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彼にだけ私の魔力は甘いらしい  作者: もんどうぃま


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13/16

13 たまご



 エルシーたち三人が森の家に着くと、クレアが出迎えてくれた。

「おかえりなさいませ」

「リュカは空を散歩してから戻ってくる」

「かしこまりました」


 リルムは明るめの声で言った。

「ミレーユは?泣き止んだ?」

「はい。今ご両親と談話室でお寛ぎです。皆様もそちらへいらっしゃいますか?何かご用意いたしましょうか?」


「談話室に行くよ。美味しいお菓子が食べたいな」

「かしこまりました。ではこちらでございます」

クレアはサラに目で合図を送ると、三人を談話室へ案内した。


 談話室では三人の親子が幸せそうに話していた。リルムはその姿を素敵だなと思った自分に驚いた。ツガイを得て変化し始めた自分に戸惑いを覚えた。


「リルム!キリヤ!こっちへ来て!」

二人を嬉しそうに両親に紹介するミレーユ。

「早かったな」

エルシーの横にはいつの間にか人の姿に戻ったリュカがいた。


「この宝玉、精霊王に渡しておいてくれ」

美しく輝く宝玉を手に持ったリュカは辛そうな顔をした。エルシーは黙ってそれを受け取った。

「出てくる」

リュカはどこかへ転移した。


 目の端にリュカを捉えていたミレーユはリュカが自分のところに来ないですぐいなくなった事に一瞬苛立ちを感じた。そんな自分に驚いていた。


 エルシーが立ち上がってミレーユたちの方に来た。ジェラルド、ナディーヌ、ミレーユの三人はエルシーの前で跪いた。

「この度は私たち親子をお救いくださり、本当にありがとうございました」

ジェラルドが頭を下げた。続いてナディーヌとミレーユはカーテシーをした。


「僕は謝らないと行けないことがある」

そう話し始めたエルシーは、ミレーユたちに座るように促した。


「ゼーマンの領地には秘密があるのを三人は知っている?」

「心が澱んでいる人は領地に入れないと言われているのは聞いたことがあります」

ミレーユは迷いながらそう答えた。


「それは正しいが正確じゃない」

ミレーユたち親子は顔を見合わせている。

「ゼーマンは浄化するんだ。領地に入ろうとした者を浄化する。ただ浄化するんじゃなくて、そいつの心が一番綺麗だった頃までそいつの時間を戻すんだ。だからその場で生まれる前まで戻ってしまって消滅した者もいる」


「生まれる前ですか?」

「そうだ。前世の澱んだ記憶を持ったままだったんだろうな」

「前世の……」

ミレーユはリルムを見た。


「人は死んだ後、妖精の樹を通って精霊の世界に入るんだけど、ほとんどの人はその時点でそれまでの記憶は魂の奥底にしまわれるんだ。記憶が無くなったようにみえるけど無意識化では覚えてるって人が多いんだよ」


「たまにしまわないで覚えてる人もいるんだよ」

キリヤがテーブルに乗っていたお菓子を口に入れながら付け加えた。


 ミレーユたち三人は頷きながら聞いていた。

「この家に出入りできる部屋を繋げたのはジェラルドとナディーヌの為でもあったんだ」

エルシーはリルムを抱き寄せた。

「ここは精霊王の管轄だから、ゼーマンの浄化は働かない。実はジェラルドとナディーヌはゼーマンの結界には入れない体になってしまった。ナディーヌがアイツにやられてフォレスターに来た時、僕のミスで浄化の手順が違ったんだ」


「手順……」

ミレーユが呟いた。

「そう。手順。ナディーヌがゼーマンの直系だということを失念していた。ゼーマンの直系は特別なんだ」

「お父様も入れないというのは?お父様はフェルシポの……」


「フェルシポはゼーマンの家系ではないけど、ジェラルドの母がゼーマンの家系だったんだ。後で気付いた。すまない。」

エルシーは首を垂れた。


「私とジュマイヤの母は、街で見染められてそのままフェルシポに第二夫人という建前で嫁ぎましたし、私たち双子を産んだ時に亡くなったので、どの家の出身か、という事はあまり知られていないのです」


 ジェラルドを見つめた後ナディーヌはミレーユを愛おしげに見つめた。

「精霊王からお言葉をいただいて、ジェラルドと婚約したのよ。そしてあなたが生まれて、私たちは祝福の中幸せに暮らした。反面、ジュマイヤは養子として家を出され、養子先では死んだことにされ、誰にも探されずに街の隅で孤独に生き、ルネに拾われた。でもそのルネは全ての元凶なの」


