高すぎる 登録料
女剣士の名はメリダ・カレル。ランクCの冒険者で、クラスはやっぱり剣士。
ランクは、規格外、SS、S、A、B~Fという順らしく、熟練あたりだろうか。
登録前に装備をそろえたほうがいいということで、ただ今買い物に向かっている。クラスを設定するときに、ちょっとした試験があるらしい。魔法が使えないのに、魔法使いです、なんて語るのを防ぐためだとか。
そういえば、魔法ってどうやって使うんだろう。使えるようになったはずなのだが。
考え込んでいると、メリダさんが声をかけてきた。
「佐倉ルイと言ったな」
「え、あっ、はい」
そう、あたしは結局そのまま名乗ったのだ。理由?なんかめんどかったから。以上。
「コルスの街は初めてか?」
そうか、ここはコルスっていうのか。
「はい」
「大変だったな」
ええ、大変でしたとも。女神に拉致されて。
叫び出だしたい衝動に駆られている間に、店についたようだ。
「何が使える?」
「飛び道具ですね」
銃がいいな銃がいいな。
期待を込めて店内を見渡したが、もちろんあるわけがなかった。あったとしても、反動が何たらこうたらで結局使えないというオチが、あたしらしく起きそうである。
「弓、か」
メリダさんが、適当に見繕って持ってきてくれた。
大きすぎず、見た目より軽い。もっとも弓なんて弓道部の体験入部でしか触ったことがないのだが。
まだ使い方、覚えてるかな。
「試し打ち、させてもらえるぞ?」
「ありがたいです」
店員に補助されながら、的を射る。
ビュッと音を立てて中央に刺さった。
「おお……」
力とかも上がってるな。
女神に、「運動神経だけじゃなくて、反射神経とか動体視力もほしいから……要するに人体強化かな」なんて言っててよかった!
「上手いじゃないか。 これにするか?」
「はい!」
その後、弓矢と小さめのナイフを購入し、違う店でレザーアーマーや皮の籠手を買った。それらを、ブレザーを脱いで装着。ポーション類も用意した。
……あたし、回復魔法使えるんじゃないかな?
買い物で分かったのだが、円=ここのお金の単位テルぐらいの価値があるようだ。
ということは、登録料二万円?高っ!
合わせて借金総額約四万円……。大丈夫かな?
一気に冒険者ぽくなったが、下はスカートだし靴はローファーのままだ。ついでにスクバが邪魔。
「その鞄、空間拡張効果がついてないのか?」
くうかんかくちょう?
あれですか、四次元ポ〇ット的なあれですか?
「フツーのやつですけど」
そう答えるとメリダさんは自分の鞄の中を探り始めた。鞄と言ってもほとんどポーチだ。
そして一つ、明らかにそのポーチよりも大きいバッグを差し出す。
「私が前使っていたやつだ。 ルイにあげよう」
「ありがとうございます」
すごく親切だ。というか、ちょろい。恩人ながらも、こっちが心配になってくる。
ありがたく頂戴し、スクバごと突っ込む。スクバの半分ほどの大きさしかないのだが、楽々入った。しかし無限に入るというわけではなさそうだ。
斜め掛けにする。
いいね、ファンタジーって感じがするよ。
ギルドで登録を済ませると、銀色の細い腕輪が渡された。
「なんですかこれ」
「〈表示〉っていってごらん」
メリダさんの言われたとおりに言うと、腕輪の宝石からプロジェクターみたいなのが浮かびあがってきた。
佐倉ルイの情報が書かれている。使える魔法も見れるようだ。あとでチェックしておこう。
「自分の声以外には反応しないからね」
それにしても、SF!めっちゃSFチックだよ。これは二万する。ていうか二万で足りるのか?
ファンタジーはよくわからない。
「これ、全員付けてるんですか?」
「いや、冒険者でもなければ普段はつけていない人のほうが多いと思うよ」
身分証明書の代わりか。
「それじゃあさっそく仕事に行こうか」
「はい!」
意気揚々とくりだす。自分が世間知らずだと気付くのは、もっと後の話だった――――
五話目でやっと登録。
次回初戦闘です。




