外伝 王座にて
ミルナとグレイルの会話です。
最後に報告があります。
あの革命から、10年物月日が流れた。
未だに自らが貴族だと言い張るものも一定数いるが、そんな例外を除き誰もが貴族中心の世の中ではなくなったことを認知している。
時代が変わったことは、誰の目にも明らかであった。
貴族政治から、民主主義へとーー
確かに、能力の高い貴族というものももちろんいた。
だが、ほとんどの貴族は親族の身分を受け継いだだけの未熟者であり、言ってしまえばだれもが子供のままだった。
そのため、当然ながらそれらによって行われる政治なんてものは腐る。
だからこそ、ミルナ・ラーレスクは、その革命にかなり肯定的だ。
ーー否、この国ーーレ戦ブルクに住むほとんどの国民が肯定的だった。
もとい、彼女は元々貴族であった。
だが、彼女はその時の記憶をほとんど保持していない。
それが魔法の作用によるものなのか、ただ単に押さな過ぎたのかは分からないが。
少なくとも、彼女は優秀であった。
親の死後も自らのやるべきことを見つけ出し、実行し、実現した。
そして、その行いが報われ、王の目に付いた結果騎士団に加入した。
それも、王の側近という役職で。
ミルナだけではない。
腐りきった政治を完全に腐りきらないで動かしていた極少数の貴族たちも、また新しい身分をもらい、それぞれ城で働いている。
だからこそーー
「王様。やっぱりここにいるべきなのは私じゃなないと思うんですが……」
「どうした? この仕事が嫌になったのか?」
「いや……ここにいさせてもらえてるのは光栄に思ってます。けど、やっぱ私じゃないかなーって思って……」
その言葉は、まぎれもなく事実であった。
彼女自身、この仕事を管と思ったことは一度もない。
「そうか」
昼過ぎる王室。
その玉座に座るのは、この国のまぎれもない国王ーーグレイル・シェーテ・アレクシスだ。
貴族には、ファーストネームとファミリーネームの間に身分を加えることができた。
これにより、その名前をより高価なものにするという狙いがあった。
だが、今この国内でその方式を取っているのは王であるグレイルだけになる。
例え貴族制度が無くなったとしても、王だけは常に上の立場にいなくてはならないためだ。
そんなグレイルは、王座の前に一時的に置かれている机のどっさりと置かれた大量の書類に目を通しながら、玉座の隣に立ってくれているミルナに向かって答える。
「人は誰だって完璧じゃない。いつだって失敗をする。……俺だって同じことだ」
「でも、私は王様が失敗してるとこ、見たことないですよ?」
「そう簡単に失敗できないからな。この立場になってから、石を決定させるのは俺柄だけではなくなった。失敗していないのは、俺以外の頑張りのおかげだ。ミルナ含めてな」
「……王様がそう言ってくてるなら、良かったです」
「ま、そういうことだ。この座に就く前は、俺だって失敗しかしてこなかった。それこそ、この座に俺が座っていること自体、失敗した結果だ」
「ーーえっ!?」
「初耳か? ま、言ってこなかったから無理もないな」
「ここでそれを言うってことは、聞かせてくれるんですか?」
ミルナがそう言うと、グレイルは手に持っていた書類を一度机へと置き、遠い目で正面を向く。
そして短く息を吐いてから、ゆっくりと口を開いた。
「俺には、この世で失敗することが無いだろうと思う人物が3人いる。ーーいや、もしかすると2人かもしれないがな」
「…………」
「ま、今言えるのはこれだけだ」
「えー、何ですかそれ? 何も分からないし、それにこたえにもなってないし」
「機会があれば、またいつか言うさ」
「またそれですかー? もう聞き飽きましたよ」
「なにせ、俺はこういう立場だからな」
「はー、わかりました。……で、結局その3人って誰なんですか? 1人は隣の皇帝としてー」
「ヒントは出した。だからこれ以上は後はお前が考えろ」
