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彼にだけ私の魔力は甘いらしい  作者: もんどうぃま


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4 ドラゴンのツガイ


「リュカ、ありがと!」

緊張から解放されたミレーユは膝から崩れ落ちた。

「俺こそ、大きな声で喋っちゃってごめん」

ミレーユは首を横に振った。

「予定通り家具を集められたのはリュカのおかげよ。柱を退けるなんて、私だけだったら無理だったわ」


 『時の間』の扉が開いた。

「おかえりー!ベルの音、聞こえた?」

「聞こえたよ、リルム。マジで助かった」

「じゃあ、ご褒美!」

「今は勘弁してやってくれ。あいつ疲れちゃったから。人は精神的な疲れでも体に影響があるんだろ?」


「そうなんだ?んじゃ、ミレーユには早速休んでもらおう!知ってるよ。人はお風呂に入ったり、ベッドで寝たりするんだよ。キリヤが言ってた」

「あー、あいつ人の世界の本が好きなんだったな」

「キリヤ、張り切って用意してたよ。ねーねー、ミレーユ、こっちにおいでよ。部屋を用意したよ」


「リルムありがと。妙に疲れちゃったから、助かるわ。魔力、寝る直前でよかったら吸っても良いよ」

「え!いいの?あ、キリヤももらって良い?」

「二人、って言って良いのかな。二人で良い感じに分け合ってくれれば問題ないと思う」


 そのやり取りを隣で聞いていた精霊王の顔が曇った。

「問題はありますよ。魔力を吸い尽くされると人は死んでしまいます。人の最期の魔力を吸った妖精は穢れてしまうので、実に危険な行為です。不思議なもので、自分で使い切る分には問題はありません。使い切ったと言っても最期の魔力までは使いきれませんし、人の魔力は眠れば回復しますから。ミレーユはそれで大丈夫だと思ったんでしょう?」


「知りませんでした。危なかった」

「私も知らなかったよー。リュカのツガイを消しちゃうとこだったよ。アブナイ、アブナイ。あ!キリヤ!こっちに来て!」

男の子の姿の妖精が飛んできた。さっき小さな体で大きな本を読んでいた妖精だ。


「ミレーユ、この子がキリヤ。キリヤ、こっちの女の人がミレーユだよ」

黒髪で眼鏡をかけている妖精はメガネをクイッと指で押し上げた。


「こんにちは、ミレーユ」

「あなたがキリヤね。色々準備してくれたって聞いたわ。ありがとう!埃っぽい所にいたから、お風呂に入れるの嬉しいわ」

「いつでも何度でも入れるよ。お湯はずっと浄化されてるからきれいだよ。あ!タオルってのもいるでしょ?これ、どうぞ」


 キリヤは小さな指をパチンと鳴らした。ポンッと音を立ててタオルが現れた。

「ありがとう。こんなにふかふかなタオルは初めてだわ。特別なの?それともこの世界では常識なの?」


 キリヤは照れたように笑った。

「それはボクの魔力をミレーユのために紡いだものだよ。そういう意味では特別なものかも」

「魔力を紡いで?すごいわ。そんなに細く感触も希望通りにできるなんて!それに優しい魔力だわ。大事に使わせてもらうわね」

ミレーユはタオルを抱きしめた。


 それを横目で見ていたリュカは顔が強張った。キリヤは嬉しそうに言った。

「そのタオルも何度でも浄化されるから、気にせずどんどん使って」

「ふわふわな上に便利!すごいわ!」


「うんうん。そうなの。私たちすごいのよ」

得意げなリルムはミレーユの前でぐるぐると踊るように回った。何周か回った後ピタッと止まって言った。

「じゃあ、寝るときになったら呼んで。ご褒美をもらいに行くから。体内魔力量はちゃんと把握できるから、安心して」

「分かったわ。色々とどうもありがとう」


 リルムは照れたように笑って首を振った。その後キリヤの手を取った。

「さ、キリヤ向こうで待とう?」

「ん。ねぇ、ミレーユ、何かあったらボクの名前も呼んで」

「分かったわ。キリヤもありがとう」


 リュカはつまらなそうに精霊王の側で椅子に座って自分の髪の毛をくるくると弄っていた。精霊王に向かってカーテシーをしたミレーユが部屋を出ると、リュカは一瞬寂しそうな顔をした。


「リュカはすっかりミレーユの虜になっているようですね」

「えっ?トリコ?」

「ツガイの魔力は甘いでしょう?姿が見えなければ寂しいし、彼女のものは涙ですら全部集めたい。魔力も本当は誰にも渡したくないのでしょう?」


「そういう事?」

リュカは顔を真っ赤にして口を手で押さえた。

「そういう行為をあまり歓迎しない者も居るので、最初は見つからないように集める方が良いですよ」

「経験談?」

精霊王は何も言わず、口角を上げた。リュカはニヤリとして精霊王を見た。


 精霊王は音もなく立ち上がった。

「リュカとミレーユの家を用意したので、ミレーユが目覚めたら生活の準備をしましょうか。リュカはドラゴンに報告しましたか?」

「あ、まだだ。ちょっと行ってくる。新しい家はどこに?」


「今はまだこの世界にあります。ミレーユが落ち着いたら、人の世界のゼーマンの森に移しましょう。ゼーマンの家系のミレーユも馴染みやすいでしょう。行った事がありますからね」

