表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
誰もが憧れるこの異世界で、無力な俺は主人公になれない  作者: 赤め卵
三章 一度目を離すだけで、知っている景色は知らないものと化す
93/101

第91話 結末と誘導


 あれから、どうやって戻ったのかは覚えていない。

 気づいたら部屋にいて、ベッドの中に体を落としていた。

 

 体は完全に疲弊しベッドから動くことができなかったが、それでも瞼の裏に残った景色が強烈過ぎてなかなか寝付くことができなかった。

 それでも、いつの間にか眠気が勝り、途中で意識が途切れている。


 あの日にあったことは、思い出したくもない。


 ……思えば、最初は洞窟に探検に行っただけだったのだ。

 

 なのに殺されかけ、死にかけ、殺しかけ……

 こんなんじゃ、元の世界に帰るよりも命を落とす方が早そうだ。


 ようやく意識が覚醒したのをいいことにベッドの上にいながら少し体を動かしてみたが、結果は散々だった。

 足は筋肉痛、腕もなんか痛いし肩は上がらない。

 これでどうやって戦えっていうんだ。

 

「はぁ……」


 広い部屋の端で、静かにため息を吐き出した。

 

 何のやる気も起きない。

 というか、今は外に出たくない。


 まだ、現実を受け止めきれてない。

 起こったことの整理がつかないまま、その問題を先送りにしている。


 かと言って、眠気ももうない。

 寝る気力すらあるか怪しい。


 それでも、この何もしない時間をどうにか過ごしきるために再びベッドに横になった。


 柔らかいシーツが、痛む体を優しく包んでくれる。

 何もやりたくない今の俺にとっては最高の居場所だ。

 

 だが、当然何もしていないと暇になってくる。

 しかし、何も考えずにボーっとしていると無意識にあの地獄を思い出してしまいそうだ。

 そこで、見知った仲の人たちのことを考えることにした。


 ミルナさんは、騎士団の仕事に明け暮れているのだろうか?


 いや、それよりも彼女は大丈夫なのだろうか?

 彼女が倒れてから、会っていない。

 あの騎士はちゃんと彼女を届けてくれたのだろうか?


 無事だといいのだが……


 外界と隔たれているこの部屋の中では、何の情報も入ってこない。

 いっそ出て城の中を探し回ってもいいのだが、確実性に欠ける。

 そもそも、今の俺がどのような扱いになっているのか分からない以上、無闇に外に出たくはない。


 なら、ユカとゲイルは何をしているのだろうか?

 彼らは冒険者だから、後始末をする必要はないはずだが……なんだかんだ周りに優しい彼らのことだ、手伝っているのかもしれない。

 もしくは、もう新しいところへ冒険に出かけているとか。


 最後に残ったのはレイナだ。

 だが、正直彼女は何をしているのか皆目見当もつかない。

 積極的に冒険に行きそうでもないし、金を貰わない限り騎士団を手伝ったりもしなさそうだ。

 案外、俺と同じでベッドで横になっているのか知れない。


 ーードンッ


 その時、扉から鈍い音が響いた。

 反射的に目を向ける。


 すると、今思い浮かべていたレイナが扉を開けていた。

 それも足で。


「まだ寝てんのか。すぐ準備しろ。今すぐ来い」

「え? は? 来いって、どこに?」

「会議室だ。早くしろ」

「え? えぇ……?」


 こうして、俺の平和な一日は早々に崩れ去った。


 

 そういうことで、訳も分からないまま準備を整えているのと、机の上に紙が置いてあるのが見えた。

 レイナが部屋の外で待っているのをいいことに、その紙に目を通す。


『やっほー、ミカワくん。 少しは眠れた? 私が倒れた時に運んでくれてありがとね! おかげでもう元気いっぱいだから心配しないで。 それでここからが本題なんだけど、明日の午前中に緊急会議的なものが行われるらしいから、ミカワくんにも来てくれないかな? 当日はレイナが迎えに行くから心配しないで待っててね。 じゃー、よろしく!   ミルナ・ラーレスク』


 何というか、読んでいるとミルナさんの声が聞こえてくるほどに彼女の文だ。


 あれ? っていうか明日って書いてあるけど、なんか時間噛み合わなくないか?


 ……もしかして、俺って丸一日寝てたのか?

 あれ? まじか……

 でもそうとしか考えられないないな。


 なんか、少し損した気分だ。

 

 そんな衝撃な事実を知りながらも、準備を終わらせて部屋を後にする。

 

「ケイト様ですね。おはようございます。会議室にて王様がお待ちです」

「お、おはようございます」


 びっくりした。

 まさか部屋の前に見知らぬ騎士がいたとは。

 護衛だろうか?


