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不思議少女と根暗少年

作者: 白子


 小学校ではおとなしい方だった。

 中学校では地味なグループに入った。

 どんどん先を行く周りに置いていかれるようで、焦って、恐れて。

 これではいけないと、変わろうとした。

 

 今までの自分は暗くて、卑屈で、馬鹿だったけど。

 これからの自分は明るくて、親しみやすくて、お調子者。


 高校生になって、「変わったね」と言われた。

 男子からも女子からも、少しずつ声をかけられるようになった。

 そんなだから、自分も変わった気でいた。

 自分は変われたと、信じていた。


 


 でも。

 何が変わったのだろう。

――日頃から笑うようになった? 

 貼り付けた笑みじゃ、変わったとはいえない。

 いつも同じ笑顔。いつも同じ。変わらない。変わってない。

 

 結局自分は、何一つ変わってやしなかった。



 変われもしない愚鈍な自分などいらない。

 不必要だ。

 だから


 自分で自分を

 

 ころした。












 こんにちは、はじめまして。

 市立如月高校二年一組出席番号十二番、柏木ひなたです。

 私、柏木は、皆から「不思議ちゃん」と呼ばれはしますが、成績は中の中、見た目も普通と、まあどこにでもいる女子高生と言えましょう。

 花の女子高生です。

 そして――クラスの皆にも家族にも、勿論愛犬のりーくんにだって言っていませんが――私は今、女子高生の本業とも言える青春、しかも高校入学時から一年間の一途な《恋》をしています。恋愛ではありません、《恋》です。(ここ、重要なのでメモしておいてくださいね。)

 本当ならばここで恒例の《がーるずとーく》もとい《恋ばな》が始まるのでしょうが、私の場合そうもいきません。残念ですが、非常に残念ですが、この《恋》は絶対に絶対に、たとえ私が今ここで死んでしまっても言えない、とっても《ぷらいべーと》な話なのです。

 そしてそして――これはもっと秘密なのですが――この《恋》が叶うかどうかを、私はとある《げーむ》で賭けることにしました。これで私が負ければ、私は一年分の《恋》を無駄だったと認めなければなりません。そんなことしてる暇があったら、もっと友達と遊べばよかった、と。

 そんなのは嫌です。《彼》は私が負けるのを望んでいるのでしょうが、私はそんな《彼》を打ち負かしてやらなければなりません。これは私にとって、義務で、責務で、債務なのです。私は絶対に、賭けに勝って《彼》に言わなければならないのです。

 

 しかし。

 しかしですよ。

 《彼》が決めた《るーる》では、私が勝てないようになっているのです。

 卑怯ですよね。《彼》らしいといえば、そうなのですけど。

 そして私は思いました。《るーる》とは破るもの。打破するべき困難の壁だと。


 


 私は高校二年生になった今、これより、賭けを始めます。

 《彼》が決めた《るーる》には、あえて従いません。《彼》は今ではもう覚えていないようですから、「違反だ」などと言われる心配はありませんね。

 賭けの内容はいたって簡単。

 

”三年生になるまでに《彼》が全てを思い出し、図書室に来ること”


 《るーる》では、強制して図書室にいかせないこと、などありましたが、完全無視でいきます。だって少しでも強引にいかなければ、《彼》が一年間なんて短い期間で全てを思い出すことなんてできやしないのですから。無理です。《彼》の鈍感はすさまじいのです。

 私はどんな卑怯な手を使ってでも賭けに勝ち、賭けを終了させなければなりません。



”根暗で卑怯で皮肉めいて、でも実は天然な君が大好き”


 ただこのひとことを言うために。

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