「いつか教えてくださいよ? 謎は謎のままが1番気になるんですから」
「……ところで、腕の怪我は大丈夫だったか? かなり血が出ていたと聞いたが」
「いい加減、その話題逸らしもやめて欲しいんですけど」
「俺だって心配するんだが」
「私の魔法、知ってるくせに?」
「それって、魔法無効化中でも有効なのか?」
「残念ながらそーらしいですよ。今回も何も感じませんでしたから」
「そうか」
それから、しばらくの沈黙がながれる。
互いの触れたくないことに関係してしまうのか、それすらもわからないままに。
だが、それは単なる時間稼ぎにしかならない。
少なくとも今日中には、話の続きをしなければならないのだ。
この部屋にいる2人の行動には、国がかかっている部分もある。
そして、それを誰よりも理解しているのがここにいる2人だ。
当然、この沈黙を長く保つこともなく、話を逸らすことももうしない。
「ミカワ君。……これから殺したりしませんよね?」
「そうだな、ミルナのお気に入りをそう簡単にーー」
「まじめに答えてくださいよっ!! 一昨日、私が止めなかったら、ミカワ君はーー」
2日前、セレシアによって連れてこられた少年ーーミカワケイト。
彼の存在はあまりにも異質で、ちょうど良すぎるタイミングだった。
そもそも、彼が見つかったエトレイク森林深部というのは、立ち入りを禁止している上に、実際足を踏み入れたら生きて帰ってこれるかもわからない場所だ。
そんな中で人が見つかるなど、どう考えてもあり得なかった。
「なら、まじめに答えるぞ?」
突然、グレイルはミルナに向かい強い口調でそう言った。
ミルナを感情的にしないために。
そして、やはりゆっくりと話し出す。
「確かに、殺しても良かった。……いや、本来なら殺すべきなんだろう。実際、エルドなら殺せと言うだろうな」
「じゃあ、どうして……」
「それを聞く意味はあるのか? 実際俺は殺す決断はしなかった。聞いてもただ気分が悪くなるだけのはずだ」
「王様がどうしてその決断をしたのか知っておかないと、またミカワ君を殺そうとするかもしれないからですよ」
「……呆れるぞ?」
「いつものことじゃないですか」
「失望するぞ?」
「王様はいつだってすごいですって。話を聞いたぐらいで失望しません」
「なら、その前に聞いておこう。ミカワケイトがここへ転移してきた、または転移されてきた目的は何だと思う?」
その質問をされ、ミルナは少し考える。
そもそも、彼女はミカワケイトが殺される可能性が高いということは分かっていた。
だからこそ、意味のない静止をグレイルに投げかけたのだがーー返ってきた言葉は、全く逆だった。
「私たち騎士団が森に調査をしに行くっというのは外部には漏れていないはずです。そこから察すると、やはり城の内部に潜伏している他国のスパイとかでしょうか?」
「ま、まず行きつく結論はそこになるよな。けど、それならわざわざエトレイク森林深部に彼を放しておく理由が無い。よって、何らかの魔法災害に巻き込まれたという線が一番強くなる」
「でも、それじゃミカワ君が生きてあんなところにいるわけーー」
「彼は、魔方陣でワープしてきたと言ってたな?」
「はい……、だとしても、それと禁術魔法の転移魔法を結びつけるのはいくら何でもーー」
「お前は、どうしてもその可能性を否定したいんだな」
「あんなもの、半分以上は使っただけで死ぬんですよ? そんなものがまた使われることがあるなんて……」
ミルナが言ったとおり、禁術魔法の半分以上は、使用者の命を削る。
寿命が減るなど、そんな甘いものではなく、待っているのは確実な死だ。
だからこそ、この世の理屈すらも上回る禁忌が解き放たれる。
その結果、唯一の魔法無効のこの場所に、そのほとんどが収められているわけだ。
もちろん、その魔法に手を出したどころか、その書庫の扉を開けた時点でもありとあらゆる条約や法律に触れる。
