帰郷と、絶望
婆様の転移魔法により、僕らは我が家に帰還した。
「5年ぶりだけど、変わってないね。」
「ここが颯夜様のご実家なのですね。」
一言目は僕、二言目は桜である。
「後、貴方には黙っている様にって言われてるのだけど、解ってしまう事だから伝えなきゃいけない悲しい事が、あるの。」
「はい、何でしょうか?婆様!僕には、とても嫌な予感しか致しません、出来れば聞きたくない様な。」
僕には、とても鳥肌が立つ様な嫌な予感しかしなかったし、ここに転生する前でも、人が前触れもなく、何者かに殺されたり、或いは病気で命を奪われるという事は、珍しい事でなく、日常生活の中で見聞きして来た。一番起きて欲しくないという、身近な家族にも起きうるという事を受け入れざるを得ないと感じていた。もし、転生前の経験がなければ、受け入れる事は相当に難しい事だったと思える。
「そうね、その通りよ。颯夜、貴方の母親である、紫苑がね…、」
「母さんが…、」
「魔物に襲われて、殺されちゃったの…。」
「母さんが…、魔物に…。母さん…、うぅぅ…。」
「(母さん…、僕は再び母さんを喪ってしまった…。前世では迷惑ばかりかけて、この世界でも5年という短い期間だったし、親孝行なんてとても叶わなかった…。僕にできる事はこの与えられた力を使って同じ悲劇を繰り返させない事だ…!)」
「すぐに受け入れる、という事は難しいと思うけど、抱え込み過ぎない様にね。」
「はい、僕は母さんの事、忘れない、だけど、同じ悲劇を誰にも繰り返させない。」
「父上、只今、帰還致しました。」
「お初にお目にかかります、颯夜様の使い魔をさせて頂いております、桜と申します。以後、お見知り置きくださいませ。」
「無事に帰って来たか。7年は長いな、見ない内に色々成長したみたいだな。母から聞いていると思うけど…。」
「はい、伺っております。母さんの事は悲しい事ですが…、母さんはもう、戻って来る事は2度とありません。だから、僕は母さんの死を無駄にすることない様に、精一杯自分のできる事をするだけです。」
「そうだな。だが、一人で抱え込み過ぎるなよ?ところで…、そちらの娘は、誰かに似てるよな?」
「そんなことないですよ、父上…。」
「俺は、てっきり日向ちゃんがモデルかと思ったが…?」
「はははは…、勘違いですよ…、父上?」
父さんはニヤニヤしてる。
「確かに、お察しの通りですよ。」
「それなら、早速、幼なじみに挨拶して来なさい。愛しの日向ちゃんに?」
さっさと行きなさい、と煽り立てる。
「お言葉に甘えて、早速、行ってきますよ…!行くよ、桜。」
「桜ちゃんはこちらに置いてきなさい?」
「はい…、わかりました。」
父上、にやけ過ぎだよ。
僕は早速、幼なじみに挨拶に行った。




