあっ?」
「蘭、夕飯の用意が出来たって!」
「なんだ、それを言いに来たのかよ・・」
そして月曜日・・。
扉を開けると理奈ちゃんが待っていた。
「おはよう」
「おはよう蘭君!ごめん、これ返し忘れてた」
理奈ちゃんは、昨日俺が貸した手袋を差し出してきた。
「ああ、いつでもよかったのに・・」
「だってこれがないと手が冷えちゃうでしょう。私は自分のがあるから」
「うん」
手袋を受け取ると、理奈ちゃんの温かさを感じる気がする!
『はあー』
大きく息を吐くと真っ白!
『はあー』
真似して理奈ちゃんも・・。やっぱり真っ白だ!
理奈ちゃんは、肌が白いから一層寒そうに見える。
なんとなく俺の視線が気になったのか、理奈ちゃんが聞いてきた。
「私の顔に何かついてる?」
「いや、理奈ちゃん、肌が白いからホントに寒そうで・・」
「白いでしょ私の顔!」
「悪い意味で言ったんじゃないよ!」
「わかってるわ。でも小さい頃は、この肌の色のせいでよくからかわれたなあ・・」
「そうなの?」
「子供ってそういうのあるじゃない!」
「そうだな・・ごめん!嫌なこと思い出しちゃったね」
「うんん、平気よ!」
確かに子供って、ちょっとしたことでいじめられたりしちゃうんだよな。理奈ちゃん、もしかしてその頃のことが今でも・・。だとしたら、理奈ちゃんを傷つけちゃったかも!?
俺はそれが気になってしょうがなかった。
「ん?蘭君、まだ気にしてるの」
「・・うん」
「私の肌が白いのは仕方ないのよ!お父さんのお父さん、つまり私のおじいちゃんはロシア人なのよ」
「えっ!」
「だから私はクォーター!」
「クォーター?」
「4分の1はロシア人ってこと!」
「ふーん」
でも、その肌の色が理奈ちゃんにはピッタリだと俺は思うけどな!
「そう言えばさあ、昨日写真を1枚も撮らなかったね」
「うん。記念に撮っておくべきだったかな」
「ねー蘭君、今撮らない!」
「えっ!今」
「デートの続きのつもりでさ!」
「ああ」
「ちょっと待って!」
そう言って理奈ちゃんはメガネを外した。
やっぱメガネがない方が断然かわいいや!
そして理奈ちゃんはスマホを取り出した。ホンとは学校には持ち込み禁止なんだけど・・。
「内緒ね!」
そう言ってペロッと舌を出した。
「俺が撮るよ」
「うん」
そして理奈ちゃんの顔が俺に大接近!!
バクバク音をたてる心臓。
「撮るよ・・はいチーズ!」
俺は撮った写真を理奈ちゃんと一緒に眺めた!
「わー!蘭君かっこよく撮れてる」
「理奈ちゃんも・・」
「えっ?」
「カ・ワ・イ・イ」
「頬っぺがくっついてるみたいだね!」
「うん」
「後で蘭君のスマホに送るね!」
「あっ!ヤバイよ理奈ちゃん。急がないと学校に遅刻しちゃうよ」
「ホント急ごっか!」
俺たちは走り出していた!
「そんなにゆっくりしてたつもりないけどなあ!」
「話に夢中で、それに写真まで撮って・・ホントにデートの続きだね!」
「まったくだ!」
教室には、朝のHR 5分前に到着!
『ハアーハアー・・』
二人とも息を切らしている・・。そんな光景を一也が見逃すはずがなかった!
「怪しいなあ!もしかして朝からデートか・・」
「えっ!」
「えっ!・・そうなのか!?」
「・・違うよ!」
「違います!デートは昨日」
「理奈、蘭とデートしたの?」
今度は瞳だ!
「しまった・・」
「白状しなさい・・」
「あっそうだな!今度4人でどこかでか出掛けない?」
「理奈、4人って誰のことよ?」
「蘭君でしょ、私でしょ、瞳でしょ・・それから和久井君」
「それいいかもな」
一応、俺はそう言ってみた。
「じゃあ決まりね!」
「ちょっと・・」
「嫌なの瞳?」
「嫌というか・・」
「一也はOK だよな!」
「あっ・・ああ」
「はい決定!」
部活では、相変わらず理奈ちゃんのドリブルが冴え渡っている!それに比べ男子の方は、ダラダラダラダラ。あのミニゲームのときの輝きはどこにもない。
『皆さん下校の時間になりました・・』
「今日は何の曲だろう?」
「楽しみね!」
そして・・。
♪ラララーラララ・・・♪
「ん?知らない曲だなあ・・」
「私も。でも聞いたこともあるような・・」
「そう」
「うん、確かに聞いたことある!・・♪ンンン」
あー、メロディーが耳に残るって感じだ!今度放送部のやつに聞いてみるか・・。
「ただいまー!はあー腹減った」
「おかえり」
「蘭、今日もサッカーやってきたの?」と翼。
「当たり前だろう!部活なんだから」
「なにいってるの!今までサボってばかりだったじゃない。どうしたの急にやる気になって・・」
「・・♪ンンン・ンンン・・♪」
「ん?何の曲」
「さあ?今日かかった曲なんだけど」
「そう。なかなか良さそうな曲ね!」
「そうだよね!俺も耳から離れなくてさあ」
♪ンンン・ンンン・・♪