第四章 (1) 失踪→旅立ち
昨日の雨のせいでぬかるんだ地…
「ユウ!緊急事態や!」
天気の描写すらさせてくれなかった。
入ってきた凛の方を見ると、輝、実夏、……あれ?仁がいない。
「仁が出ていってしもた!」
なん…だと…!?
で、でも!出ていく理由に心当たりなんて俺には無…
「これで3回目や」
コイツらにはありそうだ。
「何で仁が出ていったかわからないんだが…」
凛は目を背け、深刻そうに言った。
「……地味やねん」
「は?」
「絵なんていう滅多に使わん特技やから、目立てへんねん!」
「それだけで!?それに仁が目立たないなんて、そんな…」
「確かに。新入りの私よりキャラ薄いです。」
…ゴメン、仁。否定する言葉が思い付かないよ。
「というわけで、今日の活動は仁の捜索及び励ましや!テル、今日の設定は『探偵』な」
「コクコクッ」
力強く頷く姿はとても可愛かった。
10分後…
「私は高校生探偵・黄田輝。幼なじみのも(ry」
変な人が出てきた。いや元々変だが…
設定、『○ナン君』の間違いでは?
「ウチは、なにわの高校生探偵・難波凛。テルの戦友や!」
…黙れ江戸っ子。
「そして私は尾西博士だ!」
くそっ、俺一人じゃ捌ききれねぇ!
「「「仁よ。私達からは逃げられないぜ!」」」
ここまで俺がまともに見える状況も珍しい。敢えて思いっきりスルーして訪ねる。
「で、どうやって探すんだ?」
「手分けして適当に探せ!どうせその辺におる筈や!」
「仁の扱い酷すぎるだろ!」
仁が出て行くのもわかる気がする。
…それから地道な捜索を進めるが見つかる訳もなく、いつの間にか日が暮れて、全員テントに戻って来ていた。
「畜生!仁の奴、どこにおんねん!前はすぐ見つかったのに…」
ふざけていても、何だかんだ仲間思いの凛は本気で心配している。
「この前みたいに、その辺に転がっとったら即回収できるんやけど…」
仲間思い…なんだよな?
「もしかしたら、地味とは別の理由なのかも。」
……!?素の輝が珍しくはっきり喋った!
「だったら何で…」
凛が言いかけたところで、
「ただいまー…」
なんと、探しても見つからなかった仁が帰って来た!
「仁!心配したんやで!どこ行って…」
「ゴメン。大事な…用が、あったから。」
歯切れが悪い。どうしたのだろう?
「「「「大事な用?」」」」
「実は………夢が叶った。」
「「「「……っ」」」」
唐突にそう告げられ、皆言葉を失う。
「実は、電○イラスト大賞に絵を送ってたんだ。そしたら受賞して、新人作家が気に入ってくれて…」
「でも、まだここで一緒に…」
「無理なんだ。その人の職場なんだけど、かなり遠くて…ここからじゃ通えない。」
「そんな…」「グスッ」
凛と輝は今にも泣きそうだ。
「「発売したら教えろ。金稼いででも買ってやる。」」
実夏とハモったが気にしない。
「ありがとう遊、実夏。名残惜しくなる前に行くね。皆、元気で…」
「ちょっと待て、仁。1つだけ答えて行き。」
凜が震えた声で仁を呼び止める。
「…………」
「兄貴は、見つかったんか?」
「……うん。」
「……ならよし。言うことはあらへん。」
「今までありがとう、凛。世話になった。じぁあね…」
そう言い残して行ってしまった。
その背中は俺には眩しすぎて…ただ、呆然と見送ることしか出来なかった。
というわけで第四章です!
仁君が行ってしまいました。これをきっかけに、皆自分の過去と向かい合っていきます。
次回、お楽しみに〜!!