それを知っているからこそ、特に2人にとって過去にあった魔法の流出という大きすぎる事件の負担は計り知れない。
話題に上がった、転移魔法のそのうちの一つだ。
「ミルナ、彼が言った別世界、二ホンというのはどれぐらい信用できる?」
「そーですね。魔法がない世界っていう考えたこともないようなことを実際に言われたら、帝国のスパイが新しく大胆な嘘をついてきたって思いますけど」
「なるほど。それを聞いたうえで俺の見解を話すが、彼の言っていることは、ほぼ間違えなく事実だ」
「その根拠は?」
「彼の表情は、作られたものではなかった。さらに、敬語を使う対象も少しこことは少しズレている。他にも細かい動作そのものが、魔法に頼っていない動きだ。だから彼の言っていることは本当だな」
その言葉を聞いて、ミルナは再び考え込む。
言われてみれば、確かにこの国、この世界では敬語は目上の人物に対して使うものだ。
だが、逆に言うとそれ以外の人にはほとんど敬語なんて使わない。
貴族社会だった時、貴族以外に敬語は使ってはいけないという暗黙の緑化委があったからか、初対面の人にも敬語を使うことはまれだ。
しかも、彼は騎士団のことも、そもそもこの国のことをほとんど知らない中でも全員に敬語を使った。
普通なら、自分のことを1度でも殺そうとしたセレしあ相手に敬語を使うなど、普通では考えられない。異常だ。
それに加え、魔法がない世界という信憑性も高い。
だが、逆にその可能性を通してしまえば、禁術が使われたということに他ならなくなってしまう。
「だからーー」
そんな彼女の思考を読んだかのように、後へ綱がる言葉をグレイルは言い出した。
「彼が俺たちに何かをもたらすのではなく、彼という存在が来たことに意味があると俺は思ってる」
「つまり、ミカワ君がこの世界に来たことが何かの合図になる……みたいな感じですか?」
「そうだ。そして、それが目的なら今から彼を殺したところでもうすでに手遅れだ。むしろ、状況が悪化する危険すらある」
「……とりあえず、ミカワ君が殺されない理由は分かりましたけど、それってまだ可能性の段階だし、それに状況が悪化ってーー」
ミルナは、王であるグレイルの推測を聞いてもまだ納得できない部分があった。
グレイルの様子を見るに、彼が見ているのは推測ではなく確信だ。
だが、彼女は未だに推測の域を抜け出せない。
この国の責任を担っているのならば、なおさらそんな不安要素のままにはしておけないはずだ。
「ーーやはりお前は鋭いな」
「何年隣にいるとおもってるんですかー。まだ話逸らされたままですし」
「なんのことだかな」
「まだ私、呆れも失望もしてませんよ?」
「……わかったよ。そんなに聞きたいなら話してやる。だが他言したらーーお前を殺す」
「その辺、いつも通りですね」
「俺だって人を殺したくない。だから、他言されたら俺の判断ミスだ。その時は責任を取らないとな」
「私は王様に人を殺させないし、自己犠牲もさせませんよ?」
「なら、頼むぞ」
「りょーかいです」
ミルナのその言葉が終わってすぐ、グレイルは口を開く。
そこから出される声は、先ほどよりも強張っているように感じられる。
それを悟り、ミルナにも自然と緊張が現れた。
「城の中で一時期話題になった予言の話は知ってるか?」
「あー、あの貴族がしてたやつですか?」
「それだ。まさかあの情報を盗まれるとは思ってなかったがな」
「え? あの噂って本当のことだったんですか!?」
「……今ではもう失われたが、禁術魔法の中に予言魔法というのがあったらしい。その制度は恐ろしく高く、いろいろなことに利用されていたぐらいだ」
ミルナですらも、聞いたことのない魔法。
おそらく、独裁的な政治をしてその結果革命で命を落としたとされる前国王の話だ。
聞いたことによると、グレイルは昔貴族だったらしいが……だとしてもどうしてそんな情報を知っているのだろうか?
