名前で呼んで
思いきって誘っちゃおうかな!でも明日は予定があるとか、そんなのは嫌だとかって断られたら相当ショックだもんなあ。あーどうしよう・・。
明日の日曜日、私は蘭君をデートに誘おうかやめとこうかで悩んでいた。だけど、なにもしなかったら、何も前には進まない!そんな当たり前のことを思いながら、私は思いきって蘭君に言った!
「佐藤君」
「何?」
「あの・・」
勇気を出して!
「どうしたの・・?」
「明日の日曜、何か予定ある?」
「明日、いや別にないけど」
よし、第一関門突発!
「明日、私とデートしてくれないかな・・」
言っちゃったー!
「いいよ・・えっ!デート!!?」
蘭君は、どうやら鼻血をこらえているようだ。
「デートっていっても、どこかブラブラしたりとか・・プチデートって感じで!」
「プチデート?」
「どうかな?」
OK って言って!お願い。
「うんいいよ!」
「ホント、やったあー!」
意外とすんなりだった!
そしてマンションに着くと、私は嬉しさと恥ずかしさで、走って階段を上がってきてしまった。
「後でメールするね!」
そう言い残して。
「ただいまー」
「お帰り」
私は一直線に自分の部屋に行き、スマホを握った。
でも、なんてメールすればいいんだろう。勢いでデートに誘ってはみたけど・・。
「お母さん!なんてメールしたらいいのかな?」
「えっ?」
「明日ね、佐藤君とデートする約束はしたんだけど・・」
「佐藤君って?」
「下の階の佐藤蘭君」
「何時に約束したの?」
「まだ決めてないや!」
「どこに行くの?」
「それもまだだ」
「とりあえずそれが決まらないと始まらないわよ!」
「そっか。ありがとう」
「大丈夫かしらね・・」
そしてやっと私は蘭君に1回目のメールをすることができた。
『まず、待ち合わせの時間と場所なんだけど、午前10時にいつもの場所でいいかな?』
蘭君ならわかるよね!いつもの場所で!
『わかった』
『あとは、どこに行くかなんだけど・・佐藤君はどこか行きたいところあるかな?私はこっちに来たばかりだから、どこに行っても新鮮で楽しいと思うんだけど』
ここは蘭君に任せるしかないな!
そして10分後、メールがきた。
『△△公園なんてどうかな!?色々遊べたりもするし』
△△公園、どんなところだろう?!
『わかった。じゃあ△△公園で決まりね!・・明日天気どうかなあ?』
『明日は一日中晴れ!』
よし、神様も味方してくれてるわ!
あとは何を着ていくかね!天気は良くても、風は冷たいもんなあ・・。やっぱスカートはやめた方がいいかな。
あとは白のセーターとマフラー・・・。
「理奈、まだ起きてたの!?」
「明日着ていくのを選んでるのよ!女の子にとっては意外と重要よ」
「それはよくわかるけど・・手袋も忘れないようにね」
「うん」
「じゃあ行ってきまーす」
「はい、楽しんでらっしゃい!」
外階段を下りていくと、ちょうど蘭君も扉を出てくるところだった!
「おはよう!」
「おはよう佐藤君」
「電車に乗るよ!15分ぐらいかな」
「うん。電車に乗るなんて何年ぶりかなあ・・」
「乗ったことはあるの?」
「そりゃああるわよ!」
駅に着くと、蘭君が私の分までキップを買ってくれた。
「はいこれ!」
「お金払うね」
「いいよ!実はね、来るときに父さんに軍資金もらったから」
「ありがとう」
あっ!そういえば手袋忘れて来ちゃったな・・。
電車では二人並んで座った。蘭君にもっとくっついちゃおうかな!でも、なんか周りの人が見ている感じで、ちょっと恥ずかしいや 。仕方ないからこぷしひとつ分離れて座ったままだ。でも、いつかはくっついて座りたいな!
駅を出ると、目の前がもう公園だ!
「結構人がいるのね!」
「日曜で天気もいいからかな」
家族連れや私たちみたいなカップルもいる。
アスレチックは結構たいへん!ズボンをはいてきて正解だ。ハムスターもかわいかった。でも少し指を噛まれたんだよね!
ハンバーガーを食べているときに蘭君が言った。
「確かこの先の池が釣り堀になってたと思うけど」
「釣り堀って魚釣りの・・」
「うん」
「やってみましょうか!?」
「安藤さん、釣りとか出来るの?」
「意外と上手よ!」
「よーし、どっちがたくさん釣れるか競争しようか!」
「いいわよ」
小さい頃はよくお父さんと魚釣りに行った。こんな寒い日はなかったけど・・。
・・しかし、いっこうに魚が釣れる気配はない!
「ダメだなあ・・」
「釣れないねー」
「ホントに魚いるのか?」
私には蘭君にお願いがあった。
「あのさあ佐藤君」
「ん?」
「名前で呼んで!私のこと」
「えっ!」
「瞳みたいに・・」
「・・・」困ってるの蘭君?
「急にじゃなくていい、徐々にさ・・」
「うん」
結局、二人とも魚は1匹も釣れないまま・・。
「そろそろ帰ろうか」
「そうね、風も冷たくなってきたし」
「・・これ」
蘭君は自分の手袋を私に手渡してくれた。嬉しい!
そして私は言った。
「蘭君の手が冷たくなっちゃうよ!」
「えっ!・・」
「2回目だね!」
「うん!」
最初はサッカーのミニゲームのときよ!
そして私たちは電車に乗った。
「・・理奈ちゃん」
「えっ!・・」
「今日はありがとう!」
「・・・」私の名前、呼んでくれた!
「じゃあ、また明日ね」
「ああ」
私はまた、マンションの階段をかけ上がっていた!なんか、嬉しくて嬉しくて・・。
そして私はメールを送った。
名前で呼んでくれてありがとう!