カチカク!
ねえ、人生って、いったいどんなふうになれば、『勝ち』って言えるんだろう?
顔が良ければ勝ち?
頭が良ければ勝ち?
運動ができたら勝ち?
お金がたくさんあったら勝ち?
それとも、地位とか、名声とか、権力があれば勝ちなのかな。
きっと、どれも正解なのかもしれないけど、どれも違う。
わたしは、今日、このときを迎えて、心からそう思うんだよね。
「本当に綺麗だよ、リーゼ」
「十七年、本当にありがとうございました」
涙ぐむお父様に、わたしはこの世界に生まれ落ちてから今日までの全ての感謝を込めて、深々と頭を下げた。
あの戦争から十年が経った。
わたしは十七歳になり、今日、フレイミア帝国の公爵を叙爵する。
帝国の再興への貢献に対して、かつての第八皇子であり、現皇帝のフェルナンド=フレイミア陛下が謝意を示してくれたものだ。
そして、それと同時に、シーラン王国建国以来、王国を支え続けてきた西方辺境領はその長い歴史に幕を閉じる。
フレイミア帝国の公爵とシーラン王国の公爵。二人の公爵が治める国――リシュテンガルド公国として独立するのだ。
ここに至るまではいろんな騒動もあったし、苦労もたくさんあった。
本当はゆっくり思い出話をしたいところなんだけど、今はわたしのことを待ってくれている人がいるから、それはまた今度ね。
「そろそろ行こうか」
「はい」
純白のドレスに身を包んだわたしは、お父様の腕にそっと手を添えた。
教会の扉を開くと、たくさんの笑顔がわたしを迎えてくれた。
お母様が大きな瞳にたっぷりと涙を浮かべて微笑んでいる。
ナーシャにフレッド、フローラや、デイヴ。イヴァンとイレーネの夫妻もいる。
ヴァイオレット叔母様とアルベルト義叔父様の間ではおチビちゃんが可愛らしく拍手してくれていた。
もちろん、メイとシーツ爺も。二人は滂沱の涙を流しながらハンカチの取り合いをしている。
遠くでは、蒸気機関車が祝福の汽笛を鳴らしてくれていた。
ああ、幸せだな。
わたしはたくさんの人に愛されている。
それはもう『勝ち』って言ってもいいのかもしれない。
でもね、それがすべてなんかじゃない。
誰にも愛されないっていうのは寂しいことではあるけど、だからって負けじゃない。勝っていないわけじゃない。
前世のわたしは、確かに愛してくれる人は少なかったけど、決して寂しい人生じゃなかった。むしろ勝ってさえいたんだ。
今振り返ってみて、ようやくそのことに気づいたんだよ。
長い長いヴァージンロードをお父様に連れ添われながらしずしずと歩く。
わたしはお父様が好き。お母様が好き。ここにいるみんなのことが大好きだ。
そして、向かう先には、元の世界とこの世界、その全部の中でわたしが一番大好きな、シーラン王国の公爵閣下。
彼は子どものときから変わらない優しい笑顔でわたしのことを待ってくれている。
たぶんね、今のこの気持ちこそが勝ちってことなんだと、わたしは思うんだよね。
大好きな人がたくさんいる。
大切にしたいものがたくさんある。
その中でも一番大好きで、一番大切なもの、自分の愛の全部を注ぐことができる何か。
人生の中でそういうものを見つけられたとしたら――
それはもうカチカクです!
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