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少女は考えていた。あの日、初めて山を下りてからのこと。いま言われた言葉の意味を。
少女が騎士を助けたのは、彼らが騎士だったから。
騎士は国を守る為に戦う。それは魔女も同じ。だから騎士がそう望むならそれは国を守ることなのだと思った。
ー我らは黒。陰から国を支える者じゃ
師匠はからはそう教わっていた。しかし少女が村に戻ったときにはすでに、彼女以外に魔女はいなかった。
どうするべきか少女には分からなかった。
(きしさまがのぞむなら、きっとそれが正しいみち)
そう思った少女はセントレアの城壁を越える手伝いもしたし、探索者の資格もとった。
しかし本当にこれが正しいのか、少女は分からなくなってきていた。
(あの人たちはなぜロアの命をだいじにする。きしさまはくにをまもる。まじょもそう。……わからない)
魔女の力は陰の力。人前では使ってはいけないし、任務中は魔女以外と会話をしてはいけないと教わっていた。彼女は忠実に教えを守っていたのだ。
(つよいしーかーはみんなすごい力をもっている)
ツェザールから話を聞いたとき、武器を持ってみようと少女思った。探索者として行動する必要があるなら、人前で使える力も必要だと思ったのだ。
(じぶんの命をゆうせん……なんのために?)
結局答えは見つからなかった。でもいまはこの人たちが望むままに力をつけ、強い探索者になる。少女はそれしか思いつかなかった。
「じゃあロアを宜しくお願いします」
「ロアが怪我などしないように。それだけはお願いします」
アルとクロスは日雇いの仕事に出掛ける。
「おう!今日は俺がツェザールを見張っとくから安心しとけ」
ロアは支部長の隣に立ち2人を見送る。
「さあさあ!ロア様!下にいきましょう!武器の扱いに慣れる練習を」
ゴツン。とツェザールに拳が落ちる。
「お前は本当に懲りないな。アイツらに怒られるぞ」
「おやおや支部長、ロア様はやる気のようですが?」
いつの間にかロアは武器を手に取り、鎖を引きずりながら地下へと向かっている。
「ツェザール、これは命令だ。アイツが怪我をしそうな時は迷わず止めろ。それから念のため回復薬を持っていけ」
「はいはい支部長。仰せのままに」
ツェザールはそういうと、急ぎ足でロアの後ろを追う。
「修行っすか?強いんだからいらねえと思うっすけどね」
じゃらじゃらと音を立てながら降りてきたロアをみて、ヘルマンが声をかける。
「ヘルマンいいですか?ロア様の邪魔をしないよう離れていてください」
ツェザールはヘルマンにロアから離れるよう促し、瞳を大きく開きロアの様子を観察している。
(はあ!ロア様!使い方を考えているのですね!楽しみです!)
ロアの表情はいつも通りだが、武器をじっと見つめている。
しばらくして、左手で握っていた剣の柄を両手で握り直し、少しだけ後ろに振りかぶった後、投げるように剣を放った。
「ほお!」
しかしスピードもなく、2メートル程先に音を立てて落ちる。
彼女は鎖を両手で持ち、剣をこちらに引き戻そうとしてやめる。
(どうやらまた考えているようですね!)
