ホクロ
「ん?・・何ジロジロ見てるのよ一也」
「えっ!」
「えっじゃない!今私と理奈の水着を嫌らしい目で見てた」
「俺みてないぞ!誤解だよ。なあ蘭」
「どうだか」
「えっ・・なあ翼君」
「どうだか」
「そんなあ・・」
一也のやつ何やってんだあ!
そんな瞳と一也のやり取りを見ているうちに、何故か俺の視線まで理奈ちゃんと瞳の水着に移っていたらしく・・。
「蘭、顔がにやけてるぞ!」
「えっ!」
「一也だけかと思ったら蘭もかあ・・!」
「違うよ!・・なに変なこといってるんだ翼」
「だってホントだもん」
「うっ・・」・・なんとなく言い返せない俺なのでした。
そしてお昼ご飯は近くのファミレスで。
「翼は何にするんだ?」
「ん・・カレーかハンバーグ!」
「ふふっ、翼君はカレーが大好きなんだね」
「うん!」
「特にお母さんのカレー最高だもん!」
「あら翼、嬉しいこと言ってくれるじゃない」
「へへぇ」
「俺はハンバーグにしようかな」
「俺もハンバーグだなあ!」
「じゃあぼくもハンバーグ」
「翼君、カレーライスじゃなくていいの?」
「カレーはうちで食べるから!」
「そっか」
翼のやつ点数稼いだな!
そして午後からも僕たちは海ではしゃぎにはしゃいだ!
それにしても、翼はスイミングキャップがよく似合う。
イルカの風船に載って、俺と理奈ちゃんに支えられている。
その時、俺はちょっとした発見をしてしまった。理奈ちゃんの左の鎖骨の下に、ホクロがあることを。どうってことないことだけど、俺も理奈ちゃんと同じ場所にホクロがあるのだ!やはり理奈ちゃんと俺は運命の糸で結ばれているとか・・ちょっと飛躍しすぎかな?!
理奈ちゃんは気づいているのか?そんなどうってことないホクロの位置のこと・・。
海岸では父さんたちが、ビールを楽しそうに飲んでいる。ビールってそんなに旨いのかねー・・。
すると、川口さんだけ宿の方に向かって行く後ろ姿が見えた。どうしたんだ・・?
そうそう、今日の夕食は屋外でのバーベキューだ!それにキャンプファイアも、天気さえ崩れなければやってくれると父さんが言っていた。
なんとしてもやりたいなあキャンプファイア。もう少しでロサンゼルスに行ってしまう瞳の為にも。
そして宿では
「あら嫌だ!ゲリラ豪雨に注意ですって」
「この辺りじゃないといいですけど・・」
「そうよね。バーベキューどころじゃなくなっちゃうわ」
「うん、ましてやキャンプファイアなんて出来ないですね」
「そんなことになったら子供たちガッカリするわ」
「どうかしましたか?」
「ああ、川口さん」
「料理の下ごしらえをしようと思って、早めに切り上げてきました」
「いや実は天気予報で・・」
「ゲリラ豪雨!それは困りましたね」
「てるてる坊主でも吊るそうかしら?!」
「佐藤さん、てるてる坊主良いかも知れませんね!」
「実は昨夜息子たちが作ってたもので・・」
「そうでしたか。とりあえず私は準備にかかりますね」
「あっ、私たちもお手伝いします」
そして再び海岸では
♪ Let It Be、 Let It Be・・・♪
「佐藤さん、ビートルズかかってますよ!」
「ホントだ!・・ Let It Beですか 」
「ええ」
「安藤さんは、このくらいはギターで弾けちゃったりするんでしょ!?」
「ええまあ」
「羨ましいなあ」
「ふうー!喉かわいたあ」
「コーラあるぞ」
「うん、ありがとう!」
「蘭、歌聴こえるだろう」
「歌・・ああ、英語の歌?」
「ザ・ビートルズだ!知ってるだろう」
「うん、名前ぐらいなら」
「そういえば蘭君、音楽の教科書に載ってなかったっけ?ザ・ビートルズの曲」
「そうだったかなあ・・」
「 Yesterdayでしょ! 」
「あっそうそう、瞳よく覚えてたね」
「で今かかってるのがその Yesterday? 」
「今のは Let It Beさ! 」
「なんだか、お父さんも蘭君のお父さんも嬉しそうだね?!」
「こうやって海辺でビールを飲んでビートルズを聴く。これ以上の至福の時はないね!ねえ佐藤さん」
「同感!・・あっ、曲が変わったぞ」
「 Hey Jude! 」
「これもいい歌ですよね!どこでかけてるんだ?・・」
「ラジオ局でもあるのかな?」
大人の男たちは、ザ・ビートルズが聴けて大満足のようで!
僕ら子供は、広い青い海と白い波に大満足!
おまけに俺は、理奈ちゃんのホクロを発見しちゃったし・・。
そしてこのあと、この家族旅行のクライマックスがやって来る!
ううー、楽しみー!!
宿に戻り、着替えを済ませた理奈ちゃんに、俺は自分のTシャツを衿からめくり、こっそりあるものを見せた。
すると
「知ってたわよ!」
「えっ?」
理奈ちゃんはとっくに、俺の左の鎖骨の下のホクロに気づいていたのでした。
知ってたかあ・・・。