ホント早っ!!
お父さんが帰ってきたのは夜中の0時近く。お酒を飲んできたらしく、いつもよりやや声が大きい。
「ただいまー!」
「お帰りなさい」
「あなたお茶漬けでも食べますか?」
「うん!お願いしようかな」
「今日は川口さんと一緒だったんでしょ?」
「ああ、そうしたら佐藤さんも飛び入り参加してくれてさ」
「ええ?」
「軽く一杯飲むつもりだったらしいけど、たまたまお店が一緒になってさ!」
「そうだったの」
「理奈もお母さんもエトランゼって言葉知ってるかい?」
「突然どうしたのお父さん?」
「いや、たまたま川口さんから聞いてさ。」
「どういう意味なの?」
「異国のひとだって。田村さんとこがロサンゼルスに行っちゃうって話をしてたら、急にエトランゼって言葉が出てさ。なんかいい響きだよね!」
「私もそう思った!」
「理奈もか。蘭君のお父さんもそんなこと言ってたから、今ごろ同じような話してるんじゃないかな?!」
「ふーん。ちょっと確めてみようかな・・」
そして私はスマホを握り『エトランゼ』・・それだけを書いて蘭君に送信した。
プープー
『こっちの話題もエトランゼ』
「フフぅ!お父さん大正解よ」
そう言って私は蘭君の返信してきた画面をお父さんに見せた。
「やっぱりな」
そして次の日、私たちは蘭君の家に集合して、海水浴のことを話し合っていた。リビングをほぼ占拠!もちろん今日の予定の勉強はしっかりと終わらせてから。
「まずは日にちと場所だけど・・」
「ねえ母さん、父さんの会社からまたマイクロバス借りれるかな?」
「大丈夫だと思うけど。お父さんに聞いてみたら!もうすぐ帰ってくるから」
「父さんどこいってるの?」
「床屋だよ。翼とね」
「ふーん」
「蘭も夏休みの間に行きなさいよ!床屋」
「うん」
床屋さんかあ・・私の記憶には床屋さんにいったという記憶がないんだよな。お母さんが髪は切ってくれるから。でもそろそろそれも卒業かなあ・・。
そのうちに父さんと翼が帰ってきた。
「ただいまー!」
「お邪魔してます。あら翼くん、すごくカッコよくなったね!」
「へへぇ・・理奈お姉さんも床屋に行けばきれいになるよ!」
「えっ?そうかなあ」
ホントにキレイになるかしら・・?!
「なにませたこと言ってるのよ翼」
あーあ、でも翼君アリガトね。
「実は私、床屋さんとか美容室にはいったことないんだ」
「えっ?!」・・あっ、やっぱり皆驚いてる。
「理奈ちゃんホント!?」
「うちお母さんが器用で、私の髪も切ってくれるから」
「あら!素敵なお母さんね」
「えっ!理奈お姉さん、床屋にいったことないの」
「記憶にないなあ」
「翼だってついこの間まで、父さんに切ってもらってたじゃんか」
「瞳は?」
「私は床屋」
「母さんは?」
「美容室よ。年に1回だけどね」
「何が違うの?床屋と美容室って」
翼君が疑問に思うのもわかる。私にもわかんないんだよねその違い。
「似たようなもんだろ!?」
「そうなの?お母さん」
「まあ、そうかな・・」
そうなんだ・・?
「あっそうだ父さん、海水浴に行くのにさ、会社のマイクロバス借りれるかなあ?」
「ああ、それなら大丈夫さ!もう予約してあるから」
「えっ?」
予約って・・蘭君のお父さんどういうことですか?
「たぶん蘭はそう言ってくると思ってさ」
「さすが父さん!・・じゃあ日にちも決まってるの?」
「もちろん!今度の土日だ」
「父さん早っ!!」
ホント早っ!!
「皆は予定大丈夫かな?急な話になっちゃうけど。ちなみに理奈ちゃんのお父さんにはもうOK をもらってるんだ!」
「えっ!」・・参りました。
「瞳んとこはお父さんとお母さん行けそうか?」
「うちは、お母さんは行くって言うかもね」
「一也んとこは?」
「うちは俺だけだな!」
「そっか。て言うことは何人だ?」
「瞳んとこが2人、一也が1人、理奈ちゃんとこは・・」
「3人かなあ」
「でうちが4人・・翼、全部で何人だ?」
「ん・・・10人!」
「父さん、全員乗れるかな?」
「余裕余裕!」
「よし!じゃあ決まりだ」
こんな感じで5日後の土曜日、私達は海水浴に出掛ける。