第2章-第3話・第4話
次に目が覚めた時にも、暗闇だった。
「また夢?・・・っ!!」
肩の痛みで、現実にいることがわかった。
暗いのは、どうも目隠しのせいらしかった。
幸い手の自由はきく状態だったので、素早く目隠しをとった。
どうやらココは、大型車の最後部座席みたいだ・・・。
車は、今は動いていない。
赤信号?いや、もしかしたら目的地についだのだろうか・・・。
とりあえず俺は、情報を求めて静かに体を起こした。
車の窓からは住宅街が見えた。
それは、俺の記憶にはない町だった。
重たいエンジンの音が聞こえてくる。
どうやらココはまだ、目的地ではないらしい。
それなら、目的地に着いたら俺はどうなる?
答えはきっとこうだ。
『殺される・・・。そうならないうちに、逃げて・・・。』
俺の脳裏に、またあの少女の声がした。
俺はその声に静かにうなづいた。
色々考えている時間なんてない。
とにかく脱出方法を探すために、運転席へと目を移した。
「・・・うそ・・・だろ?」
俺は、その運転手をよく知っていた。
あの髪型も、あの広い背中も・・・。
全てにおいて、俺はこの人を知っていた。
「父さん・・・。」
おもわず声のボリュームが大きくなってしまった。
車がゆっくりと止まっていく。
たぶん完全に車が止まれば、俺は殺されるだろう。
不安と恐怖が迫ってくる。
けれど、車が完全に止まったのにもかかわらず、白コートがあらわれる気配すらなかった。
「やっと起きたか。」
それは間違いなく父さんの声だった。
「父さん?ホントに父さん?」
父さんらしき人は振り返ることなく、静かにうなずいた。
「でも、父さんは・・・さっき・・・。」
父さんの死を認めるようで、それ以上は言葉にできなかった。
「さっきのは、父さんじゃない。あの時死んだのは、白コートの仲間だ。」
「でも、白コート達は・・・。俺が全部殺してしまった・・・。けど、父さんはその中にいなかった。」
「父さんは、ずっとお前のそばにいた。」
「でも!確かに父さんは、目の前でうたれた・・・。」
少しの間、沈黙が流れた。
静かに空気が冷えていく中で、先に沈黙をやぶったのは父さんだった。
「お前には、いつか話さないといけなかった・・・。けれど、幼いお前に現実を押しつけることはできなかった。」
「幼い俺?」
今の俺でなく、何で幼い俺が・・・。
「ッ!!」
俺は、あの夢を思い出した。
「やっぱりあの子供は、俺自身だったのか・・・。」
ポツリとつぶやいた俺に、父さんは悲しい声で答えた。
「夢まで見たか・・・。やっぱりお前が・・・。」
「何?何なんだよ!教えてくれよ!!」
俺の勢いとは逆に、父さんは静かに首を横に振った。
「父さんからは、言うことができない。ただ一つ言える事は・・・。お前自身はもう二度と、普通の生活には戻れない。ただそれだけだ・・・。」