光のない目の幽閉王子
急募:略称
小説自体は書いたことがありますが、なろうには初投稿です。よろしくお願いします。
良い子も悪い子も普通の子も、部屋を明るくして画面から離れて見てね♪
1000年前、この大陸には様々な種族がいた。獣人族、人魚族、鳥人族、魔人族、妖精族、そして人間族。
全ての種族に神がいた。獣人の神シルトヴァーゼ、人魚の神オーゴン、鳥人の神アルタイア、魔人の神オブシディアン、妖精の神ライゼアーテ、人間の神シラヌイ。
六つの種族はそれぞれの国を作り、互いに助け合いながら文明を発展させていった。
しかし、平穏は突如終わりを告げる。妖精の神、ライゼアーテが暴走したのだ。妖精は凶暴化して他の種族を襲い始め、人間と妖精を除く全ての種族が死に絶えた。二つの種族以外の神は、それぞれの国から遠く離れた地で封印された。唯一生き残った人間も、神シラヌイと王家の者を含む僅かな生き残りを残し、後数十名というところまで追い詰められたのだった。
このままでは人間すらも死に絶えてしまう。そう思ったシラヌイは、自身の全ての力を使い、ライゼアーテを封印すると決心した。人間たちは最初戸惑い、彼を止めたが、シラヌイの必死の説得により、彼を送り出すことを決めた。
シラヌイは錫の丘にたどり着くと、ライゼアーテに向かってこう言い放った。
「愚か者! なぜ神の力をこのようなことに使った!」
「楽しいからよ! 妖精以外の人類など消えてしまえばいい!」
説得はできないと判断したシラヌイは、ライゼアーテに向けて宝剣、イゼルリアを力いっぱい投げつけた。剣は流星のように飛び、ライゼアーテの胸を貫いた。
「ぎゃぁぁあああぁぁぁ!」
「終わりだ! ライゼアーテ!」
「許さない、許すものか! シラヌイに、人間に呪いあれ! ……あああああああぁぁぁぁ!」
ライゼアーテはシラヌイに呪いの言葉を吐くと、結晶に包まれて封印された。
シラヌイは力を使い果たし死んでしまったが、人間として生まれ変わることができるようになった。しかし、ライゼアーテの呪いなのか、どんなに生まれ変わっても、25年しか生きられなくなっていた。
〜〜〜
「……だから、シラヌイ様の呪いが解けるように、俺たちは毎日祈ってるんだよ」
「……はい」
「分かってんのか?」
「……はい」
暗い暗い牢獄塔の中に影が二つ、鉄格子を挟んで向かい合っていた。
先ほどまでこの国の宗教、シラヌイ教について説明していた男は、牢に閉じ込められた青年を害虫でも見るかのような目で見つめている。
青年はボロボロの貫頭衣に不似合いな金の手枷と首輪を着け、虚ろな目で、少し微笑みながら男を見上げていた。言葉に覇気はなく、少し力を入れて抱きしめたらシナシナと崩れてしまいそうな、生気のない姿だ。
「お前は本来、この世にいちゃいけねーんだよ。妖精と人間のハーフなんてな」
「……申し訳、ございません」
「ごめんで済むなら騎士団なんてのは要らねーんだよ!」
バチィッ!
「ッ! ……ああ゛っ!」
男は鎖を掴み、青年の首に魔力を流した。魔力は電気に還元され、青年の喉元に激痛を与える。目を白黒させながら石畳に体を打ち付ける青年を、男は征服欲たっぷりの顔で笑った。
コンコン
扉が叩かれ、番兵が入ってきた。
「セドリック神父、神子様がお尋ねになられました。なんでも、王子に伝達があるそうで」
「ああ、そうですか。席を外しましょうか?」
「そうしていただけると」
セドリック神父と呼ばれた男は、人が変わったように穏やかな表情を作った。番兵に連れられて彼が出ていくと、入れ違いに豪華な服に身を包んだ十二歳ほどの少年が、二人の屈強な男を連れて青年の前に姿を表す。
「まだ生きているのですか。忌々しい妖精の血が流れている人間もどきが」
「……」
少年の声は見た目に反して重々しい。当然だ。彼は人間の神シラヌイの三十九代目の生まれ変わり、マルク・シラヌイなのだから。
神としての記憶はほとんど失われているらしいが、その威厳は確かに、かつての自分が偉大な存在であったことを誇示している。
「あなたの処刑が決まりましたよ。アドリーン王国第一王子、ウォルト・アドリーン」
穏やかかつ刺々しい口調で、マルクはウォルトにそう言った。
ウォルトは弱々しく顔を上げ、マルクの青い瞳を見つめる。
「あなたは明日、マルヴァースの森で、この男たちに置き去りにされるのですよ。まあつまり、餓死ということです。−−当然でしょうね。25歳までしか生きられない呪いによって私を苦しめている妖精。あなたにはその血が流れており、かつ、」
「……」
「あなたの魔力は、この国を滅ぼしかねないほど危険なのですから」
嫌悪をむき出しにした表情をしながら、マルクはゆったりと喋る。ウォルトも付き添っている男たちも、何も言わない。
ふぅ、と一息ついて、マルクはウォルトを睨んだ。
「いいですね?」
「ッ! ……はい。分かりました。ありがとうございます」
ウォルトは、蚊の鳴くような声で死刑を受け入れた。
「礼がなっていませんね。いいですか。私は妖精を忌み嫌っているというのに、わざわざここまで足を運び、妖精の血が流れているあなたに死罪を告げにきたのですよ。もっと感謝の意を述べるべきでは?」
マルクはウォルトを見下し、塵を見る目でそう言い放った。鉄格子がマルクの足で蹴られ、ウォルトはその音に震える。どこまでも冷たい、マルクの青い双眸が、いっそう暗く濁った。
「第二王子ノアを、あなたの大切な弟を暗殺することなど容易いのですよ?」
その一言を聞いたウォルトはびくびくと震えながら、精一杯の土下座をした。怯えた目で、自分より六つも幼い少年に畏怖し、懇願する。
「……ありがとうございます、ありがとうございます……こんな穢れた血が流れている僕の死刑をわざわざ、神子であるシラヌイ様の口から通達してくださってありがとうございます……。ですから、どうか、どうか、ノアだけは、弟の命だけは……」
ゴスッ
顔をあげようとしたウォルトの頭を、マルクが踏みつける。
「靴の替えは?」
「ここに」
男に渡された靴に履き替えると、マルクは汚れた靴をウォルトに向かって投げつけた。背中に当たって小気味のいい音がした。マルクは無言で牢を立ち去り、男たちもそれに続いた。
扉が閉まり、牢獄塔に何千目の静寂が訪れる。
ウォルトは扉が閉まるまで土下座をしながら、ずっと、弟、ノア・アドリーンのことを考えていた。
今回書いていて一番興奮したポイント:電流を流されて苦しむウォルトくん