しばらくしてから歩き出し、剣を拾うとツェザールの前に立った。
「おやおやロア様。いかがされましたか? 良い案が思い浮かびませんか? ではでは!探索者の使う武器の特性でもお話ししましょう!」
炎を纏う剣、水龍に化ける鞭、空を翔けるブーツなど熱心に語り始める。
「おい、ツェザール。何をしている?」
昼過ぎになり支部長がロアの様子を見に来た。
「おやおや支部長。いまはロア様に、名だたる探索者の武器や装備の特性をお話ししていたところです」
「なぜそんなことをする必要がある?」
「それはロア様の武器の参考になるかと」
「支部長!子供にあの武器は向いてないんじゃないっすか?鎖に振り回されちまいますよ」
デニクがロアを見る。
「なんだロア、扱いが上手くいってないのか?」
「…」
「そう、落ち込むな。1日で扱えるようになる奴なんていないぞ。お前だってこれまでたくさん修行をしてきたんじゃないのか?めげずに励むことだな!…それよりツェザールちょっといいか?」
デニクとツェザールは少し離れた場所で会話を始める。
「公都が落ちた。その影響でここにも人がなだれ込んでいる」
「おやおやおや、始まりましたか。ただの庶民だけなら良いですが」
「そういう訳にはいかんだろ。貴族のなかには領地に逃げた奴らもいるが、問題は力ある貴族たちだ。ここを拠点に立て直すという噂だな」
「なんと!貴族は相も変わらずなんて愚かなのでしょう!あの者たちは、東の魔女の怒りを買ったのですから、こうなることは目に見えていたというのに!」
「まあそうだな。肝心のエアハルト公は行方不明ということになっているが、おそらく殺されただろうな。それでだが、立て直すのに逃げた魔女を探しているらしい」
「おやおや、それはそれは。魔女を探している…それは私たちには無縁の話ですね。ここには探索者しかおりません。でもまあ警戒だけはしておくとしましょう。私の大切な探索者に何かあっては大変ですから」
「そうしてくれ。そのうちここにも騎士がくるだろう。じゃ頼んだぞ」
そういってデニクは上の階に戻っていった。
「なんすっか?戦争っすか?お偉いさん方はホント戦争が好きっすね〜。特に今の君主になってからはひどいというか。南地方もこないだ潰したばかりじゃないっすか」
「国が何をしようと私たちには関係者ありません。探索者とは!何にも縛られない孤高の戦士なのです!」
「相変わらず好きっすねツェザールさんは。探索者マニアっすからね。俺も早く名だたる探索者の一員になりたいっす」
ロアはそんな2人の会話を無視し、剣の柄を握りしめ横に振ったり、突いてみたりと、使い方を必死に考えていた。
「遅くなった」
日雇いの仕事から帰るとセントレアの様子が一変していた。クロスと詳細を調べていたので支部に戻るのが遅くなってしまった。
「おう、そうだろうと思っていた。アイツはもう部屋で寝てるはずだ。あの新しい武器をいろいろ試していたようだが、振り回されてたぞ」
「そうか。まあしばらく様子をみるさ」
「それより、私たちは明日にはここを発つことにしました。すでに準備も整えてあります」
「まあ待て。お前たちは南地方に行くつもりだろ?ついでに探索者の仕事をして欲しいと思っている。金にもなるしついでだ。いいだろ?」
「聞きましょう」
デニクの説明によると、南地方のある村が混沌化してしまったそうだ。混沌化する原因ははっきりとは分かっていないが、生き物たちの怨念が集まり現世に影響を与えたものだと言われている。
南地方は多くの村や町が壊滅状態のまま手つかずに放置されている。それもこれもあの暗君が南地方再生計画という馬鹿げた建前のもと、暴虐を繰り返したせいだ。エアハルト公の意向に背いた領地から人々は追い出され行く当てもなく彷徨い、多くの命が犠牲になった。
「依頼は混沌領域の調査だ。ついでに周辺の混沌化した魔物の数も減らして来てくれ。核を壊すかどうかは調査の後だから気をつけてほしい」
核というのは、混沌化を引き起こしている塊の物体のことだ。核の性質によって混沌領域の性質も変わる。防呪素材がとれる魔物を生む混沌領域や、傷を癒す混沌領域なんてものもある。
