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神様の剣と懲りない悪党  作者: すたりむ
二日目:悪党と帰らずの草原
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二日目(19):悪党、脱出成功

「っだあああああ!」


 ずしゃあああ、と、俺たちの背後の地面が崩落していった。


「か、間一髪……やばかった……」

「まだだ、小僧!」

「え?」


 言葉に振り向くと、そこに崩落に巻き込まれかけ、かろうじて地面の縁に手をひっかけたサフィートがいた。


「私がまだ助かっておらん! 気を抜くな!」

「いや、さすがにそこからは自分でなんとかしろよ」

「必死で走ったから腰がもうダメなのだ! 頼む!」

「しょうがねーなー……よっと」


 言いながら、俺はマイマイの身体を地面に置き、サフィートの手を引き上げようとしたが、


「おいしょっと」

「うぶ!?」


 後ろからにゅっと生えたぶっとい手が、サフィートの身体を軽々と抱え上げた。


「……バグルル?」

「おう、頼れるバグルルさんだ。子守ご苦労さん」


 わはは、とバグルルは笑って、片手でサフィートを抱え上げながら親指を立てた。


「おい、これは何事だ? 説明できるか、ライ?」


 言ったのはコゴネル。他の魔人も、この騒動になんだなんだと姿を現していた。

 俺は端的に、


「簡単に言うと、マイマイと一緒に草原の遺跡を探索してたら、いろいろあって弧竜が遺跡をぶっ壊した」

「本当に簡単だな! おいハルカ、これどうなってんだ! 弧竜って草原は飛んでたけど、地下の遺跡に攻撃かますなんてのは聞いてないぞ!」

「戦の風が吹いています」

「こういうときくらい直接答えろよキメ顔ポンコツ魔女!」

「あーこらこら、喧嘩しない」


 言いながら現れたセンエイは、ふとこちらを見てにかっと笑った。


「ようライくん、なんでまだ死んでないの?」

「出会い頭からご挨拶だなあオイ!」

「バルメ……ではなくライさま、大変ですっ」

「今度はなんだ、グリート?」

「お、なになに妖精? どれどれ」


 ひょいっ、と、なにかを言おうとしたグリートはセンエイに捕まった。


「ひょえええええ! な、なんですなんなんですかぁ!?」

「言葉しゃべれるじゃん珍しいー。なあライくん、ちょっとこれ解剖していい?」

「ひいいいい! お助けくださいライさまあ!」

「まあまあ。先っちょだけ、先っちょだけだからな」

「なんの先っちょだよ?」

「メスだよ。先っちょだけで十分すぱすぱ切れる」

「いやです切られたくない! 助けて!」

「はっはっは大丈夫。痛いのは最初だけだ」

「その後は死んでるから、ってオチじゃないよな?」

「おいライくん、オチ潰さないでくれないか。笑いどころがなくなるだろ」

「いやああああっ! オチで死ぬのはいやああああっ!」

「まあともかく、そろそろ離せ、センエイ」

「ちぇっ」


 言って、センエイはぽい、とグリートを手放した。

 たぶん冗談だったんだろうけど……こいつが言うと、本気でやりかねない感すごいんだよな……


「うあああああ、死ぬかと思いましたあっ」

「で、グリート。なにが大変だって?」

「は、はいっ。あの竜に心当たりがありました! たしか神々のどなたかが、そのお力でもって草原の中に縫い止めて番人としていたものですっ」

「てことは……」


 俺は改めて、遠く炎が揺らめく『草原だったもの』を見た。

 地下にあった遺跡がむきだしになっていて、もはや草原とは到底言えない形ではあるが。


「つまり……遺跡が壊れたから、番人にする機能も失われた?」

「は、はい……」


 言われてみれば。

 弧竜、最初に俺たちが見つかったときは、地面に体当たりまではしてこなかった。

 それに対して、剣の光を天井に当てた後は、躊躇なくその光の打ち上がったところに突進してきた。

 ということは。


「このままだと……どうなる?」

「まあ、普通に考えれば、草原の外も安全でなくなったってことだろうね。さしあたり、次の獲物は僕たちだろう」


 シンが、冷静にコメントした。

 俺は、ため息をついて振り返り、


「悪い。俺だけじゃどうしようもないんで、この後の始末、付き合ってくれ」

「おう。悪いことを悪いと言えて偉いぞ、小僧!」

「ぐへっ!」


 ばんばん! と背中をバグルルに叩かれて、俺はむせかえった。


「よっしゃ竜狩りだ! この事情じゃ神殿も文句は言えねえ、大もうけできるぞ!」

「おいおいペイ、焦るなよ。竜の部位で一番高く売れるのは内臓なんだ。なるべく無事に殺すようにな?」

「ほっほ、そういうセンエイこそやりすぎてはいけませんぞ?」

「戦の風が吹いています」

「まるまる~♪」


 そして物騒な話で盛り上がる魔人一同。むしろ喜んでないか、こいつら。


「よし、全員陣地を丘の中腹に! このぎりぎりの立地じゃ不利だ! あとドクトル・テンとペイは今回有効な武器に欠けるから補助! さっきの声といまの崩落の音で、隊商の連中は全員目覚めてる。避難誘導急げ!」

「俺はどうする?」


 コゴネルはその俺の言葉に肩をすくめて、


「無理すんな。マイマイを守ってくれた時点でおまえの仕事は終わってる。そもそも、この事件はおまえのせいじゃない可能性も高いんだ」

「…………?」


 意味がわからない言葉に、俺は首をかしげた。


「ともかく、いいから行っとけ! そんで、サリを見かけたら連絡してくれ! あいつ、この騒ぎでもまだ来ないとなると、なにかに引っかかってる可能性がある」

「わかった。サリだな!」


 俺は駆け出した。

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