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勇者様の保護者  作者: 小語
最終章
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最終話 勇者様の保護者

 草原に陽光が降り注ぎ、そよ風が吹く穏やかな景色だった。


 ジダイは草原を歩いている。その周りには年少の仲間たちが足並みを揃えていた。


「しかし、魔王を倒して平和になったもんだなー」


 いつも通りスバルが後頭部で手を組み、気の抜けた表情で言った。


 ジダイたちが魔王、ドラメシュアと戦ってから十日間が経過している。ドラメシュアの影響下にあったシロガネ大陸の魔族は行動が沈静化し、その被害も無くなっていた。


「魔族に指示を出していたドラメシュアが滅ぼされ、その配下の魔族は魔界へと戻ったみたいだからな。ま、ここまで静かになるとは思わなかったが」


 ジダイが応じると、横からメノウが口を挟む。


「魔王が封じられているのはこのシロガネ大陸だけでなく、まだ六ケ所残っているのよね」

「そうだ。他の地域では、いまだに魔族が暴れているだろうな」


 ジダイの言葉にメノウが頷く。


「やっぱり、他の地域の魔王を放っておくことはできません」


 そう言ったのはネイロだった。その腰には、ネコジタ人形が括りつけられている。


 ジダイは、普段は気弱な少女に視線を移す。


「本当に、他の魔王も倒しに行くつもりなのか?」

「はい! ネイロは勇者ですから!」


 この先の困難を前にしても笑顔を浮かべるネイロを見て、ジダイは頷き返す。


「スバルも一緒に行くのか?」

「当たり前だろ? 俺だって勇者の力を持っているんだ。ネイロがみんなを守るんなら、ネイロは俺が守らなくちゃな」


 スバルは誇らしげに腰の剣を触る。


 正確に言うとスバルに勇者の力があるわけではない。三百年前の勇者の剣と、封印されていた魔王に残っていた勇者の力の残滓が共鳴し合って力を発揮したらしい。


 魔王以外の相手には、スバルは相変わらずただの剣士でしかない。だが、ネイロにとっては頼りがいのある仲間だろうと、ジダイは少年を見つめて思う。


「メノウはどうするんだ? クレナの盆地に帰るつもりは無いのか」

「うん。わたしも一緒に行く。今までいろんな場所を旅して楽しかったし、これからもネイちゃんやスバル君と同じ景色を見ていきたい。それに……」


 メノウはジダイの顔色を窺うように見上げてくる。


 ネイロとスバルも探るような視線を送ってきていた。三人を代表してネイロが問いかける。


「ジダイさんは、これからどうするつもりなんですか?」

「俺はな……」


 三人が気にしているのは、ジダイが一緒に来るかどうかということだろう。


 ジダイは十三年前に亡くなったセイギとの約束を守るためにドラメシュアと戦った。そのドラメシュアを滅ぼして約束を果たしたため、これからジダイがネイロたちの旅に付き合う必要もないのだ。


 もし、ジダイがネイロたちと旅を続けるなら理由が必要になる。


 考えるまでもなく、ジダイにはその理由が見つかっていた。


「俺もみんなについて行くつもりだ。何てったって、俺はお前らの保護者だからな」


 ジダイの返答を聞き、年少の仲間たちは歓喜の声を上げる。


 騒々しい声に囲まれながら、ジダイは笑みを浮かべて草原を歩いていった。

本作はここで完結です。

ここまでお付き合いくださったみなさま、本当にありがとうございました。


ジダイたちの旅はまだまだ続いていきますが、本作は公募用に書いているため、ここでいったん区切りとなります。

魔王が七体いるというのも、「区切りの良いところで完結しているけど、まだ書き続けられます」という意味もありますね。いつか最後まで書けたらいいなあ、と思います。


勇者として成長したネイロと、三百年前の勇者の力を対魔王の場合に限って使えるスバルがいると、これから魔王とか簡単に倒せるでしょ、というわけにはいきません。

実は裏設定があります。

ドラメシュアを倒すためにその肉体の一部を平界に隔離しましたが、ドラメシュアの肉体のほとんどは魔界に戻ったことになります。

魔界でドラメシュアの魔力を取り込んだ魔族が現れ、魔族全体が強くなってしまう現象がこれから起こります。そのためジダイたちは、さらに苦労して魔族と戦っていかなければなりません。


もし続きが書けたら、強くなった魔族との戦いが繰り広げられる予定です。

人形になったネコジタも霊力を注げば一時的に動けるようになるので、お助けキャラとして活躍する予定でした。

何かの賞を取って続きが書けたらいいなあ。


もしもそうなったら、またお手に取って頂けますと幸いです。

ありがとうございました! ジダイたちもお疲れ様!

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