「そうか。分かった。ありがと」

「おや、もうミレーユの影響でお礼を言うようになっていますね」

「そういうもの?」


「ツガイを得るとお互い影響し合うんですよ。」

「全然気づいてなかった」

「ふふっ。リュカがそんな顔をするようになるなんて… ふふっ、この後どうなるのかはまだ誰にも分かりませんよ?」


「そういうもの?まあ、これから一つずつ片付けていくとして、とりあえずあいつの所へ行ってくる」

「先代のドラゴニア大公はお元気ですか?」


「ああ。今は名を失ったからミニドラゴンだけど。俺も儀式を終えるまでは同じ道を辿る可能性があるって事だよな」

リュカは不安気に精霊王を見た。


「繰り返さないために、私たちは……」

リュカは頷いた。そして何かを思い出したように顔を上げた。

「そうだった、精霊王がいる時にミレーユの家具を俺の魔法空間から出しておきたいんだけど。精霊王が触らないとこの世界で存在できなくなっちゃうだろ?」

「そうですね。では二人の家の一室に置きましょうか」


 精霊王が手を振ると、リュカと精霊王は何も置かれていない部屋に移動していた。リュカは魔法空間から家具を出して並べていく。精霊王は一つずつ触れた。家具は磨かれたように艶が増した。何かに気づいた様子の精霊王がクローゼットを開けると、布が置いてあった。


「これ、あなたの巣ですよね?どういう経緯でクローゼットの中に?」

精霊王は不思議そうにリュカを見た。

「全く覚えていない」


「そうですか。残念です。状況から想像するに、ツガイの下へ現れた卵化したあなた、まあ、要はたまごですが、そのたまごをミレーユのお母様が保護してくださったのかもしれませんね。ドラゴンのたまごはツガイのもとに転移しますから」



 リュカは少し照れくさそうに頷いた。精霊王は目を輝かせて家具を見た。

「それにしてもこの家具は凄いです。付けられている加護が素晴らしいです。芸術的です」

家具を色々な方向から見る精霊王に家具に興味がないリュカは腕組みをしたままで聞いた。


「ミレーユの母親は一体何者なんだ?あの収納できる指輪にしろ家具にしろ、ミレーユの母親が関わったものはすごいものばかりだ。そもそもドラゴンのたまごが現れても動じないで、その上巣を作ってくれるなんて」


「うーん。どこかの関係者なんでしょうね。何と言っても、ドラゴンのツガイの母ですし。ただ、もう亡くなったんですよね?そうなると、妖精の樹に帰った可能背が高いですね。ミレーユの側にはもう見えませんでした」


「そうか。とりあえず一度ミレーユの父親を見に行こうかな。『ドラゴンのツガイの父』なんだろ?」

「そうですねぇ」

「それに『実の娘を大切にしない人』という生き物を見てみたい」


「見た目も中身も人は本当に色々な種類がありますから、興味深いですよね。それにしてもミレーユの印象と話に聞いたその父親のイメージがリンクしませんね」

「そうなんだよなぁ。ま、ここで考えていても仕方がない。さて、今度こそ行ってくる」


「行ってらっしゃいませ」

精霊王に見送られながら、ミニドラゴンの姿になったリュカは、先代ドラゴニア大公が過ごしている谷に転移した。


「急にどうした?随分久しぶりだな。何かあったのか?」

リュカによく似た小さなドラゴンが巣の中で寝そべっていた。


「卵化が終わったから報告に来た」

「おぉそうか。それはめでたいな。儀式は終わったのか?」

「まだだ。受け入れてもらおうとしているところだ」


「失敗する可能性があっても早いうちに儀式はしておいた方がいい。あいつは力が強いわけではないが隙をつくのが上手い」


「あぁ。それで多分リールもやられた」

「リール?」

「ボーランディア公爵家。俺の幼馴染のフェニックス」

「あー、あいつか。お前ら謎に仲良かったしな。聖獣トリオ可愛い、とか言われて調子に乗ってたな」


「うるさいな。もう可愛くない大きさに成長したんだよ」

「はいはい。大きくなったなぁ」

「ちっ」

「早くツガイに会わせてくれよ?」

「人って難しい。」


「卵化後の姿はツガイの好みの姿なはずだから有利な筈なんだがなぁ…照れ臭くて意地の悪い事言ってると大体嫌われるぞ?」

リュカは目を逸らした。

「もうやっちゃったか……」

「だって、あんな嬉しくて照れ臭くて恥ずかしい気持ち、無理だろ」


「開き直りもよくないぞ?とにかく優しく、名を呼ばれたらいつでも駆けつけろ。ツガイの気持ちは最優先。あとは、なんだろな、うーん。ツガイを失ったオレが言っても説得力ないか。ハハハ」

ドラゴンは頭をポリポリとかいた。リュカは首を振った。


「そんなことない。ありがと」

「ありがとうなんてお前から初めて言われたな。もう染まり始めてるんだな。ドラゴンは一途でまいっちゃうよな」

「そうか?俺にはよく分からない」

「はっはっはっは。そういうものか」


「まあ、また会いにくるよ。俺のツガイ、すぐは無理だけど、いつか紹介するよ。お前まだまだ生きるだろ?」

「そうか。ま、オレは当分まだ死なないよ。心配するな」

「そうか、なら良い。またな」

リュカは精霊王の世界へと転移した。


「あいつのツガイが現れるとはな。時間が経つのはあっという間だなぁ」

ミニドラゴンは一度伸びをして、一気に上昇すると遠い空へと飛んでいった。空を一巡りすると、巣に帰っていった。




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