革命を引き起こした張本人は、彼だったはずなのに。
そんなミルナに生まれた疑問が解消されることもなく、話は進んでいく。
予言魔法の詳細に、今では存在しないということ。
そして何よりーー
「世界が危機に陥ったとき、黒髪の人物が運命を変えるーーという内容だ」
「それが、ミカワ君を殺さない理由ですか?」
「そうだ」
「でも、いくら珍しいとはいえ、黒髪の人なんて探せばいますよ」
「その通りだ」
「なら、どうしてミカワ君を?」
「俺だって、確証は持てない。だから、また確かめるんだ」
「だから、レイナと一緒に行動させたんですか?」
「ああ。お前も、レイナと行動させたかったんだろ?」
「……レイナは、確かに強い。私よりもずっと。ーーでも、あの強さは良い強さじゃない。いつか身を亡ぼします」
「それを彼に止めてほしいのか」
「はい。ミカワ君だったら、止めてくれる気がするんです」
「結局、俺もお前も、あの少年に期待してるということか」
「まー、そうなりますね」
「どちらにせよ、結果は帰ってくればわかることだ」
「レイナと第1洞窟に行ったのが2日前ってことは、もーすぐ帰ってきますね」
ミルナがそう言った直後、王室の大きすぎる扉が強くノックされた。
「入れ」
「噂をすれば、ですかね?」
そんな音に対し、グレイルは短く告げ、ミルナは自らの予想を口にする。
だが、扉を叩いた人物は、全くの予想外な人物だった。
全身に纏った銀色の鎧に、肩についた国の紋章。
間違いなく、王国騎士団の1人だ。
その人物が、呼吸を乱し足を震わせながら王室へと入ってくる。
そして、数歩歩いたところで立ち止まり、敬礼の姿勢になった。
「ほ、報告……ゴホッゴホッ」
「落ち着け、ゆっくりでいい。何があった?」
その騎士団の1人は、咳をしながらも枯れた声で続きを言う。
「南にある墓所……にて、ーー死者が甦り、人々を……襲っています!」
その報告のすぐ直後、近くで巨大な爆発音がした。
振動で王室のシャンデリアが大きく揺れ、机に置いてあった書類の一部が地面へ落ちる。
その緊急の報告に、ミルナはまるで心当たりがない。
そもそも、この状況をうまく飲み込みきれていない。
だが、この国の王ーーグレイル・シェーテ・アレクシスには、確かな心当たりがあった。
失われた禁術魔法の中の1つ。『死者蘇生』
この騎士による報告は、紛れもなくそれを指していた。
どうもこんにちわ! 赤め卵と申します。
まずはじめに、ここまで読んでくださり本っ当にありがとうございます!
ブックマークや評価もいただいてしまい、嬉しい限りです。
さて、そろそろ今回がどうして外伝になってるのかを説明しないといけませんね……
更新を待ってくださっている皆様には申し訳ないのですが、しばらくお休みさせていただきます。
理由は、プロフィールにも書いてある通り受験があるからです。
この話のことを覚えている必要は全くありませんが、時が経った時に「そういえばそんなのもあったなー」と、思い出してくれるとありがたいです。
改めて、この作品をここまで読んでくださりありがとうございました!
ここで少しだけ休む詳細とかを書こうと思いますが、興味ない人はもう閉じてもらっても構いません。
ここからは本当に駄文になります。
…………
…………
…………
果たして、ここまで目を通してくれる人がいるのかはわかりませんが、一応今の気持ちを綴っておこうと思います。
まず、ここまで見てくださっている皆さんならお分かりだと思いますが、そもそも現時点の投稿頻度が終わっています。
塾や学校や勉強など、言い訳はいくらでもできますがそれでも全然書ききれなかったのは自分の力不足です。
また、時間に追われる影響で質も下がっていたり、妥協してしまっているところが増えてしまった部分もあります。
そもそも、執筆と勉強を両立というのはなかなか難しいものでした。
このままでは楽しくできることから時間に追われて仕方がなくやるという最悪な方向へ向かっていきそうだったというのも休む決断をした1つです。
初めに書いていた頃は、今の時期までには4章か5章あたりまでは行ってしっかりとキリのいいところまで書いて休もうと思っていたものですが、現実はそんな簡単にはいかないものですね。
思い知らされました。
というわけで、受験が終わるまではしっかりと勉強に専念しようと思います。
そして、終わったら改めてこの作品に向き合えるように……頑張ります。
最後にこれだけは書き残します。
受験が終わったら絶対に戻ってきます。
まだ自分は、書きたいところをかけていません。(そもそも、序章の伏線回収すらできていない)
なので、交通事故にでも遭わない限り、また再会しますので再び見かけた際は思い出してもらえると嬉しいです。
それでは! 受験してきます!
あ、ちなみに受験科目は理系なので、文章力もこれ以上酷くならないように努力いたします……。




