ポーカーフェイスのチヨちゃんを振り向かせようとした、僕はサトシです
今年もなろラジ大賞、始まりましたね。賑やかし参加です。1000文字の超短編になります。
あれは小学校の入学前。
おニュウのランドセルを背負った僕は、雄叫びをあげていた。
「ワシも小学生じゃー!」
ジャンプしたら、道に捨ててあった缶コーヒーを踏んで滑った。
転んで、膝小僧をすりむいた。痛い。
僕はしょぼくれた。
「大丈夫?」
泣いていたら、同じ幼稚園に通うチヨちゃんが声をかけてくれた。
チヨちゃんはポーカーフェイスな子でお話をしたことはなかった。
チヨちゃんはスカートのポケットからひまわり柄の絆創膏を出して、膝小僧に貼ってくれた。
「痛いのバイバイ」
チヨちゃんを見ていたら、僕の涙はひっこんだ。
僕はチヨちゃんを好きになりました。
あれは小学五年生の頃。
かーちゃんがラブレタァの話をしてくれた。
「おとうったらヤクザみたいな顔をして筆まめだったのよ」
とーちゃんは好きと書いて、かーちゃんに手紙を渡していた。
僕もチヨちゃんに好きじゃあ!と紙に書くことにした。
でも筆圧が強くて、えんぴつの芯が折れた。
六本続けて芯を折った。
僕はしょぼくれた。
ふとテレビを見たら、星座占いの運勢が最下位だった。
ラブレタァを書くのは諦めました。
あれは中学一年生の時。
夏祭りにチヨちゃんを誘おうとして、できなかった。
チヨちゃんが風邪を引いてしまったのだ。
僕はすぐに神社に走り、社務所で叫んだ。
「健康祈願のおふだ、一枚!」
「千円です」
財布には百円しかない。
僕はしょぼくれた。
トボトボと帰り、健康祈願と書いた手紙をチヨちゃんの家のポストに入れた。
チヨちゃんが元気になりますように。
体育祭ではフォークダンスを一緒に踊れますようにと願いました。
あれは高校二年生の時。
チヨちゃんが量子力学なんて、難しいことを言った。
僕はすぐにスマホで検索して、知ったかぶった。
「シュレディンガーの猫のことだな!」
チヨちゃんは「物知りだね」と言ってくれた。
僕は舞い上がって、にゃあと言った。
後で検索しなおしたら、シュレディンガーの猫は難しくて理解できなかった。
チヨちゃんの頭が良くて、しょぼくれました。
高校の卒業式。
僕は決心した。
チヨちゃんに告白する!
屋根裏部屋で練習した台詞を言うんだ!
僕は制服のボタンを漢らしくむしり取った。
チヨちゃんにボタンを差し出す。
「 チェックメイトして! 好き!」
チヨちゃんが笑った。
「サトシくんは私を笑わせる天才だね」
チヨちゃんが頬にキスした。
僕はしょぼくれなかった。
キスが尊すぎて、リーゼントヘアはぐらんぐらん。
僕はヤンキーのサトシです。




