第3章-第1話・第2話
おじさんの家は・・・。
「暗っ!!」
小さい頃に見ていた家の記憶が塗り替えられていく。
薄暗い廊下に、明かりがわりのロウソク。
まるでホラーハウスだ・・・。
「そういえば、どこに行けばいいんだろ・・・。」
狭い廊下の中で、俺の声が反響した。
ふと、脳裏に老人の手が見える。
その手がゆっくりと俺を呼んだ、そのときのことだった。
勝手に動き出す手足・・・。
「なっなんだよ!うわっやっやめろって!!」
必死に自分の力で止めようとしたが、いっこうに止まる気配は無かった。
俺は諦めて手足が行きたいままにさせた。
廊下を行ききり、階段をのぼる。
2階へ、3階へ。
階段をのぼりきると、大きな扉の前に出た。
そこへきて、やっと手足が止まった。
記憶があってるなら、ここは食堂のはず。
扉にとりつけてある金色のノブに手を伸ばす。
―キィィイイ―
不気味な音を立てながら、ゆっくりと開く扉。
中から溢れ出てくる光。
そこには廊下とはうってかわった光景が広がっていた・・・。
天井から吊るされた、豪華なシャンデリア。
長く白いテーブルに並べられた、美味しそうな食事たち。
同じように並べられているグラスはシャンデリアの光を反射して、さらに輝きを増していた。
「よく来たな・・・。」
テーブルの一番奥に座っていた老人が、ふいに口を開いた。
姿かたちは老人でも、その声は昔聞いたことのあるおじさんの声だった。
「お久しぶりです。」
俺は部屋の奥へと一礼した。
「まぁそんなに硬くならずに・・・。ほれ、イスにでも座れ。」
その声と同時に、また頭の中で老人が手招きした。
再び勝手に動き出す手足。
一瞬だけは体を強張らせたが、次の瞬間にはもう好きなようにさせた。
白く長いテーブルの横を、どんどん奥へと進んでいく。
ちょうど前から3番目のローソクたてを過ぎたときだった。
目の前にあったイスが自動的に後ろへさがり、そして俺はそれに座らされる。
そこでやっと手足の自由が、完全に戻ったことがわかった。
目の前のグラスにジュースが注がれていく。
注がれていくというより、0(ゼロ)の状態からグラスを満たしていった。
それにはもう、驚くことはなかった。
「さぁ、食事でもしながら話をしようか。」
老人の声とともに、居なかったはずのメイドや執事が現れた。
一斉に席につき食事を始める。
いつの間にか空腹になっていた俺も、思い切って皿に手を伸ばした。
『・・・め・・・。食べちゃ・・・だめ・・・。』
少女の声が脳裏に響いた。
俺はその声に従うように、スッと皿を元の位置へと戻す。
そんな俺をしりめに、皿の中の食事はどんどんなくなっていく。
そして、ソレが起こった・・・。