表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
109/123

反比例

私たちは瞳のお母さんのお店に集まっていた。いよいよ明日、瞳たち家族はロサンゼルスに出発する。

お店の内装も終り、テーブルの数もぐっと増えていた。

明日からはここで、川口さんとお父さんのお店がオープンする。


「いよいよ明日だね」

「うん」

「どんな気分だ瞳?」

「どんなって、夢と希望にみちあふれてるわよ!」

「そりゃそうだよな!なんせアメリカだもんなあ。ところで、あっちはどうだったんだ?」

「何よそのあっちって」

「デートに決まってるだろう!一也との」

「蘭、その話はいいだろう!今じゃなくても」

何となく照れてる和久井くん。

「私も聞きたいなあ」

私、意地悪?

「理奈ちゃんまで」

「だだ・・」瞳が言いかける。

「ただ?」

「ただ遊園地に行っただけよ」

「ふーん、それだけか・・」

「何よ蘭?」

「だって・・一也、顔真っ赤だぜ!」

「だから何だよ」

「告白とかしたんじゃないかと思ってさ」

「うっ!」

「えっ!」

動揺する二人。どうやら蘭君の勘、図星みたいね!

「やっぱりな!お前ら嘘つけないタイプなんだな」

「良かったね瞳!」


「それで?」

「それでって?」

「何て言うか・・キスとか!?」

蘭君、それ聞いちゃう!?

「なに言ってるのよ蘭・・『ポカン!』」

「痛っ!」

「言わせておけば・・図にのって!」

ほら怒られた!


でもホント良かったね!お互いの気持ちが確認し合えて!


いつだったかお母さんと、こんな話をしたことがある。

「ねえお母さん、お母さんの初恋ってお父さんなの?」

「違うわよ、高校生の時かなあ・・」

「そうなんだ」

「だって前にも話したけど、お父さんと知り合ったのは、北海道のお店で働いてたときだもの」

「あっそっか。じゃあ初恋のひととはうまくいかなかったのね?!」

「まあ、そういうことだけど」

「それが普通なのかな?」

「普通というか、自然のなりゆきというか、初恋のひとを奥さんや旦那さんにするケースって少ないわよ!進学すれば学校が別々になったり、住む場所が遠くなったりしてね」

「やっぱそうよね・・でも、それってちょっとショックだな!」

「蘭君とのこと?」

「うん」


告白してお互いの気持ちがわかったからって、そのままずっと好きでいつづけるのって難しいことなの?

瞳と和久井くんの場合は?

私と蘭君の場合は?


「瞳、明日何時の飛行機だっけ」

「成田を17時」

「俺達も成田まで見送りに行くよ」

「いいよ、よけい悲しいじゃない」

「じゃあ、明日もここから見送るよ!」

「だからいいってば」

「俺は必ず来る!」

「俺も来るよ瞳」

「私も!」

「もう、勝手にすれば!」

なかなか素直になれない瞳。

なんとなくその気持ちわかる気がする。でも、絶対見送りに来るからね!迷惑でもさ・・。


そして私たちは、あるものを買うためにお店に来ていた。それは瞳へのプレゼント。

何がいいか色々迷ったけど、和久井くんのイチオシで電子辞書を贈ることにした。私と蘭君と和久井くんは500円ずつ。残りは大人たちにお願いをして。

「どれがいいのかなあ?」

「一也、予算は限られてるぞ」

「ああ」

「店員さんに聞いてみようか」

「そうだね」


「すみませーん」

「はい」

「電子辞書を買いに来たんですけど、どれがいいのかわからなくて」

「友達のプレゼントにしたいんです」

「中学生?」

「はい、中三です!」

「それとロサンゼルスでも使えるやつ!」

「ロサンゼルス?」

「明日引っ越しちゃうんです。アメリカに」

「そうでしたか」

「だから英語でも使えるのがいいと思って」

「男の子?女の子?」

「女子です」

「じゃあデザインとか色なんかもかわいいのがいいかなあ」

「あと予算が○○円なんですけど」

「そうですか。これなんかいいかなあって思ったんですけど、ちょっとオーバーしちゃうかな」

「あっ!すごくいい」

「デザインもカッコいいじゃん!」

「色も結構揃ってるんですよ!」

「いくらなんですか?」

「どんなに割り引いても2000円ほど予算をオーバーしちゃうかな」

「じゃあダメだね」

「うん、仕方ないよ」

「ちなみにその子はどのくらいロサンゼルスに行ってるの?」

「5年くらいって言ってたかな」

「そんなに!その子も異国の地だと心細いだろうね。ん・・よしなんとかしましょう!」

「なんとかって・・?」

「君たちの予算内で買えるように!」

「そんなこと出来るんですか?」

「私たちには社員割引っていうのがあるんです。それを使えば」

「そんなことして大丈夫なんですか?」

「わたしが買ったってことにすればね!ホントはルール違反なんですけど」

「やったあ!ありがとうございます」

「いいえ。色はどうしますか?」

「私なら赤がいいかな!?」

「じゃあ赤で!」

「いいの?和久井くん」

「ああ」

「わかりました」


そして品物を買い、店を出ようとしたとき、さっきの店員さんがやって来て私たちに言った。

「どんなに距離が離れても、気持ちという距離はそれに反比例するらしいですよ。どうかそのお友だちに『ガンバレ!』って言ってあげてくださいね」

「はい!」








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