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聖騎士ユリ①

 魔角まかく、一般に角。それは、魔族の持つ魔素が大量に宿る核のこと。いにしえより高価な献上品として人間に重宝されてきた。時には年単位で魔道具を動かせる動力源コアとして使われる事もあった。

 魔族の角は魔素回路の心臓だ。片方でも失えば、どんな強力な魔族でも魔法の威力は弱まってしまう。魔族の魔法は、魔素量に比例して強くなる。魔法が及ぶ範囲も、魔法の威力も、全部鍛錬も大事だが魔素量を増やすことも大切だ。魔法を習い始めれば、魔学基礎として教わることだが、それ以前に魔族の一般常識として一番最初に教わることがある、それは「角を失えば魔族としての役割をこなせなくなる。角は命と同等だ。一片もかけることの無い様に絶対に守れ。」

 人間が角を魔道具の動力源コアとして使うために時折魔族を狩り始め、少しずつ同胞が消えることに怒り、魔族が人間への仕返しを始めた。それでも「出世したい」「金が欲しい」という様々な思いの為、それぞれの私利私欲を満たす為に魔族を狩り、角を得た。その愚かな行為が、約500年にも及ぶ人魔大戦争じんまだいせんそうを引き起こした。

 僅か1万の魔族とそれを遙かに上回る数の兵がいるにも関わらず莫大な被害、犠牲を出し戦いに敗れた人間。兵器を使った戦いは200年程で幕を閉じたが、その後も王国側の契約違反に、民間人の密輸、責任転嫁からのテロ、様々なことが次々に起こり、結局この大戦争の本当の終結には500年も掛かった。 この間に国の王は幾度いくどとなく変わったが、王国暦743年に即位した国王、先々王であるカイロスは特に魔族への偏見が強く、再び戦火を交えそうになった程である。其の為、カイロスの妃、当時の王妃であったリリアンネ様が王国のまつりごとの殆どを行っていた。

 彼女の残した日記に、とある女騎士についてを記しているページがある。第2部隊副隊長、名を___________

 




「ユリさん!!」遠くで私を呼ぶ声が聞こえる。恐らく隊長からの呼び出しだろう。

「はーい、なにー?」声を張り、返事をする。誰かと思ったら騎士団団長の隊の人だった。一体なんだって団長に呼び出されるんだ。何か大きな問題を起こした覚えはないぞ。

「団長、第2部隊副隊長です。失礼いたします。」何もした覚えがないからこそいつも以上に緊張する。

「ああ、入れ。いやあ、急にすまないな。」

「すまないと思うのなら呼び出さないでください。私別に何か問題起こした覚えありませんよ?」無礼など気にせず厭味ったらしく文句を言う。其れが私だ。

「ははは、其れもそうだな。」いや同意するんだ。

「で...本題は?」

「いやな、ちょっと今隊長がいないから副隊長に言おうと思ってな。すまないが...今度の魔族討伐は北部じゃなくて東部に行ってくれないか?」

東部には魔族が沢山住んでいる巨大な森があり、そこでの魔族狩りが後を絶たないため、魔族討伐戦の最前線となっている。そんな場所に行くとなれば、簡単には帰ってこれないだろうな。あーあ、私野営のテント寝心地悪くて嫌いなんだよなぁ...

「『隊長がいないからって副隊長(私)に言わなくても今日の午後には帰ってくるんだけど』って顔してるぞ、お前。」

「そりゃそうですよ。私はあくまで実力上がりの副隊長です。隊長みたいな統率力も書類整理能力もありませんよ。」事実私は剣術と()()()()()(マルチリンガン)の才能があっただけだ。計算表とかほんとに無理。だから、どんなに実力があってもどっかの隊の隊長の役職に就くことができないんだよね。なりたくないけど。

「当たり前だろう。我が国の後継者教育を舐めてもらっては困るよ。ほまれ高き王太子、現王室唯一の聖騎士パラディンだ。」ルカルエン王国の王太子、そして私の上司のラエルさん。実力は確かだし、人望も厚い。現国王とはもう違い過ぎてリリアンネ様の血の濃さが良くわかる。そんな人だ。

「まあ、伯爵令嬢にする教育と同じだったらそれはそれで大変ですけど...ん゛ん、もう面倒くさいのでその書類ください。帰ってきたら隊長に渡しときます。」総団長から書類貰っておさらばしよう。

「そうか、よろしく頼む。」随分とあっさりしているな。

 昼過ぎ、隊長が帰ってきた。

「隊長お帰り~!師匠元気だった?」隊長も呆れてきててもう誰も何も言わない。隊長も気軽に返事をしてくれるから話しやすくてほんとに家よりも居心地がいい。

「ああ、ただいま。流石公爵、幾つになっても強かったよ。」隊長が微笑んだ。なんか珍しいな。

「へえー。やっぱあの人凄いなぁ...あ、そうだ。隊長、団長に討伐先変わったって言われた。はい、書類ねこれ。」

ついでみたいなノリで言わないでくれ。そっちのほうが大事じゃないか。」

「東部の最前線、()()()()に行ってくれだって。ヤダなー、私野営嫌いなんだけど」

「そういうことを言うんじゃない。お前はもう少し副隊長だという自覚を持ち給え。」

「そんな事より出発日って何時なの?」

「そんな事だと!?いや...いい。出発日、は...1週間後だ。団長と副団長も来るらしいぞ。」

「え!?そんな事先刻言われなかったんだけど!?」

「いきなり大声を出すんじゃない。吃驚びっくりするだろう。其れに最前線だぞ、驚くことは何もないだろ。」

「いやいや驚くよ?だって私そんなちみっちい常識教わってないもん!!師匠に文句言って!!」

「わかったわかった。取り敢えず第2部隊の全員に準備しろと通達するからお前も手伝え!」

「はいはーい、りょーかいでーす。」

「返事は短く一回だ!」

2話目からは少々残酷なシーンが度々ありますが、ご了承ください。

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