表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
100/123

いい響き

「安藤さん、だいぶ昔の勘が戻ってきたみたいですね!」

「いやあ、まだまだ足を引っ張るばっかりで」

「そうですか・・」

「それより修行の場所までお世話になって、川口さんにはなんてお礼を言ったらいいか」

「いやいや、そんなこと気にしないでください。来月には新しい店のオープンです!良きパートナーとして頑張りましょう」

「はい、ありがとうございます」


「ところで安藤さんはどんな店にしたいですか?」

「私は川口さんのやり易いようにやってもらえれば・・」

「私はもう老人ですよ」

「そんなことは・・」

「ただ私は高級感のある店にはしたくないんです。誰でも気軽に入れる!そんな雰囲気のお店にしたい」

「私も同感です!」

「和食洋食にこだわらず、安藤さん、あなたの個性を存分に発揮してください。今日はその前祝いです。さあもう一度乾杯しましょう」

「はい!ありがとうございます」


『いらっしゃい!』


「あっ!安藤さん」

「ああー佐藤さんじゃないですか」


「紹介しますね。こちら川口さん」

「初めまして、安藤と申します」

「初めまして」

「佐藤さんとは同じマンションで、子供が同級なんです」

「そうでしたか」

「・・川口さんって、今度お店を一緒にやる!?」

「そう。私の師匠ですよ!」


「そういえばうちの理奈、蘭君に相当ゾッコンらしいですね」

「えっ?」

「いえ、この間蘭君と同じ高校に進学したいって言ってきたもので・・」

「そうでしたか。それはとんだ迷惑をうちの息子が」

「いえ、若い頃にはよくある話なんじゃないですか」

「かもしれませんね。それにしても安藤さん、ゾッコンなんて言葉久しぶりに聞きましたよ」

「今の若者は使わない?」

「さあ」


「娘さんの初恋の相手が、佐藤さんの息子さんってことですかな!」

「どうもそのようでして」

「うちの息子も理奈ちゃんにはゾッコンみたですよ」

「青春まっさかり!うらやましいかぎりですね。安藤さんも佐藤さんもまだまだお若いですけどね!」

「いやあ、もう若くないですよ」

「私に比べたら若いですよ!私はもうすぐ60歳だ!」


「そんな先輩は、恋愛結婚ですか?」

「まあ一応ね」

「お子さんは?」

「息子がいます。今年確か30歳のはずです」

「そうですか!」

「料理の勉強をするといってヨーロッパに飛び出して行きましたが、今ごろどこでどうしているのか?もう丸2年音信不通です」

「それは寂しいですね。でも仕事はちゃんと親父と同じ道を選んだってわけですね」

「ええまあ・・」

「そういうのなんだかうらやましい気もするなあ」

「そうですかね?!」


「でもそうやって異国で頑張るっていうのも大変ですよね!」

「私もロシアにすこしばかり居たので、その苦労もなんとなくわかるなあ。まあ、私の場合は父がロシア人なんですけどね」

「好きでやってることです!少しぐらいの苦労は当たり前ですよ」


「ところで田村さんももうすぐロサンゼルスなんだよなあ」

「うん。そのお別れ会をかねて、子供たちは海水浴にに繰り出す計画をたててるみたいで・・」

「海水浴ですか」

「何年か前に蘭と翼を連れて行ったことがあるんですよ。パーベキューなんかも出来て、なかなかいいところでしたよ。おそらくそこに行くって言うんじゃないかな!?」

「へえー、それは楽しそうですね」


「田村さんのところのお嬢さんも、お子さんたちと同級ですか?」

「ええ」

「新しい生活にすんなり溶け込めればいいですけどね」

「まあその辺は若さでカバーするでしょう」

「エトランゼかあ・・」

「えっ?なんですかそれ」

「異国のひと!昔ちょっと流行ったことばです」

「なんか響きが残りますね耳に!」

「うん同感!」


かなりお酒がすすんだようで、上機嫌で父さんは帰ってきた。もうすぐ明日になっちゃう時刻に。

「ただいまー」

「お帰りー」

「なんだ、蘭も翼もまだ起きてたのか」

「夏休みだからね」

「なるほど!」

「あなただいぶ飲んでるわね」

「うん、明日は休みだし軽く飲んで帰ろうと店に入ったら、安藤さんと川口さんが居てさ」

「それで一緒に!?」

「そういうことだ」


「エトランゼかあ・・」

「なにそれ?父さん」

「蘭、ちょっとスマホで検索してみてくれ!」

「うん」


『エトランゼ』・・検索。


「あったか?」

「見知らぬひと、外国から来たひと。でこれがどうかしたの?」

「さっき川口さんからその言葉を聞いたら、なんだか耳から離れなくてな」

「ふーん」

「でもなんかいい響きだね!」

「おっ!蘭もそう思うか。実は父さんもだ」


プープー・・あっ理奈ちゃんだ。


『エトランゼ』


「ん?」俺は思わず辺りを見回してしまった。

「ん?どうしたの蘭」

翼が不思議そうな顔で聞いてきた。

「いや、理奈ちゃんがさ・・」

俺は皆に理奈ちゃんからのメールを見せた。


『エトランゼ』


「あっ!」翼も慌てて辺りをキョロキョロ。


「きっと同じ話題で盛り上がってるのさ!上の家族も」

「あーあ、そういうことか」

「安藤さんも、父さんと同じで耳に残るって言ってたからな」


そして俺も返信。

『こっちの話題もエトランゼ!』











評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