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あいつが大きらい

作者: mahuyu

童話、絵本大賞に応募します

       あいつが大きらい

                          

 ぼくはあいつが大きらい

 へんな顔をしているし、

 丸っこいし、

 やけにすばしっこいし

 ブーブーするし……

 だからぼくはあいつが大きらい


 ぼくはあいつが大きらい

 大好きなぼくのお母さんと毎日楽しそうにしているから。

 だからぼくはあいつが大きらい

 ぼくのお母さんだよ。

 ぼくだけのお母さんだよ。

 気に入らない。

 気に入らない。

 大っきらい。

 

 お母さんもお母さんだ。

 世界で一番あっくんが好きだよって

 いつも言ってるのに。

 お母さんがあいつと遊ぶ時は、

 ぼくが話かけても知らん顔。

 「ねぇ、ねぇ」ってエプロンのはしを引っぱっても

 「今、忙しいからあっちで遊んでて」って。

 そんなにあいつと遊ぶのが好き?

 そんなにあいつと遊ぶのが楽しい?

 気に入らない。

 気に入らない。

 大っきらい。

 

 それが、たまにならいいよ。

 たまにならね。

 でも、まいにちなんだよ。

 まいにちなんだ。 

 

 鳩の時計が十回なくとまいにちはじまるんだ。

 お母さんはあいつを部屋につれてきて、 

 ブーブーダンスをいっしょにおどりだす。

 部屋中をあっちへ行ったり

 こっちへ行ったり。

 

 あいつがブーブーうるさい声を出すから、 

 お母さんはあいつが泣きやむまで

 ずっといっしょにおどらなきゃいけないんだ。

 ぼくは耳を押さえて

 「うるさい、うるさい」と大声出すけど

 「ごめんね。もうちょっとまってね」

  あいつの代わりにどうしてお母さんがあやまるの?

  お母さんは悪くないのに。

  どうしてお母さんがあやまるの?

  気に入らない。

  気に入らない。

  大っきらい。




  いつものようにお母さんと

  あいつのダンスがはじまったとき、

  ぼくのお気に入りのクマさんの靴下が

  かたっぽなくなったんだ。

  お母さんに聞いたけど知らん顔。

  あいつがブーブーうるさいから

  お母さんは知らん顔


  ぼくはおこって、おもちゃの車を

  あいつに思いっきりぶつけた。

  「ゴンッ」と大きな音がした。

  するとブー、プス、プス……プスプスプス

  「あら、こわれちゃったかな」

  お母さんはあいつの長い鼻をカチャカチャ。

  「あっくん。おもちゃなんかなげちゃだめでしょ」

  あいつはなにも言わなくなった。

  ぼくはこわくて大声で泣き出した。

  「ごめんなさい。ごめんなさい」

  「もう、泣かないの。大丈夫よ。電気屋さんに見てもらうから」

  ぼくはあいつにかけよりツルツルの丸っこい体をナデナデした。

  「ごめんね。ごめんね。いじわるしてごめんね」

  

  電気屋さんが来てくれた。

  いつもお世話になっているおじさんだ。

  おじさんはあいつの長い鼻を引っこぬいた。

  そしてガサゴソ。

  長い鼻もガサゴソ 

  なにかでてきた。 

  「これ、ぼくの靴下だよね?」

  クマさん靴下

  おじさんはあいつの鼻から取り出した。

 「あら、いやだ。気がつかなかったわ」

  お母さんは真っ赤になってそう言った。

  おじさんがあいつの鼻をカチャカチャ。

  ブーブーブー。

  元気な音を出した。

  あいつが元気になった。 

  ごめんね。

  ごめんね。 

  もう、大きらいだなんて言わないよ。




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