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誰もが憧れるこの異世界で、無力な俺は主人公になれない  作者: 赤め卵
一章 別れがあるということは、出会いだってある
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第26話 報告と確認


 再び頭をフル回転させ、これまでの自身の行いを振り返る。

 数々の心当たりがあるが、いったいどれが原因なのか。

 ーーあるいは、そのすべてか。


 考えれば考えるほどに背筋に寒気が走っていく。


「すまない、業務中だが、ミルナも抜けてくれるか?」

「りょーかいしました。 じゃー、ミカワ君、ごきげんよう!」


 そう言い残して、レイナが開けっ放しにしていった扉を笑顔で潜り抜けていった。

 

 さて、これで助けてくれそうな人はいなくなり、正真正銘国の最高権力者と二人っきりになれたわけだ。

 果たして俺は生きて戻れるのだろうか?


 物騒な不安が頭を過るが、それの思考を最初に断ち切ったのは王であるグレイルだった。


「そう緊張しなくても大丈夫だぞ? ただ、ケイトがこの世界へ来た時のことを正確に教えてほしいんだ。アーネットから断片的に聞いてはいるが……どうしても疑問にあるところがあってな」


 その言葉を聞いて、胸を撫で下ろした。

 どうやら、怒られたりはしないらしい。


「了解です」

「そう畏まらなくても大丈夫だ。今は業務とは関係ないからな。友達感覚でテキトーに話してくれ」


 そんなことは、初めてここに連れてこられた時にも似たようなことを聞いた。

 ミルナといい、この国はこんなので大丈夫なのか? と、思わず疑問が生まれる反面、もしかすると何も分からない俺に配慮してくれてるのかもしれない。

 というか、多分そうだろう。


「まず、お前がいた国ーー日本というところについて教えてほしい」

「えっと……、日本は世界地図から見ると太平洋にある島国なんですけど」

「太平洋とは? 海洋の名前みたいだがーー知らないな」

「ですよね……。結構名前は知れ渡ってると思うんですが」

「それが俺の知識不足ならしっかりと謝罪するんだがーーやはり、世界が違う可能性の方が高いな。レセンブルグもかなり名の知れた大国のはずだが、お前も知らないなら尚更だ」


 太平洋すら知れていない国ーーというのは、流石にありえない。

 やっぱり、俺が異世界に来たのは紛れもない事実だ。

 それを示すには、もう証拠が揃いすぎている。


「一応、確認はしておきたい。日本とはどのような国だ? 別の名で知れ渡っている可能性も捨てきれない」


 なるほど。

 ないとは思うが、そう言った視点にも気づけるのはすごい。

 普通なら、この時点で異世界と決定してしまうところだ。


 で、そうなった時に次なる問題が出てくる。


 ーーあれ、日本って、どんな国だ?


 アニメと漫画と……というのは流石に通じるはずがない。

 そもそも、こういった質問をするのは、日本について基本的な知識ぐらいは持ち合わせてる人達だ。

 何も知られてない場合、どう説明すればいいんだ?


 疑問を抱きながらも、口を開いて無理やり言葉を出していく。


「とりあえず、魔法が使えなくて……いや、魔法が使えないのは世界共通か。ーー地球っていう惑星に位置する世界で、経済はそれなりに発展してて、金銭の単位は円です」

「魔法が使えないのは、1つの国家じゃなく、世界全体なのか?」

「そうですね。そういうのはおとぎ話とかの空想でしたね」


 俺がそう答えると、小さく何かを呟いて何かを考え始めた。

 まだ、ほとんど断片的にしか話していないが、何かがつながったのだろうか。


 待つこと数十秒。

 寄りかかっていた玉座の背もたれから背中を離し、再び口を開いた。


「もし、その互いの認識が正しいなら、世界の可能性が高い。確か、魔法陣の影響で転移したので間違いはないか?」

「間違いないです」

「ちなみに、魔法陣で飛ばされた後に変わったところは無かったか?」

「そうですね……、カバンが無くなってたぐらいですね」

「そうか……濡れてはいなかったのか……。では、ここの環境と、地球ーー日本の環境はどうだ? 似ていたりはするか?」


 小声で聞こえた、濡れていたという単語が気になるが、考える暇もなく質問が押し寄せて来る。


 やはり、こういった質問は難しい。

 日本の環境……あまり考えたことがない。

 はたして、温暖や四季という言葉が通じるのだろうか?

 それでも、試す価値はある。


「まず、地球全体で見ると砂漠や森があったり……あと、70%ぐらい海らしいです。で、日本はその中でも温暖で式があります」

「……なるほどな、四季か。少なくとも、レセンブルクとは多少異なっているな。……だが、世界全体で見てみると、世界的に大きな違いはなさそうだ」


 そして、次は顎に手を当てたまま口を開く。


「一見、別世界に見えるが、例えば未来から過去に送られてきたのだとしたら……」


 そこまで言われたところで、当のグレイルが言葉を詰まらせた。

 確かに、考えもしなかったが、タイムスリップしたという可能性も……あるにはあるのか?