「どうする、クロス」
「そうですね。調査結果はどのように伝えれば?私たちがここに戻ることは難しいですよ」
「それはどっかの立ち寄った町で仕事斡旋所に報告してくれればいい。あそこは各探索者への連絡場所にもなっている」
「報酬はどのくらいですか?」
「それは調査結果次第だな。規模や危険度によって変わる。そうだな、少なくとも大銀貨1枚〜5枚にはなるはずだ。ただ、お前たちの探索者としての初仕事だから案内役として1人探索者を呼んである。報酬はそいつと山分けしてくれ」
大銀貨5枚もあれば1ヶ月は暮らせる。
「やろう」
「…分かりました。それで案内役の探索者はいつ来るのですか?」
「明日には着くはずだ」
「ではここで待機してその探索者が到着次第すぐに出発します」
話し合いは終わり、部屋に戻る。山を降りてからまだ2週間も経っていないというのに、どんどん状況が変わっていく。
「どれもこれもあいつの為か。まったく魔女ってのは大変だな」
隣の部屋で寝ているロアのほうへ意識を向ける。
「…気配がしない?」
あいつはもともと気配が薄いが、さすがに隣の部屋にいれば気配は探れるはずだ。
「おい、開けるぞ!」
ロアの寝ているはずの部屋のドアを開ける。
「やはりいないな…」
部屋が荒らされた形跡はない。窓も開いていないところを見ると攫われたとは考えにくそうだ。
「どうしたのですか?……聞くまでもありませんか」
「どう思う?」
「攫われたわけではなさそうですね」
「下で修行でもしてるのか?」
「その可能性もあります。武器が扱えず落ち込んでいたそうですから」
地下の遺跡に行ってみたがやはりロアの姿は見えない。念の為、遺跡の中も確認したが見当たらなかった。
「どうした?」
上に戻ると、デニクとツェザールが起きてきていた。
「ロアがいない」
「何ッ?」
「おやおやおや!ロア様は夜の散歩にでも?」
「今までいなかっことはあるのか?」
「そう言われると自信がない。あいつは気配が薄すぎて、俺が寝ている間に部屋からいなくなっていたとしても気が付かないかもしれない」
「それならツェザールの言うように本当に夜の散歩か?」
「とりあえず私たちは街へ探しにいきます。万が一、国の騎士に捕まっていれば彼らの行動に変化があるはずです」
「じゃ、俺たちはここで待機だな」
「おやおや、皆様大変ですね。私は寝させていただきます。きっと何の問題もありませんよ」
ロアは今日も考えていた。地下で聞いたデニクとツェザールの会話はロアにも聞こえていた。
(おねえさまがみやこをおとした。ロアとおねえさまがたたかう?それはだめ。おねえさまはいつも正しい)
ー1人前の魔女は自分で任務を決める
ロアは師匠からそう教えられていた。国の為になる殺しなのかどうか、自分で考えて決断した殺しだけを遂行する。南の領主の暗殺も、隣国の要人暗殺も、国ためにならないと魔女一族は任務を断っていた。
(じぶんでかんがえる…)
ロアは自分が東の魔女と戦うべきなのか、考えなければいけないと思った。
(まちにいこう)
少女は闇に紛れながら、公都から来た人たちを観察する。
(人がたくさんいる。みんなかなしいかお)
セントレアの城門の付近には公都からやってきたであろう人たちが野宿をしていた。城門の内にも外にも人で溢れている。
公都から逃げてきたものの、家も仕事も失った状態では生き延びることさえ難しい。
「こんばんは。みやこからきた人?」
「なんだいこんな夜に。寝れないのかい?」
「はなしきかせて」
「そうかい。お嬢ちゃんも公都からきたのかい?」
「みやこのちかく」
「そうかい。この街は公都の次に大きな町さ。きっと良い仕事が見つかる」
逃げてきた領民は自分に言い聞かせるように言う。
「しごとない?」
「そうだね。仕事も家も失ってしまったよ。家族はいるが、よかったのか悪かったのか分からないね」
少女は次々に質問をしていく。
(みんなやっぱりかなしい。おねえさまはまちがえた?)
