異世界転生
「お子様は順調に育っていらっしゃるそうですよ、奥様。」
「良かったわ、私自身も、このお腹の子も健康を保てて…。」
母親らしき女性の声と世話役らしき女性の声が聞こえる。僕自身は暖かい液体の中に浸かっているようで、記憶になど残っていないが、これがいわゆる羊水というもので、胎盤の中の感覚かもしれない。今、僕にできることはないので、再び、意識を手放した。
数ヶ月後、
「オギャア、オギャア、オギャア!」
「おめでとうございます、お子様は無事に生まれましたよ、奥様!」
僕はこの世に無事に生を受けたようだ。
「無事に生まれて良かったわ!主人を呼んで来て下さる?」
「かしこまりました。」
女性が出ていく音がした。僕は母親らしき女性に抱かれ、
「立派に育つのよ、私のかわいい子…。」
僕はまだ目が開けられる状態じゃないし、ひどく眠気がするので、意識を手放した。
僕はこのとき、予想だにしていなかった…、母君との別れが早く来るなんて。
「無事誕生したようじゃな。これから先幾つも試練があると思うが、それはお前次第じゃ…。儂は期待しておるぞ。」
聞いた覚えがある声が聞こえた気がした…。
「期待に応えられるように全力尽くします。たとえ、どんな手を使ってでも倒すつもりです。命かけてでも、いや、やり遂げるさ、必ず…!」