 今では、都市伝説で過去に核戦争があったのではないかとささやかれているほどだ。

 過去には魔法が無かったとも限らないのでは?


 時間を超えていたとしたら、いよいよ帰れる手段はーー

 根拠もない推測が、不安を感じさせる材料としては十分すぎる。

 必死になって、浅い知識の中を探り、否定する根拠を引っ張り出そうとするが……。


 そこで、昨日目に焼き付いた光景が浮かんだ。

 夜という闇の世界を照らすーー月ではない別の衛星を。


「月が……いや、星が違います。もし、タイムスリップしていたなら、見える星は同じのはずですがーーこの世界では違います!」

「そうか、星か……。それは盲点だったな」


 直前まで抱いていた不安が消え去り、一瞬の安堵に包まれる。

 しかし、それは可能性が一つ消え去っただけであり、まだ何も解決していない。

 

 そのことに気づいてしまい、上げていた首が自然と落ちていくが……


「長く質問させて悪かったな。正直、まだ聞きたいことは山ほどあるがーーそれはいささか不公平だからな」


 その声とともに、次はひじ掛けに置いていた腕をまっすぐ前へ突き出した。

 そして、ピースのようなポーズを取る。

 それに反応し、自然と視線が元の場所へと戻った。


「例え、この世界がどこだろうと、いつだろうと、考えられるのは2つーー誰かが意図的に仕組んだものか……はたまた、異物による自然現象かだ」

「それは……?」

「まず、自然的に起きるとは考えにくい。つまり、何かが、あるいは誰かがきっかけを作ったはずだ。 この世界ーー特にえとレイク森林周辺の遺跡から見つかる異物には、いまだ分からないままのことも多い。そのどれか一つが作動したということが考えられる。そして、次に考えられるのがーー」

「魔法……ですか?」

「ケイトの住んでいた世界の文明がどういったものなのかは分からないが、その可能性も十分高い。ーー詳しくは話せないが、あいにく、心当たりがないわけでもないんだ」

「じゃあ!」

「だが、その行方も、主犯すらもわかっていないんだ。しかも、世界観を超えるというのは、それこそ前例がない」

「…………。」

「それでも、大規模な魔法には変わらないはずだ。絶対にボロが出る」


 正直、希望的な推測だ。

 相手側がボロを出してくれない限り、俺にはどうすることもできなくてーー


「戻りたいんだろ? 元の世界に。俺たちは最大限、そのサポートをすると約束しよう」


 その言葉は、強い決意に満ちていた。

 根拠もなく、不確かなことだが……それでも、どこか頼れる、そんな力強さが伝わってくる。


「これは、場合によっては世界の未来にまつわるほどの出来事だ。2つの別の世界が交差するのは、本来あってはならないはずだ。本来なら、国家だけじゃなく、国々で解決しないといけないレベルだが……事が事だからな」

「思ったより大ごとですね」

「そこでだ、ケイト。お前には遺跡の方を頼みたい。レイナの奴にも俺から頼んでおく」


 根拠もなく、不確かなことだが、グレイルは約束だとーーそう言い切った。

 彼は、所詮他人事だと割り切ってしまうこともできたはずなのに、国のこと、そして俺のことをまで考えて、約束までしてくれた。

 ーーなら、その当事者の俺がやらないで……どうする。


「俺も、やれることをやっていきます!」


 彼をまねて、俺も勢いに乗っかり宣言する。

 

 俺は、必ずあの場所へーー悠菜のところに戻ってやる。


「おう、期待してるぞ。なにせ、決闘でレイナに勝ったぐらいだからな」

「……へ?」

「あれ!?」


 一瞬、ありえないことを言われたようだったが、言われてみると、1回勝っている。

 情報源はーー間違いなくミルナだろう。

 だが、あれは偶然も偶然でーー


「いや、そうだな。もしも、それがまぐれだったとしても、セレシアの魔法から逃げ切り、レイナに決闘で勝ったんだ。その判断力、そして思考が役に立つ」


 まるで、俺の考えていたことがわかっていたかのように、言ってきた。

 それが完全に正しいとは思わないが、その言葉を信じよう。


「ありがとうございます」

「こちらこそ、時間を取らせて悪かったな。また話をしよう」


 その言葉が終わりの合図となり、この国の最高権力者に背を向ける。

 そして、扉の手前まできた所でーー


「ああ見えて、レイナは悪い奴じゃないんだ。気を悪くしないでくれ」

「それって……」


 振り返って、詳しく聞きたかった。

 だが、それは人から聞くようなことではない。


 ーーそれに、俺が次にやるべきことは、他にある。


 どうにか踏みとどまり、失礼しましたーーという言葉と共に廊下へと足を出す。


 そうして、幕を閉じた。


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