バミューダ救出作戦
「大変たいへ~ん、帝国の民間船がバミューダ宙域に飲み込まれたって!」
ゲスな将軍が出撃してから数日。艦星セキレイに、民間船救助の依頼が舞い込んだ。
本来なら護衛艦を割いて救助にあたるところをとても回せる数がないとの理由から、私たちコスモエリートにお役が回ってきた。
『アイカ』
『はいはい、バミューダ宙域ですね。バレス、ミュース、ダラスという三つの小惑星の狭間にある宙域のことで、そこに入り込むと操縦不能に陥るらしいですね。恐らく引力が均等を保っているために起こっている現象かと』
まるでバミューダトライアングルね。どうして近付いちゃったんだか。
『この宙域を知る者は避けて通るのが常識となっており、ゴーストシップが出るという噂が広まっているとか』
それはそれで面白そうね。一度じっくり調べてみたいもんだわ。
「リズィ、なぜ飲み込まれたのかは聞いておりませんの?」
「そこまでは知らないよ~。ウッチが聞いたのは飲み込まれたって事実だけだし」
「そうですか……」
詳しい情報が得られずに肩を落とすマシェリー。確か両親が来るって言ってたし、その民間船に乗ってるのね。
「あ、何だったら仕入れて来る~? 指令部の人なら何か知って――」
「そこから先はボクが話そう」
リズィの言葉を遮りシモザワ指揮官が前に出てきた。
「すでにおおよその事を聞いてるだろうが、帝国の民間船がバミューダに捕らわれてしまった。ボクらに課せられた任務は、速やかに民間船を救出したのち、当艦星セキレイまで護衛することだ」
なんでそんな事のために――なぁんて思っちゃいけない。外に出て敵を撃破しなきゃDPが貯まらないし、私にとってはチャンスだったりするのよ。
「例の如く人員を割けないことから、今回はボクとアイリ君、それからフレディア君とリズィ君にアムール君。以上の5名のみで行う」
――というビックリするほどの少人数。例のゲスな将軍の功績だわ。
だけど私にとっては有りがたい状況だったりする。敵と遭遇してもフレンドリーファイヤーの可能性が低くなるからね。
じゃ、ひとっ走り行ってきますか。
★★★★★
「――で、なんでマシェリーまで居るの?」
「わたくしが行きたいと思ったからですわ」
「私の機体に同乗してる理由は?」
「わたくしの出撃が許可されなかったからですわ」
「おとなしく艦星で待ってなさいよ」
「お断りしますわ」
「はぁ……」
いつの間にか後部座席に座っていたのよ。艦星を出てから気付いたらのもあって、やむを得ず一緒に連れてくことにしたわ。
『こちら帝国民間船305号、誰か応答してくれ!』
鬼気迫る感じの声がスピーカーから響く。305号は例の救出対象の船よ。
『こちらはセキレイ所属のコスモ隊、指揮官のシモザワだ。何があった?』
『共和国の艦隊により攻撃を受けている! 護衛艦だけじゃとても防ぎきれない! 大至急救援を頼む!』
『今向かっている! もう少しだけ耐えてくれ!』
『分かった。帰還場所が棺桶にならないことを祈っておくよ』
さてさて、急ぎなら跳躍する必要があるわね。
そうなると問題なのがマシェリーよ。跳躍すると外に放り出しちゃうから、迂闊にできやしない。
『よしみんな、3つ先のアウトポイントまで跳躍しよう。ボクに続いて――』
「あ~ちょっとすみません。指揮官たちで先に行っててもらえます?」
「何を言うんだアイリ君。この作戦はキミがいないと成功しないよ」
うん、まぁそうなるわよね。
『アイカ、急いで対策を考えて』
『それなんですが、タイミングが良いのか悪いのか、4機の戦闘機がこちらに接近中です』
『4機? それってまさか……』
『はい。あの遊撃隊です』
ふむ。先行してもらう口実としては充分だし、グッドタイミングよ。
この際、中二病なのは目を瞑ろう。
『指揮官、共和国の遊撃隊カーマインが接近してくるわ』
『カーマインだって!? くっ、こんな時に……』
『私が相手をするから、指揮官たちは先を急いで』
『やむを得ないか……。分かった。民間船も気になるし、先に様子を見てくるよ』
『じゃ~後でね~』
『すぐに追いかけてきなさいよ。フレディアちゃんを待たせたら承知しないからね』
『……アイリなら楽勝そう』
そろそろみんなも私の強さを認めつつあるわね。ま、あの遊撃隊ならアムールの言う通り楽勝だわ。
さぁ出て来なさい、狂戦士ども!
