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無題  作者: さちはら一紗
厳し過ぎる チュートリアル
7/75

むなし過ぎる スライム駆除



 

 あたしは今、腕輪のプロジェクターで依頼クエストを確認しながら道を歩いている。

 道と言っても、「街道」と呼ばれる整備された道で、舗装こそされていないが平らでとても歩きやすい。めったに魔物も出ないそうだ。


「そういえば、クエストを受理しなくてよかったんですか?」

「駆除系のクエストは、年中発注されてるしね。 倒してから依頼を受けるという形が主流だ。 まあ駆除など限られたやつでしか使えない手なんだけど」


 キャンセル料を払わないための術らしい。

 それにしても駆除って……ゴキブリかよ。討伐と言ってください。夢もロマンもあったもんじゃない。


 ちなみに倒した云々は腕輪に記録されるらしい。真剣に中世ヨーロッパ風を撤回しようと思う。



 あたしはクエスト一覧を眺めて、あることに気付いた。


「薬草採取とか、ないんだな……」


 何気ない呟きだったが、それを聞いたメリダさんにものすごく怪訝な顔をされた。


「薬草なんて自分で育てたほうが安全で効率もいいじゃないか」

「あ、そうですね」


 言われてみればそうだ。 

 これはゲームじゃないんだな。RPG好きとしては物足りなくもある。

 とはいっても、無いのはこの辺が危険ではないからで、場所によってはあるらしい。初心者にはできそうにもない。


「そろそろ街道から外れるぞ」


 メリダさんが左を差して指示を出す。


「はー……いっ⁈」


 ぐにゅり。

 足を踏み出した瞬間、何とも不快な感覚が足の裏から伝わる。

 恐る恐る目を向けると、半透明なゼリー状のものを踏んでいた。


「げ……何これ」


 ちょっと後ずさり。いや、だってきしょい。


「ああ、スライムだな」


 メリダさんの声には何の感情も乗っていなかった。


「す、スライム?」


 これが?

 青くてかわいらしい形状などしていない。ついでに目もない。

 あたしは砂浜に打ち上げられたクラゲの死体を思い出した。サイズが段違いだけど。


 メリダさんは淡々と剣を抜き、真っ二つに切る。きっとこれがオーバーキルというやつだ。

 真っ二つに切られたスライムはだんだんと動かなくなり―――






 ―――分裂した。



 ……あ、はい。単細胞生物ですね。了解しました。


「と、このように、スライムは分裂する」


 はい、メリダ先生の青空教室。ありがとうございました。


 メリダさんは剣を持っていないほうの、左手を振りかざした。そして短く詠唱。たぶん呪文だ。


火球ファイアボール


 拳大の二つの火の玉が、スライム×2を焼き尽くす。


「というわけで、スライムに出会ったら魔法だ」


 はい、スライムに物理攻撃は聞かないと覚えておきます。


「スライムは基本的に無害だが分裂したり、合体したり、繁殖したりと、とにかく邪魔だ。 見つけ次第駆除するのが冒険者の掟だな」


 ああ、もちろん魔法が使えるやつ限定だ。と付け足される。

 ……なんて駆除という言葉が似合うのだろうか。



 ちなみに討伐料は、サッカーボール大のスライム一匹につき百テルだとか。






 安っ!!



 


ご都合主義なところが多々あるかと思います。できるだけそうはならないように気を付けてはいますが、深く考えないで頂けるとありがたいです。

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