16 三
「なんで、あいつの体は解れたんだ?」
森の家に転移したリュカは真っ先に精霊王に聞いた。
「魔女は各々の数字を持っているんです。その数字を持つことで魔力が高く保たれるんですが、反してその数に関連して結界を張ると体が消失するんです。あの魔女は三でしたから、三回の結界、三種の魔方陣、三つの罪」
「なんで黙ってたんだよー!」
「敵を欺くには何とやら、ですよ。それにカイルが命懸けで得た情報ですから、慎重すぎるくらいでちょうど良いと考えていました。カイルが見破るために何をしたかはお伝えしません。それにあの魔女は私の最初の愛し子の仇でもあったんです」
精霊王は少し寂しそうに微笑んだ。
「ミレーユとは別の魂か?」
「はい。ミレーユの魂程では無いんですが、どんな環境でも光を失わない美しい魂でした。あの魔女に騙されて、魂ごと糧にされてしまいました。でももう、リュカが生まれるずっと前の話です。私はツガイを必要としませんが、実は愛し子が魔力の泉なのです」
「え、じゃあ、ミレーユってすごくない?」
「ミレーユは特別です。辛い思いをさせてしまって胸が痛いです」
「そうだな。これからたくさん幸せにしよう」
リュカは精霊王の肩に手を置いた。精霊王はその手に手を重ねて、ポンポンとあやすように叩いた。
「あれ?おまえまだいるの?寝ぐらへ帰らないのか?」
リュカはドラゴンを見つけて側に寄ってきた。
「ここでカレンの魂が戻ってくるのを待つんだ」
精霊王も近くに来た。
「あの魔女があの場で残した宝玉は二つあったんです。一つはリールの宝玉、もう一つはカレンの宝玉です。あの魔女はこの魔力をいいように使ってやりたい放題だったんです。リールの登場が派手だったので、その隙に手元に転移させました」
精霊王はドラゴンにカレンの宝玉を渡した。ドラゴンは宝玉を大事そうに手の中に包み、口付けを贈ると妖精の樹に捧げた。宝玉は樹に帰っていった。
「これで次回、カレンだった魂、まあ、今は逞しく食堂の女将さんをしているんですけど、魂と宝玉が一つに戻って完全な魂に戻る予定です」
「カレンに会えるの、楽しみだ。生きる喜びができた」
ドラゴンは人の姿からミニドラゴンに戻った。
「ツガイがいないと魔力が保たないから、今回の魔力は精霊王に貰ったんだけど、流石に疲れた」
ミニドラゴンはお気に入りの巣を整え始めた。寝ぐらをリュカの家に変えたのだ。
「精霊王!」
リールがコーラルを連れて走り寄ってきた。
「私たちを助けてくださってありがとうございました!私が油断したせいで魔女に体に入られてしまい、結婚式の夜に魔女に変な玉に閉じ込められてしまったのです」
「カレンと同じだ」
ミニドラゴンが飛んで来た。リールはドラゴンを見て頷いた。
「あなたの話を聞いていたので、咄嗟にボクの宝玉で覆ったのです。コーラルに触れられそうで触れられない宝玉の中で耐える日々に、何度も諦めそうになりましたが、二人で励まし合って何とか今を迎える事ができました。ありがとうございました」
「両親にも友人にも直接何もできませんでしたが、その分も私を護ってくれたリールに返していきます。これからもどうかよろしくお願いします」
二人はお辞儀をして精霊王から離れると、二組の聖獣とツガイのところへ行った。三組ツガイはお互いに自己紹介をして、驚いたり、笑い合ったりしながら幸せそうに交流を深めている。その姿を眩しそうに精霊王は見ていた。
「よかったな」
「ええ」
ドラゴンも眩しそうに三組のツガイを見た。
「そういえば、あなたに名を与えようと思うのですが、何がいいですか?」
「カレンが呼ぶ名前しか要らないよ」
「カレンが生まれ変わるのはまだかなり先なので、ここで暮らすのなら名前があった方が便利だと思ったのです」
「確かに。ちょっと考えるよ。先はまだ長いからな」
完