ブゥン!
『おい貴様、たった1機でやるってのか?』
『我々も舐められたものだな』
『でもチャンスでんがな。たかが1機、楽勝でんがなまんがな』
『ゲハハハハ! いいぜいいぜぇ、俺は勝てさえすりゃ文句は言わねぇ』
四分割されたスクリーンにカーマインの4人が映り込む。
中二病の狼にキザっぽいフクロウ、面白い顔の豚に数日後には死にそうなワニと、何とも個性豊かな獣人たちね。
「アンタらごとき、私1人で充分よ。DPに変換して役立ててやるから有りがたく思いなさい」
『DPとやらは知らんが、その勇気は認めてやろう。しかしだ、勇気と無謀は別物。貴様は自分に酔っているにすぎん』
『だったら撃破してご覧なさいよ。召喚したステルス機に完敗して退却した挙げ句、艦星が爆発に巻き込まれてえらい事になったのを知ってるんだからね』
『クッ、なぜそれを……』
それはもちろんアイカのお蔭。
「そ、そんなに挑発して大丈夫ですの? こんなところで犬死には嫌ですわよ?」
「まぁ見てて。問題ないから」
「ですが前回は逃げるだけで精一杯で……」
「あ、それね。早く戻らなきゃ夜通しになると思ったから、帰還するのを優先したのよ」
「で、では……」
「うん、全く問題ないわ――フレイムキャノン!」
ドゴォォォン!
『ゲッハァァァァァァ!』
まずは1機。死にそうな顔をしていたワニの機体を粉々に砕いてやった。
『クソッ、アンドリュースがやられた!』
『な、なんや今の兵装、あんなん聞いてへんがなまんがな!』
『だがアンドリュースは我々の中でも最弱。カーマインの面汚しよ』
まだフクロウは余裕そうね? 次はコイツにしよう。
『フフ、後ろがガラ空きだぞお嬢さん。まだまだトウシロだな』
『フン、甘いわよ――フレイムウォール!』
ボボボボボォウ!
『んな!? ほ、炎の壁が目の前にぃぃぃぃぃぃ!?』
ボォォォン!
はい2機目。展開した炎の壁に突っ込み、反対側に抜けることなく燃え尽きた。
『チッ! まさかレオまでも……』
『マズイでんがな! こりゃあきまへんがな!』
さて、次はどっちにしようかな~♪
『こうなれば仕方ない。ピグマー、作戦の練り直しだ。離脱するぞ!』
『も、もちろんでんがな!』
あ、コイツら、跳躍準備に入りやがった。
『待てこらーーーっ! 喧嘩売っといて逃げる気!?』
『逃げる? バカを言え、更なる進化の行進だ。左目の傷が深い今、より洗練された策を得る必要があるのだ』
早い話が、仲間がやられたから逃げ帰って作戦を練ると。というか、一々通訳させないでほしい。
『また会う日まで、左目は預けとくぜ』
『貰ってないけど要らないわよ!』
『フッ、遠慮するな。じゃあアバヨ』
チッ、狼には逃げられたか。せめて豚だけは撃ち落としてやる!
