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Ⅰ 【100年に一度の幸福】 ②

十七歳。鳴瀬高校二年生の川水透は、四月のある日、道端で出会った占い師から無理矢理に占なわれることになる。その占いの結果、ある〝必然〟が六月一〇日の梅雨真っ只中に待ち受けているらしい。その必然に怯えながらも六月一〇日は案外すぐに訪れる。その日玄関外へと妹に蹴飛ばされ、母親に威圧され、死期を感じつつ、覚悟が決まり、自分の受容力を高めることに成功する透。そんな彼の登校の最中、必然は突然に。その必然は、お菓子のオマケとおかっぱ頭の少女〝紫無月陽花〟の復讐を連れ込み、透自身の本質をさらけ出させる。そして気付く透、〝必然〟は内側にいた。自身の本質を知った透は、復讐に加担。初めは自身の負い目を理由に復讐に加担する透であったが───。

六月某日

少女は、思い悩んでいた。仇敵は見つけた。だが復讐を果たすための手段が乏しい。自分は、非力だ。迷いや葛藤、怖さもある。待ち続けた好機は、私の状態を待ってはくれない。しかしながらいつまた見失うかも分からない仇敵。ここ最近ずっと堂々巡りを繰り返していた。

「・・・・。」

「ちょーっと、茶髪でおかっぱ頭のかーのじょ、ちょっと。ちょっとだーけぇね、寄っていーかない?」

そんな最中、胡散臭そうな占い師に絡まれた。

「しなずき~ようかさん」

 私の名前。

「私は予め目を付けられていたと?」

「いえいえいたまたまでぇすっ!」

見え透いた嘘。いやあからさまに嘘だ。

「占い師が私に何か?」

「占い師なのだから占うのが筋なので占う相手の呼び込みですよ。もっとも占う相手は私が占いたいんなぁ~と思うお眼鏡かなった相手じゃないと気が進まないのですが」

「私がお眼鏡?」

「おめがねおめがね」

「うそくさ」

「そういわないで、ささ座って」

パイプ椅子を用意された。気晴らしにはちょうどいいか。

「ちょっとだけだから」

「素直じゃないですね。興味ある癖に」

「帰る」

「ごめんなさいとカムバック」

「・・・っはぁ」

ため息をつきながらパイプ椅子に腰かけようとするとき、偶々占い師の名前が書かれたであろう木の板に目を持っていかれた。

〝ダサい〟

「名前、ふざけて作ったの?」

「怒り。おい嬢ちゃんその言い草そりゃ私と闘う宿命を帯びたいってか」

「ごめんそんなつもりじゃなかった。素敵な名前」

「すぐに自分の過ちに気付いて謝れる子は好きです。許します許せます」

この占い師チョロいな。

「で、どういう占いをしてくれるの?」

───そう遠くない日、あなたが想いを馳せ続けた〝必然〟と向き合う。

「!?」

「てきとうです。今のはテキトーに言いました。にしては焦り顔ですね。バーナム効果と呼ぶにも弱い提起だったのですが、当たり付きでしたか?」

「・・・ド、ドストライク」

一度、両手を上に挙げ、背筋を伸ばし、間を作った占い師。そしてふぅっと一息入れ。

「やっぱり?」

「テキトーって言ったじゃん!!」

この占い師は嫌いだと思った。

「占い師ですので。当てました」

「当てましたって自信あった風だけど、わかりやすく予防線紛い重ねてたよね?」

「何も。何も言ってないです」

真顔で首を横に振る占い師。

「しらじらっ、もういいです。私はその〝必然〟にどう向き合った方が良いんですか?」

「呑み込みが早いですね、ノリノリですかダウナー系こけしっ子」

「あん⁉」

「何も言ってません。ところで今の問いの答えについてですが、どう向き合っても良いのではないでしょうか、です。どうせ〝必然〟と向き合うのです。逃げるも良しですし、わかりやすく喚くも良し。いっそサクッと殺しにかかる方が吉かもです。復讐、するんですよね?」

そこまでわかってて・・・。

「あのさ・・・簡単に言うなよ」

「・・・・、へ?」

 溜めて腹立つ顔。

「簡単に言うなっ‼」

大きな声が出た。ここ最近で一番大きな声だった。その顔の分が過剰に出た。

「これは失礼」

腹積もりしてたはずなのにずっと揺らぐ。そこにこの占い師はまるで私の為を思って、と言わんばかりに内側を抉ってくる。自分を通して一度感情を整理させる気なのだろう。

いつの間にか椅子から立ち上がり逃げ出す事を忘れていた。それぐらいに自分の周りが見えなくなっていた。

「復讐が、怖いのですか?」

「聞かないで」

「言いたくないからですか?」

「考えがぶれる」

「考えがぶれるから復讐について考えたくないのですか?」

「そうだよ・・・」

少女は拗ねた表情をして見せた。これ以上は引けと。しかし、占い師の言葉だけは明確に耳へと入って来る。街の、生き物の、自然の喧騒は聞こえず。

「では良いか悪いかは別として、一つ言っておきます。あなたの復讐は、必ず阻止されます。〝必然〟によって」

「ふえっ」

真っ白。

「気の抜けた声ですね。聞こえていましたか?ではもう一度。どちらにせ───」

「どういうことっ!」

「うぁん」

少女は、占い師のローブの首元に掴みかかり、前のめりで問い質す。

「私の復讐が〝阻止される〟って・・・どういうこと?・・・だって〝必然〟は」

少女は再びパイプ椅子に座り込む。今度はより深く。少女は悔しさからなのか泣く素振りを見せる。が、涙は出なかった。

「なるほど、わかりました。あなたは復讐の対象と〝必然〟の対象を同じものと考えていたのですね。納得です」

「私のその〝必然〟の対象って誰?多分だけど全然想い馳せ続けてないし」

「誰かと言われるとそこはなんとも。ですが、想いを馳せ続けていたのには間違いないですよ。だって───」

───あなたの代わりに復讐を果たしてくれる人ですから。

少女は安堵しようとした自身をすぐに嫌悪する。しかし、不思議と口角は緩んだままだった。

「笑ってますね」



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