「こんなとこで何してる?親はどこだ?」
少女が歩き回っているのをみて領民が声をかける。
「はなしきいてる。おやはいない」
「お前だけ逃げてきたのか…。何の話を聞いてるんだ?」
「みやこがこわされてかなしいか」
「そんなのほとんどの奴らは悲しいだろな。まあ俺みたいな南から移動してきた奴らは今の君主には恨みがあるから、喜んでるかもな」
「よろこんでる?」
「ああ、少なくとも俺は嬉しい。このままエアハルト公が行方不明になっててくれりゃ、アルフレート様に統治権がうつるからな」
アルフレートとは前君主の弟だ。今は病気で公都から離れた領地で療養中である。
「あるふれーとさまだとうれしい?」
「そりゃそうさ。アルフレート様は間違いなく明君だ。その息子であるアーデルベルト様もな」
「そっか」
少女は考える。
(おねえさまはみなみのようなばしょがふえないように、エアハルトさまをころした?)
そしてようやく答えをだす。
(おねえさまとたたかわない。くにため。2人についてくのが正しい)
少女は気配を消しながら街を歩く。すでに辺りは少し明るい。
「おや?こないだの小さなお嬢さんじゃないかい?」
旅用の服を買った店にロアは来ていた。
「これつけて」
ロアは探究者ライセンスを店主に渡す。
「珍しいものを持ってるね。お前さんのかい?」
「そう」
「そうかい。どこにつけるんだい?」
店主は渡された探究者ライセンスは、偽物だろうと思った。子供たちはよく探究者に憧れてこういったもの作るからだ。
「ここ」
ロアは自分の左胸あたりを指差す。
「じゃあ一度これに着替えてもらおうかね」
店主は少女の要望どおり、先日ここで買った白いワンピースに探究者ライセンスを差し込めるよう革の素材で装飾をつけていく。
「できたよ。どうだい?こうやってここから差し込むんだ」
出来上がった服に着替え直し、早速探究者ライセンスを差し込み、左胸に輝くライセンスをじっと見ている。
「のこりのふくにもつけて」
「ん?こないだ買ったやつかい?持ってるのかい?」
「いまからもってくる」
そういうとさっさと店から出て行く。
ロアは店から出るとローブを被り、すぐに気配を消す。
「待て」
肩に手をかけられロアは歩みを止められる。
振り返るとロアの3倍はある大男が立っていた。
「お前1人か?」
「…」
「探索者だろ?ライセンスが見えた。俺も今から支部に行く。俺と一緒に来い」
大男はロアを持ち上げると右肩に乗せ、支部へと歩き始める。
「こういう街で気配を完全に消したら不自然だ。いいか、溶け込むように消すんだ」
魔女は夜の闇に紛れて仕事をすることが多く、気配を消すことが普通だった。
「わかった」
「なんだお前たち」
「それはこっちのセリフだ。ロアをつれてどこへ行く」
俺とクリスはロアの足取りを追っていた。宮殿の騎士をしばらく探っていたが、魔女を捕まえたという情報はなく、街中を探し始めたところでこの大男を見つけた。
「お前たちこの子供の保護者か。子供を1人で街を歩かせるな」
「そんなことは分かっている」
「そうか。ならいい」
大男はロアを肩から下ろす。
「ロア、どこに行っていた?1人で出かけたらダメだ」
「…」
「こいつは服屋から出てきた」
「服屋だと?ロア何か欲しかったのか?」
「…」
「ん?これは探索者ライセンス。どうしてこんなものを?」
ロアのローブの隙間からライセンスが少し見えている。
「こいつは探索者じゃないのか?」
大男が聞いてくる。
「…いや、探索者だ」
「ならおかしくはないだろう。お前たちも探索者か?なら今度の仕事仲間はお前たちか?」
「貴方も探索者なのですね」
大男は胸元からライセンスを取り出し提示する。
「探索者のヴィムだ」
「そうか。俺はアル、こっちはクロス。ロアを見つけてくれて助かった」
「そうですね。貴方に見つけてもらえてよかった」
「誤解が解けたようだな。共に支部に向かおう」
なぜかロアはまたヴィムの肩に乗せてもらい、一緒に支部へと帰った。
「おやおやおや、やはり無事でしたか。それにヴィム様もご一緒とは」