『ヴォルフはん、待ってほしいでんがな! ワテまだ跳躍が――』
『土に還るんなら手伝ってあげる――フレイムボム!』
ドッゴォォォォォォン!
『ブッヒィィィィィィでんがな!』
よし、間に合った。あわや跳躍されるかという直前で爆破に成功よ。
「やはりアイリの敵ではありませんでしたね。彼らも力の差を思い知ったことでしょう」
マシェリーは取り巻きと一緒に体験したものね。シミュレーションだから死なずに済んでるだけで。
「しかも飛行形体に成らずに戦えるのですから、相手にしたいとは思いませんもの」
「飛行形体って?」
「……まさかご存知ありませんの? 艦から機へ。艦のままなら火力防御共に高いままですが、機に比べて精細な動きができません。先ほどのようなケースだと、戦闘機へと形体を変えて戦うのが一般的でしてよ」
それは知らなかった。別の機会に試してみよう。
『――で、アイカ。DPは貯まった?』
『はい。それなりの猛者だったようで、チューンナップが楽しみなくらい貯まりましたね』
それは良かった。いずれは大型艦にしてやろうと思ってるからドンドン貯めてこう。
『もう一つ朗報です。マシェリーをゲスト登録することで、跳躍による放り出し問題は解決しました。いつでも飛べますよ』
それは有りがたい。通常航行だと日が暮れちゃうものね。
『アイカ、指揮官のいる場所まで跳躍開始!』
『了解です』
★★★★★
DPが貯まり、ホクホク気分でみんなの元へと飛んでみれば、例のバミューダ宙域のやや手前で足踏みしている状態だった。
『待っていたよアイリ君。やはりキミがいないと作戦を遂行できそうにない』
『敵艦隊ですか?』
『うん。護衛艦は全て沈黙し、民間船が敵の手により引き上げられてしまったんだ』
一歩遅かったか。
『このままだとバミューダから離脱されちゃうよ~。アイリの馬鹿げた力で何とかならないの~?』
『何とかしたいところだけど……』
スクリーンを見る限り、緑マークが多数の赤マークに囲まれてるのが見える。この緑が民間船で、敵を一掃しようとすれば確実に巻き込んでしまう。
個別に撃破してると逃げられる可能性が高いし、何とか敵を引き離す必要がある。
「お願いしますアイリ! このままではわたくしの両親が連れ去られてしまいます!」
「ちょ、揺らさないで! まずは落ち着きなさい!」
「ああ、せめて――せめてわたくし達だけでも単身突入を!」
「だから落ち着いてって!」
「お父様――お母様ーーーっ!」
くっ……どうすればいい? いっそこのまま突撃しようか? けど見る限りは民間船に敵兵が乗り込んでる可能性が高いし、人質に取られるのが目に見えている。
何とかして内部に侵入できれば……
フィキーーーン!
【宇宙魔力の検出を確認。眷族を解放できます】
え……な、何? この脳内に流れたメッセージは?
『お姉様、どうやらわたくし達3人に向けたメッセージのようです』
『達――って事はマシェリーにも?』
『そのようです。元々の素質なのか、膨大な宇宙魔力がマシェリーから放たれてるようで、言わば彼女の功績ですね』
この土壇場で凄く有りがたい。
【召喚したい眷族を一体のみ選んでください。選択権は貴女です】
「え、わ、わたくしですか?」
謎のメッセージが指したのは、なんとマシェリー。
「あの……そもそも眷族とは……」
「私の手下みたいなものよ。この状況を覆せると思う眷族を召喚してみて」
「分かりました。偶然にも最初に目についたこの名前に致します」
【選択完了。召喚座標を決めてください】
「民間船の内部に決まってますわ。――ここです!」
【承認。召喚に移ります】
マシェリーが誰を選択したのかは見えなかった。さてさて、誰が召喚されるやら――
【GAの召喚に成功しました】
は? GA!?
それは以前、敵対していたギアヒューマンという機械人間だった。




