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幼馴染のきみと  作者: サワベリカ
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第二話 素直になれない

数年後。 かつて桜の下で指切りを交わした二人は、今、同じ中学校の制服に身を包んでいます。


「はぁ……。授業、やっと終わった……」


日和ひよりは誰もいない放課後の廊下で、小さくため息をつきました。 少しだけ背が伸び、幼かった顔立ちには少女らしい繊細さが加わっています。 けれど、その心は成長するにつれて、ますます複雑に絡まっていました。


「ひよちゃん、お疲れ。また難しい顔してる」


隣から声をかけてきたのは、小学校からの付き合いである親友の月菜るなです。 彼女は日和の性格を誰よりも理解している、唯一の理解者でした。


「別に、普通だよ。……それより、月菜こそ部活は?」


「今日は休み。それよりいいの? あっち、大変なことになってるよ」


月菜が指差す先、昇降口の近くには、一際目を引く端正な顔立ちの少年――遙斗はるとがいました。 彼の周りには、他愛もない会話を求めて女子生徒たちが集まっています。


(……あんなの、見たくない)


日和は胸の奥がチクリと痛むのを感じて、わざと視線をそらしました。 その時でした。


「あ、日和! 待ってよ!」


人だかりをすり抜けて、遙斗がこちらへ駆け寄ってきました。 昔と変わらない、太陽のような笑顔。 けれど、声は少し低くなり、見上げるほど高くなったその身長が、日和をさらに焦らせます。


「日和、今日も一段とかわいいな。新しいリボン、似合ってるよ」


その瞬間、日和の心臓は跳ね上がりました。 嬉しいはずなのに。抱きしめたいくらい、その言葉が欲しかったはずなのに。


「……うるさい。何回言えば気が済むのよ、バカ遙斗」


口から出たのは、可愛げのない言葉でした。 遙斗は一瞬だけ驚いたような顔をしましたが、すぐにいつものように苦笑いしました。


「ひどいな。本当のこと言っただけなのに」


「しつこいのは嫌われるよ。……私、月菜と帰るから。じゃあね」


日和は遙斗の顔を見ることができず、逃げるように背を向けました。 その耳が、夕日に照らされているせいか、それとも熱を帯びているせいか、真っ赤に染まっていることに、遙斗は気づいているのでしょうか。


「ひよちゃん、またツンツンしちゃって。ほんとはめっちゃうれしいのに」


隣で月菜が呆れたようにささやきます。


「……無理。あんなの、ずるすぎるもん」


日和は心の中で叫びました。


(どうして、遙斗は昔のままなの?)

(どうして、私だけがこんなに苦しいの?)


あの日、桜の下で交わした「結婚の約束」。 それを今でも宝物のように握りしめているのは、自分だけかもしれない。 そんな不安が、素直になりたい心を、冷たく縛り付けてしまうのでした。

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