 大丈夫だよな? 挨拶は間違ってなかったよな?


「行くぞ」


 一度冷静になり、先を歩くレイナに付いて行く。

 だが、一歩一歩足を進めるうちに不安は大きくなっていった。

 少し進んだ時には冷静さなど残っておらず、会話で気を紛らわす。


「そもそも、俺はなんでその会議に呼ばれたんだ?」

「重要参考人なんだと。特にそっちはミルナの奴と行動してた上に、逃げる何者かの存在を見てるだろ」

「た、確かに」

「安心しろ。見たことを正直に話せばいいだけだ」

「本当に? 何か言い間違えて失礼だとか言われたりしない?」

「さぁな」


 不安だ。

 不安しかない。


 レイナも詳しくは把握してない感じだし、また処刑されそうになったりしないよな?


 そんな俺の不安もよそに、レイナは進んでいく。

 大扉の前に並ぶ騎士団に説明をし、ついに会議室の全貌が見えた。

 

 まず、目に入ったのは長方形の大きな机。

 そして、それをコの字で囲むように人が座っていた。


 左には奥から騎士団のセレシアさん、謎の騎士団長、そして俺の知らない騎士が3人座っている。

 対して、左には知らない顔ぶれが並んでーーいや、1人だけ知ってる顔があった。

 この世界来て割と最初の方に出会った、悪口ばかり言ってくるデブの貴族がいた。

 ……嫌だなぁ。


 そして最後に残った中央には、宰相であるセンドロバートさん、ミルナさん、そしてその2人に挟まれるように国王であるグレイルが座っていた。


 かなりすごい顔ぶれだ。

 俺の場違い感が半端ない。


「失礼します」

「し、失礼します」


 会議室に入った瞬間、レイナが言う。

 慌てて続いて、どうにか口にした。


 何か言わなきゃいけないなら先に説明してくれよ……。

 だが、とりあえず入室まではクリアできたらしい。


「ったく、遅いんだよ! これだから冒険者風情は」

「おいおっさん、国王の前なんだ、少しは黙ったらどうだ?」


 俺の挨拶に気に入らなかったのか、空いてる席に座った瞬間にデブ貴族がなんか言ってきたが、騎士団長に釘を刺されていた。

 ナイスプレイ、団長様!


「さ、これでメンバーはそろったな。では始めるとしよう。この場では、首謀者及び共犯者について話し合いたい。 まずは事件の概要をーーセレシア・アーネット!」

「はい。まず、今回使用された魔法は、禁術ーー蘇生魔法です。首謀者は墓地全体を範囲にその魔法を使用したと思われます。また、復活されたゾンビについては、完全に処理が完了したことが確認されました」


 その概要を聞き、場の雰囲気が少し暗くなった。

 本題から外れるのか、被害の報告はされなかったものの、相当なものになったはずだ。

 だが、最初にその場の沈黙を破ったのが宰相であるセンドロバート・フォルゲルツだった。


「その首謀者の狙いは何なのでしょうねえ。多くの死体がある墓地、というのは納得がいきます。しかし、だとすると国の機関からは距離がありすぎる。騎士団長、それについて今のところ有力な可能性はありますか?」

「結論から言うと、さっぱり分からねぇな。あんたの言う通り、国家転覆みたいなデカいことをするつもりだったんなら、もっと手の込んだことをするはずだ。なにより、それ以外の目的があったとすれば、わざわざ禁術を使う意味がねぇ。だから考えられる可能性は2つだ。裏で何か大きいことを企んでるクソみたいな輩がいるか、ーーどっかの馬鹿がアホなことをやらかしたかだ」

「そんなことありえるんですか!? 前者ならまだしも、そんな一般人が禁術を入手できるわけありません!」

「流出した禁術が今の時点でどこにあるかわからない以上、全ての可能性を考慮しとくべきだろうが。……それほどに馬鹿げた事件なんだよ。これは」

「そんな……」


 団長の言葉に騎士団の1人が異論を立てたが、あっさりと打ち破られてしまった。

 まぁ、気持ちはわかる。

 ただのお遊びで何人もの命が散ったなど、考えたくない。


「それに、首謀者はもう死んでるんだ。どう頑張ったってもう目的も動機もわかんねぇよ」

「え!? そんなはずっ!!」


 思わず立ち上がって、叫ぶように否定してしまった。


 ーーやってしまった。


 感情のままに俺の主張をしてしまった。

 どうしよう。

 とりあえず座るか? それとも謝るべきなのか?