 ジェラルドはナディーヌを抱きしめた。

「ナディーヌがルネに襲われた時、私は側にいる事ができなかった。ナディーヌはアマンディーヌ様の宝玉を使ってルネを謀り、転移してフィレスターに逃げたんだ。私たちは事前に合図を決めていた。それがアマンディーヌ様の宝玉だったんだ」


「ちょっと待って。なぜいきなりフォレスターなの?ゼーマンじゃないの?」

ミレーユが聞くと、

「私たちはルネによって穢れを受けた。そのままゼーマンに行っていたら消滅していたと思う」


「そんな……クレアやサラたちは無事だったわ。お父様とお母様とは違うの?」

「クレアたちは私たちほどの穢れを浴びせられてはいなかったから大丈夫だ。あそこまでの穢れは流石にいくつも用意することはできないだろう」


「なんて事……待って、どうやってフォレスター公爵と知り合ったの?交流があった事を私は知らなかったわ」

「ナディーヌが保護していたドラゴンのたまごが縁で、エルシー様との交流が始まった。ミレーユがドラゴンのツガイ候補だと知らされた夜は、正直涙が止まらなかった。愛しい娘にどんな試練が待っているのか……代われるものなら代わってやりたかった」


「お母様が保護していたたまごって、あのクローゼットに入っていた?」

「そうなの。ミレーユが生まれてしばらくした頃、ミレーユのベッドにたまごがあったの。不思議に思っていたら、突然エルシー様が部屋に現れて、私たちはそれはもう驚いたんだけど、親切に色々教えていただいたの」


「エルシー様はその後も何度も訪ねて来てくださって、たまごの様子を確認してくださったの。大切なたまごをお預かりしているのだから、と思ってミレーユと私だけがクローゼットを開けらるように細工もしたのよ」

ミレーユは驚くばかりで、返す言葉もなく聞いていた。


「ジェラルドが転移してきた時は肝を冷やした」

エルシーは嫌な事を思い出したような顔をした。


「あの時は申し訳ありませんでした。ミレーユをゼーマンに送り出した後、隙をつかれてジュマイヤに襲われたのです。突然自分そっくりの男が現れたことに動揺しているうちに切り付けられてしまいました」

「切りつけられた?」


「結構酷い怪我だったんだ。慌てて対応したのも不味かったな。命は助かったが、不自由な体にしてしまった……」

「いえ。私たちはこうしてミレーユと再会できて、再び愛しい娘を抱きしめることができました。エルシー様には感謝しかありません」


「ゼーマンに帰れなくなってしまっただろう?」

「構いません。私たちが戻るのは結局は妖精の樹です。ドラゴンのツガイであるミレーユを無事ドラゴンに届けることができた。勤めを果たすことができて、私たちは満足です」


「お父様?お母様?」

「ミレーユ私たちはここまでのようだ」

「リュカ!リュカ!」

ミレーユは咄嗟に叫んだ。


「どうした?」

リュカが現れた。

「リュカ、私の両親よ。たまごだったあなたをエルシー様と一緒に守ってくれたの。でももう限界なんですって」


「あなた様があのたまごの?ミレーユの事、どうかよろしくお願いします。ちょっと頑固なところはありますが良い子なんです」

両親は二人揃って頭を下げた。


「考え無しに卵化してツガイの下へ飛んだ俺を保護してくださってありがとうございました。ミレーユに何があろうと俺が守ります」

ミレーユは両親に抱きついた。


「私を大切に育ててくれてありがとう!お父様、お母様、大好きよ!でも置いていかないで!」

「ミレーユ!幸せになってね!ミレーユは生きて。連れて行くなんて酷な事はさせないでおくれ」

三人は抱き合った。リルムは涙が止まらず、エルシーが抱きしめていた。キリヤは呆然と光景を眺めていた。リュカはミレーユの傍に立っていた。


 いつの間にか両親の先に精霊王が立っていた。

「ありがとうございました」

ジェラルドとナディーヌが精霊王にお辞儀をすると、精霊王は案内をするように行先を指し示した。その方向には大きな木が見えた。


「あれが妖精の樹……」

ミレーユの隣にはリュカがいた。ミレーユは両親を見つめたまま、リュカの服を掴んだ。その手を上からしっかりとリュカが掴んだ。


 三人の姿は溶けるように消えて、辺りは静かになった。




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