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勇者様の保護者  作者: 小語
第6章 ヒアイ高原の決戦
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第1話 魔王はつらいよ

 清涼とした空気で満たされ、緑の雑草が風になびくヒアイ高原。


 雲が間近に迫る高原の頂上付近、明るい景色のなかで異様な闇のわだかまりが存在した。


 暗黒の球体の前にひざまずくのは、薄紫色の体表をした猫人形型の魔族、ネコジタ。


「ネコジタよ。久しぶりに会ったが、その後の勇者についてはどうなっている?」


 ネコジタに向けて闇から問いが放たれる。低くおどろおどろしい声は魔王のものだった。


「ははッ! えっと、勇者につきましては……」


 ネコジタが返答に困る。最後に報告したのは、勇者がクレナの盆地を訪れたときだった。それから何度も勇者討伐の作戦に失敗し、報告が遠のいてしまっていた。


「どうした? 勇者については如何に?」


 ネコジタが言い淀んでいると魔王から促される。このまま黙っているわけにもいかず、ネコジタは仕方なく口を開いた。


「まず、クレナの盆地での作戦ですが……プトレマイナが敗死しました」

「うむ……」


「そしてクレナの盆地の聖女が勇者の仲間になりました」

「むう……」


「その後、勇者は〈迷いの山〉で〈不死のププロンとポポロン〉と交戦」

「うむ!」


「ププロンとポポロンが戦死しました」

「むう……」


「ついにクライクライ卿が勇者討伐に動き出し、三百年前に封じられた肉体を取り戻して勇者に戦いを挑みました」

「おお!」


「その結果、惜しくもクライクライ卿が滅ぼされたとの報告が入りました」

「おお……」


 腹心のクライクライまで勇者に敗北したことを聞き、さすがの魔王も気落ちした様子だった。


「それで現在の勇者の居場所ですが、このヒアイ高原の麓です」

「……ネコジタ、予が思うにかなり勇者に攻め込まれているようなのだが」

「ははッ! ご明察の通りです!」

「いや、そういうことではなくてだな」


 困惑しているのか魔王が押し黙った。


『そりゃあ、こんなことを一気に報告されたら困るだろな』とネコジタは他人事のように思う。そうは言っても、クライクライ亡き今は名実ともに魔王の第一の腹心であるネコジタは、この事態に対応する策を考えていた。


「ご心配なきよう。魔王様。わたくしめに、とっておきの策があります」

「すべてお前の策の結果だと思うが……。まあ、よい」

「はッ! 勇者はこのネコジタが今度こそ討ち取ってご覧に入れます。ヒアイ高原中腹の平地で軍勢にて取り囲み、我が指揮の下で勇者どもを全滅させる手筈です」

「待て待て。お前に軍勢は与えておらぬだろう」

「ははッ! そのため、この高原に配備されている魔王様直属の戦力をお借りしたく思います」

「むう……」


 もはや言葉を失った魔王が黙り込む。魔王が何を考えているにしても、有力な魔族は先代の勇者と今回の勇者に滅ぼされており、残るはこのネコジタしか存在しない。


 魔王の選択肢は一つしか残されていないのだ。


「……期待しても良いのだな?」

「お任せください!」

「仕方がない。予の軍勢をお前に貸す。見事、勇者を打ち果たしてみせよ」

「ありがたき幸せ!」


 ネコジタは一礼した後、立ち上がって踵を返す。


 力強く足を踏み出すネコジタの背後で魔王が吐息を漏らした気もするが、気のせいだろうと思い込んで振り返ることはしなかった。

ついに本編最終章の開幕! のっけから魔王側のボケで始まってすみません。

ネコジタからすると失敗続きで報告したくないし、魔王はいきなり部下がほとんど死んだと聞かされたらこうなっても仕方が無いかもしれません。

報連相は大事です。

魔王側もボケる余裕があるのは、ほぼ復活しているということもあるのかもしれませんが。

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