白銀の星
聖魔の森の奥深く。ずっと前に魔族の追われた最期の地。其処に根付き、今も尚、其の根を広げ続けている。
魔獣を従えていた彼女は、ローブで隠れて良くは見えなかったが、綺麗な白銀の角に透き通る様な深い藍の髪が絡まっていた。収まりきらずはみ出た髪は、まだ昼間なのに、驚くほど眩しく星の様に輝いていた。
古代より人々にも語り継がれている諸星の精と呼ばれる存在がいた。
夜星をそのまま収めた様な髪をした其の者は、生まれたその時から、この世の全ての魔法を記憶し、行使出来ると。
『其れは、魔法に優れた者たちの集団である。
其れは、人の倫理の1歩外側を行く者たちである。
其れは、1つの世代に最も多くの諸星の精を生み出す者たちである。
其れは…世の真理を、自らの手で歪める事が出来得る存在である。
これら全てが当て嵌る者たち、それ即ち魔族である。』
魔法を習って初めに教わった此の魔族の定義文。此れを教わってから、早十余年。今でもよく分からない。分かっていない。分かろうとしていない。
だから、私はあの少女を魔族と仮定し、そして諸星の精と仮定しよう。
諸星の精。彼らは、此の世の全ての魔法を行使し、時には自らの手で生み出す事もすると言う。
皮肉にも、彼らは世界の守護者の愛し子で、私たちみたいな極々一般的な人間では、何人集まろうと倒す事は出来ないのだとか。そんなのもう、国家間の力関係を一瞬で覆す者、欲しくないと願うばかりではないか。
私たちは国の繁栄、拡大より、安寧をとる。其れが人間だ。欲深い者は置いておくとして、それでも大半の者は「現状維持」が先決だ。
出会えた事を幸運と取るか、不幸と取るか。自分は研究者ではないのだから、不幸と取ろうか。
私は恐らく諸星の精だと思われる魔族が今世代にいるとこを知った。
其れは作戦を立てられるという楽観的な考えには繋がらない。
なぜなら、先程も言った通り、葛の凝縮の様な一般人間に、諸星の精なんて者、倒せる筈が無いんだ。例えば倒さないにしても、私たちでは傷1つ付けられるかどうかってところだ。致命傷なんてもってのほか。この男女よりも深い理不尽ともとれる力量差が、世の理なのだ。
諸星の精を生け捕りにして王都に連れ帰れと書かれた、魔族を舐め腐っている上層部の使えない作戦書と、受理されなかった強制連行の受理願書をグシャっと握りしめ、みんなの待つ天幕へ戻った。