「ツェザール、子供から目を離すな。デニクもだ。子供にこの街は危ない」
「それは申し訳ありません。ですがロア様はこっそりと抜け出すもので。それを見つけるのは私には困難なのです」
「ロアは強いのか?」
「そうですね。一般的な基準でみれば強いですが、探索者の中では普通といったところでしょうか。ですが探索者というのは強さだけではなく…」
「ツェザールその話はいい。ヴィム、よく来てくれた。それにこいつらとももう会っているのなら話は早い。こいつらはこないだライセンスを取ったばかりでな。混沌領域についていろいろ教えてやってくれ」
「わかっている。場所はどこだ?」
「南だ。今から説明する」
「ロア、お前も聞くんだ」
ヴィムがロアをこちらに呼ぶ。服につけたライセンスのことで、ロアはツェザールに絡まれていた。
「おやおやおや、ですがロア様は今から服屋に戻るそうですよ」
いつの間にかロアはこないだ買った服を全て腕に抱えている。
「ロア、それに全部につけるつもりか?」
「素晴らしい考えです!ロア様!これなら誰がどう見てもロア様は探索者!」
「だからロアは探索者じゃないのか?」
ヴィムのつっこみが入る。
「いえいえいえ、ヴィム様。ロア様は立派な探索者でございます」
「ロア、探索者は情報を大事にするべきだ。服屋へはこれを聞いてからまた行けばいい」
それを聞くとロアは服をツェザールに預けすぐにこちらへやってきた。
「ヴィムさん、勝手に決められては困ります」
「ヴィムでいい。服屋に寄っても寄らなくてもそう変わらない。騎士たちがこの子供を探してるのは知ってる。それを知っててロアは服屋に行った。それにツェザールの探索者を見極める力は信用できる」
探索者ライセンスを掲げていれば魔女だとバレないとでも本気で思っているのか?探索者だとなれば逆に目立ってしまう。
「アル、私たちは彼女の意思を無視していたかもしれません。彼女には彼女なりの考えがあるでしょう。私たちは彼女を守ると決めましたが、それは彼女の自由を奪うことではないはずです」
俺たちがロアを守り、逃すというのは確かにこちらの勝手な行動だ。ロアからお願いされているわけではない。
「そうだな。すまなかったロア。服屋へ寄ってから旅立とう」
デニクから混沌領域があるであろう場所の情報を聞く。最近その辺りでは混沌化した魔物が多数出現しているらしい。
「混沌領域の範囲もまだ小さいだろうから初仕事にはちょうどいいはずだ。ヴィムもいるし危険は少ないはずだが、何があるかわからないのが混沌だ。気をつけて行け」
核は時間と共に成長し、混沌領域は広がっていく。
「分かった、行ってくる」
準備していた物資を持ち、支部を後にする。
ロアはまたヴィムの肩に乗せてもらっている。
「来たかい待っていたよ。服を預かろうかね。作っておいたからすぐに出来るさ」
店主は服につける革のホルダーを用意しておいてくれたようだ。
「すまないな」
店主は店の奥に行きしばらくして戻ってきた。
「お嬢さん、ほらこれでいいかい」
ロアが服をじっと見つめる。
「おかね」
「「!?」」
驚いてクロスと目を合わせる。ロアが喋った?
「そうだね、これだけもらおうか。また来ておくれ」
店主はロアの財布からお金を受け取る。
「おいクロス、ロアのやついま喋らなかったか?」
「私もそのように聞こえましたね」
ロアはお金を支払うと店を出て、外に待っていたヴィムの肩の上でいつもの表情をしている。
「話せないわけではないのでしょう。私たちは彼女の一族を殺しています。そのことを忘れてはいけません」
「そうだな」
俺たちはロアに救われたが、俺たちが一族を殺したことは変わらないのだ。
「お前たち、もうこの街には用はないのか?」
「ああ大丈夫だ」
「じゃあ南に向かおう」
夜にこっそりと飛び越えた城壁を正面から堂々と通り、南に向かう。門にも騎士が数名いたが、まさか探している子供が、堂々と大男の肩に乗っているとは思わないようだ。
「通れましたね」
ロアの作戦なのかもしれない。
「俺たちが心配しすぎていたのかもしれないな」