「そう、一番の疑問はそこなんだ。一度席に着け、ミカワ・ケイト。まずは首謀者についてをミルナ・ラーレスクに説明してもらおう」


 ……良かった。グレイルが助け舟を出してくれた。


 それに、今のを不快に思っている人も1人を除いてほとんどいないようで、何なら俺の意見に賛同しているのか、頷いて同意を得ててくれた人まで何人かいた。

 だが、首謀者が死んだ? しかもその主張をしたのがミルナさん? 


 ……どういうことだ?

 

「私の口から改めて説明をしますが、首謀者は死亡しました。これに間違いはありません」

「なら、彼らが追っていた謎の人物は何だったんだ?」

「それについては未だわかっていませんが、後に詳しく説明されます。話を戻しますが、皆さんは魔法の代償について御存知でしょうか?」


 代償?

 この世界では日常生活にすら使用されてる魔法にそんな物あるのか?


「普段使われている魔法程度では、代償は基本的に存在しない。だが、それが禁術レベルのデカい魔法に鳴ると話が別。そういうことだろ?」

「その通りです。具体的な代償については魔法によって異なりますが、今回のような生命に関わる魔法になれば、どんなに軽くても魔法を使った当事者は確実に死亡します」

「そんな! なら死体は見つかったのか!?」

「残念ながら、死体は見つかっていません。ですがーー死んだ痕跡なら発見しました」

「というと?」

「はい。……今回のように魔法の代償で命を落とした場合、肉体や骨は完全に溶けて液体となります。そして、その液体も時間が経過すると、完全にに蒸発してこの世界から消えます」


 その言葉に、ざわついた。

 かという俺も、その光景がフラッシュバックする。


 液体。

 謎だった刺激臭のする赤黒い液体。


 俺は、それを見た。

 しかも、ミルナさんはそれを見てーー


 ーーっ!!


 奥から込み上げてくる気持ち悪さを必死に我慢する。

 口元に手をやり、必死に正常心を保った。

 

 慣れてしまったのか、もう胃酸をを吐き出すことはなかったものの、不快な気持ち悪さを覚えた。


「そして、私とミカワくんは、その液体の状態を目撃しました。まちがいありません」

「本当か! ケイト殿!!」


 一気に、俺の方に注目が集まった。

 それに声を発することなくうなずく。


 まだ、気持ち悪さが収まっていないからだ。


「彼は吐き気を覚え、ラーレスクさんはフラッシュバックで気を失った。2人の反応を見るに間違いはないでしょう」


 その言葉に少し引っかかった。

 ミルナさんは、どうして気絶したんだ?

 それに、フラッシュバックってーーー


 だが、それを聞くには場が違いすぎる。

 そもまま、話題は次へと移っていった。


「さて、話題にも挙がった謎の共犯者についてだがーーレイナ説明を頼む」

「……はい。まず、最初に視界に入ったのはーー」



 そこから先は特に変わったこともなく、俺とレイナがあの逃亡した人物についての説明をし、目的やきっかけ、具体的な対策などが話し合われて終わった。


 半分ぐらい俺は必要ではなかったような気もしたが、この世界へ来る原因となった転移魔法もガッツリ関わっていそうだったため、決して無駄ではなかっただろう。

 おかげで、魔法についての知識や犯人の特徴を得ることができた。


 だが、少し不可解だったのは、その共犯だと思われた人物の話をしている時だけ、王であるグレイルは終始なにかについて考えているようだった。

 まるで、別の可能性をずっと模索しているように……。


 そして、結局全て終わる頃には完全にお昼時を過ぎていた。


 レイナは会議が終わると同時にさっさと何処かへ行ってしまったしーー俺はどうしよう。

 飲食できる場所って、近くにどこかあったけ?

 というか、お金あったよな?


 ……しょうがない、部屋にある通話鏡でレイナを呼び戻すか。


「やっほー、元気?」

「わ!?」


 完全にご飯のことだけを考えていたら、後ろからいきなり声をかけられた。


「ごめんごめん、驚かせるつもりはなかったんだけどなー」

「ところで、ミルナさんはもうグレイル王と一緒に行動しなくてもいいんですか?」

「うん。王様が、あとはこっちでやっておくって。……そんなことよりミカワくん、話があるんだけど」

「な、なんでしょうか?」


「私と一緒に、帝国に行かない?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