第4話 サービスシーン
シミズ村を訪れた夜、ネイロたちは村長の手配で宿屋に泊まっていた。
村に一軒だけの宿屋であり旅人も珍しいため、普段はただの民家で客がいるときにだけ部屋を貸し出すそうだ。
個室を与えられて休息し、一階の食堂で夕食を済ませてからネイロは入浴していた。
板張りの浴室は広く、湯船には何人も一緒に入れる作りだった。宿屋の店主が外から竈で湯を沸かしてくれているため、負担をかけないようにネイロとメノウは二人で入浴している。
「はー、気持ちいい」
「こういうお風呂にはめったに入れないからね」
ネイロとメノウはお湯に肩までつかりながら笑顔を交わす。温かいお湯がこれまでの緊張感をほぐし、肉体だけでなく精神の疲れまで和らげてくれるようだった。
「熱くなっちゃった」
頬を上気させたネイロが立ち上がり、湯船の縁に腰かけた。それに合わせてメノウもその隣に腰を下ろす。
二人は並んで膝から下をお湯につけ、涼みながら会話する。
「メノウちゃん、ネイロって弱いのかな」
「どうしたの、急に?」
「ネイロを庇って、ジダイさんはさらわれちゃったでしょ。ネイロがもっと強ければ、ジダイさんも無事だったはずだよ」
ネイロの苦悩を聞き、メノウは黙り込む。
しばしの沈黙が二人を包んだ。静かな時間が流れ、ネイロとメノウの白い裸身が湯気のなかに浮き立っている。
ふと、内心の考えをまとめたようにメノウが口を開いた。
「ネイちゃんは気にし過ぎだと思う。あのときはわたしだっていたし、ネイちゃんだけの責任じゃないよ」
「ネイロは勇者だよ。その力で、みんなを守りたいと思ったのに」
「確かに、ネイちゃんは勇者として未熟なところがあるかもしれない。でも、それは伸びしろがあるってことじゃないかな」
「伸びしろ……。スバル君にも、言われたことがあったな」
ネイロの吐いた溜息が湯気を揺らす。
「まずはジダイを助けることが先決だと思う。きっとジダイも助けが来るのを待っているよ」
「そうだね。……今までのネイロはジダイさんやスバル君に甘えていた気がする。だけど、今度はネイロの力でジダイさんを助ける!」
拳を握って息巻くネイロにメノウが寄り添う。
「そう。その調子。わたしも協力するから」
「ありがとう、メノウちゃん!」
瞳を輝かせるネイロの肩を抱き、メノウが不敵な笑みを漏らす。
「これでネイちゃんの好感度マシマシ。スバル君との点差を埋められたかな」
「点差?」
ネイロの問いをメノウは愛想笑いで誤魔化していた。
短いですが本作で一番重要なシーンです。
でも、本作は健全でR指定の無い、お子様でも安心してお読みいただける作品作りを目指しているため描写はここまでです。
あれ、でも確かクライクライの使い魔を通してジダイが、うっ頭が……




