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勇者様の保護者  作者: 小語
第6章 ヒアイ高原の決戦
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第8話 ドラメシュア=セイギの力

 セイギが薄ら笑いを浮かべ、右手を差し出す。その動作に合わせて暗雲の右手が掌を広げた。


「まずい! ネイロ、防御だ!」

「はいッ」


 ジダイが両手を突き出して光の防壁を展開。ネイロも同様に光の盾を形成する。スバルも慌てて剣を顔の前で水平に寝かせ、左手を峰に添えた。


 唯一、防御の手段が無いメノウは左右を見渡し、とりあえずジダイの後ろに隠れる。


 その直後、黒雲の掌から発せられた暗褐色の光条が一行を急襲した。巨大な暗褐色の光の柱がジダイとネイロの展開した防壁を直撃する。


 凄まじい破壊力で防壁が粉砕され、四人が吹き飛ばされた。


 爆炎を前にしてジダイが素早く体勢を整えると、メノウが近くで身を起こしているところだった。その近くではネイロがスバルを助け起こしている。


「さすがに防ぎ切れないか……!」


 ジダイが吐き捨てる。


「よく防いだな。どれだけ逃げられるか見せてもらおう」


 セイギが口の端を引き歪めて笑う。


 ドラメシュアの両手から暗褐色の光弾が放たれる。矢継ぎ早に射出される光弾が爆発し、ジダイは地面を転げまわって回避していた。


 半身を起こしたジダイが周囲を見回す。


「みんな、無事か⁉」

「ああ、何とか!」


 すぐに声が返ってきたのはスバルだった。白銀の光が宿った剣で光弾を防いでいる。


「ネイロも大丈夫です!」


 ネイロは防御だけでなく、余裕があればドラメシュアに反撃を加えていた。


 防御の手段が無いメノウは余裕が無さそうだ。ジダイはメノウに駆け寄り、その前で防壁を展開する。


「ごめん」

「謝ることじゃない。攻撃を加えて、ドラメシュアの攻勢を逸らしてくれ」

「分かった」


 メノウが本をめくる気配が起こり、上空で方舟が旋回する。


「神族の戦艦は目障りだな」


 セイギは上方へと茶色い瞳を向ける。その左指が方舟を照準し、その動作に合わせて伸ばされた黒雲の人差し指から光弾が射出された。


 暗褐色の光弾が方舟から放たれた深紅の光条を相殺しながら直進、方舟の左舷に命中して爆炎を上げた。


「うそ……、方舟が……」


 炎に包まれて神界へと消えていく方舟を目にし、さすがのメノウも動揺を隠しきれない。


 セイギが右手から放った光弾がジダイたちを強襲、光の防壁を圧砕してその身を爆発で弾き飛ばす。


「ぐあぁッ!」


 背中から地に叩きつけられて滑走したジダイが苦鳴を発した。衣服の各所が破け、地肌に生じた火傷や擦過傷が覗いている。


 爆発の衝撃で視界が明滅するなか、荒い息を吐いてジダイは身を起こす。


 すぐ近くにはメノウが横倒しになっており、その目が閉じられているのは気を失っているらしい。メノウの衣装も裾や袖が焦げているが、何とか外傷は防げたようでジダイは安堵する。


 小休止の間もなく、ドラメシュアが右手に暗褐色の光を充填していった。


「逃げられん……!」


 メノウへと這い寄るジダイが吐き捨てた。


 二人の窮状を目にしたネイロが援護のために白銀の光と化して疾走。それに気付いたドラメシュアは左手の五指から光線を放射した。五条の光は幾何学的な軌道を描いてネイロの周囲に着弾すると、複雑に絡み合ってその場に固定する。


 暗褐色の檻に囲まれたネイロは反応できずに頭部から激突した。激痛に顔をしかめつつ、檻へと両拳を連打するも破壊することはできない。


「こんなのッ!」


 ネイロは全身から白銀の光を放射する。檻に少しずつヒビが入っていくが、それまで十数秒はかかるだろう。ドラメシュアがジダイたちの生命を奪う一撃を放つには、十分な時間だ。


「そこで仲間が消え去るところを見ているがいい」


 セイギの可愛らしい面から毒々しい言葉が発せられる。


 黒雲の右手には、表面が流体の波紋のように揺れ動く暗褐色の光弾が作られていた。圧縮した魔力を維持するために不安定な動きをしている光弾が、ジダイたちに向かって解き放たれる。


「うおおぉぉお!」


 そこへ滑り込んできたのはスバルだった。これまで防御に専念したため、その白銀の力は強い光輝を保っている。


 スバルが剣で巨大な光弾を受け止め、その中心から白銀と暗褐色が螺旋状になった光が四方に弾けた。


「負けるかよ!」


 常の剽軽な態度をかなぐり捨てたスバルが吠える。スバルが纏う白銀の光が徐々に削られていき、光弾も小さくなっていった。


 突如、光弾が大爆発して爆炎がスバルを飲み込む。スバルが身を挺したため、その背後にいたジダイとメノウまで爆風は届かなかった。


 メノウを抱えて熱波に耐えたジダイが頭を上げる。


「スバル、無事か⁉」


 黒煙が消え去ると、剣を杖にして立つスバルから白銀の光は失われている。ジダイとメノウの光も消失し、これでネイロ以外はドラメシュアと戦える状態ではなくなった。


「う……」


 頭を押さえてメノウが身を起こす。


「メノウ、大丈夫か」

「うん。それよりも、これは?」

「ああ、だいぶまずいことになった」


 ジダイは霊力が底をつき、メノウもそれは同じだろう。肩で息をしているスバルにも余力があるとは思えなかった。

魔王が本気を出し始めました。やはり最初に攻撃を食らっていたのは、勇者たちの実力を測っていたようです。

勇者の力を付与された状態のジダイたちですら圧倒する力は、クライクライよりも遥かに上ですね。

7章の冒頭で魔王がボケたりしているのも、結局は余裕があるからだったみたいです。


何百体の下級魔族がいても、魔王からすれば誤差の範囲のようなもの。魔王一人いれば、他の魔族がいようがいまいが人間を滅ぼすのは容易という感じでしょうか。

某人気海賊漫画のヨンコーみたいな。部下たち全部合わせてもボスの方が強いじゃん、みたいなパワーバランスです。

さすが魔王様です。

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