キャプテンキースを追え!
『確かこの辺りのはずじゃが…………おお、あれじゃあれじゃ!』
竜形態のアンジェラに案内され、連合軍の母艦が漂流する宙域へと飛んできた。目標を発見し、いざ乗り込もうとしたところで異変に気付く。
「こちらの接近にまったくの無反応? どうも様子が変だわ」
まるで無人のように反応がないなんて、まさか罠でも張ってる? いや、それにしちゃ護衛艦もないし、できることは限られてくる。
『まぁよいではないか。様子が変でも敵には変わらんだろう? なぁに、妾が一息で――』
「――破壊したら1日御飯抜きよ」
『ウグッ――――ア~ツツツツ! 寸止めしたせいで舌が焼けそうじゃ!』
「ったく、神の眷属がどうなったかを知る必要があるんだから、無闇に壊しちゃダメ。何があったか確かめたいし、中を調べましょ」
口から煙を吐くアンジェラを他所に、眷族たちを転移させる。驚いたことに中はもぬけの殻状態で、人っ子1人いやしない。
『こちらRU、司令室にて血痕を見つけたが、やはり誰も見当たらない』
『こちらRA、一通り見たけどだ~れもいないね。破棄されたって感じかな?』
念のためにとギアヒューマンを転移させたけども戦闘の必要はなかったっぽい。アンジェラの探知波動でも生命反応がロストしてるらしく、誰にやられたのかも気になるところよ。
『お姉様、あの母艦を解析したところ、このポイントにブラックボックスが設置されているのが分かりました。音声でのやり取りが残されているかと』
「ナイスアイカ!」
設置ポイントは――――司令室!
「RU、その部屋をくまなく探して。ブラックボックスがあるはずだから」
『了~解――――っと、これか?』
「早っ――――というか速っ!」
目敏く発見できたらしく、RU手には金属製のプレートが乗っかっていた。コスモアイリーンに持ち帰らせ、さっそく解析開始。すると驚くべき事実が明らかに!
『よぉ、モルドレールさんよ。随分と派手にやられたみてぇじゃねぇか。大艦隊が聞いて呆れるぜ?』
『誰だ貴様? まさかここまで追ってきたというのか!』
若い男と渋めの男、この二人の声が聴こえる。大艦隊ってことは、渋い男が連合軍の司令なんでしょうね。
『跳躍準備開始! 早急に完了し――』
『待ちなぁ! 何か勘違いしてるようだが、俺はさっきの奴らとはちがうぜ?』
『……何? どういうことだ?』
『別口だって言ってんのさ。さっきの奴らはイレギュラーな介入要素。つまり、異世界からの侵略者なんだとよ』
『侵略者……だと?』
『そうさ。でもって俺が本物のキャプテンキースだ。まぁ一つ宜しくな』
若い男はキャプテンキースと判明。さらにソイツはスキルを使用したらしく、渋い声の男が部下たちに拘束されたようだ。
『しっかし残念だなぁ? もう少し食らいついてくれるかと期待してたんだがな。やっぱロージアの言う通り期待ハズレだなぁ』
『バカな! 俺はロージアに期待されていたはずだ。何を根拠に――』
女神ロージア? そうか、コイツが黒幕ね!
他の会話からもロージアからスキルを与えられたらしい事も言っていたし、すべての元凶と言ってもいいわ。
『ま、俺にも勝てない、奴らにも勝てない、そんなテメェにゃ用はねぇ。おとなしく消えな!』
『ターーーン!』
その銃声を最後に音声は途切れている。僅かに聴こえたのは部下たちが立ち去る足音だけで、他には何も残されてはいなかった。
『キャプテンキースに女神ロージアですか。スキルを与えた理由は不明ですが、現状だと宇宙を支配しかねないほど危険な存在です』
「危険――ってどっちが?」
『両方です。お姉様の保護下に置かれていない者たちではキースに対抗するのは不可能。そんな彼にスキルを与えたロージアに対しても同様。つまり現時点でわたくし達以外は誰も手出しができないのです。放置する理由はないでしょう』
アイカの言う通りね。ミルドの円盤がキースの信者みたいなのに襲われた時も危なかったらしいじゃない。だったら危険を排除するのみよ。
だけど……
「キャプテンキースってどこにいるの?」
『それが最大の難点ですね』
倒そうにも居場所が分からないんじゃ探すしかない。当然向こうも隠れてるだろうし、簡単には行きそうにないなぁ。
「アイカ、何かいい方法はない?」
『艦内に広告を出すくらいなら可能ですが』
それで効果が見込めるのは艦内に知ってる人がいる場合だけよ。
「RU?」
「そこらの宙域を探すなら可能だぜ? 何年かかるか分からんがな」
それは最後の手段にしたい。10年単位でかかりそうだもの。
「じゃあRAは?」
「う~ん、取り敢えずお茶しながら考える? ボク美味しいケーキ屋さん見つけたんだよね~♪」
……は?
『ふむふむ、それはいい考えです。わたくしの分も忘れずに願います』
「こらこら、勝手に話を進めないこと!」
ケーキ屋なんかに行ったらアイカが機能不全に陥るじゃない。色々と危険だから絶対にダメよ。
「………」チョイョイ
「ん? なぁにペサデロ?」
「……アイリのスマホが鳴ってる」
「あ!」
そうだ、マナーモードにしてて気付かなかったわ。さっすがアサシン、僅かな音も聞き逃さないわね。
「でも誰からだろ――ってお姉ちゃん!?」
番号と共に通知された画像はアイナお姉ちゃんの顔写真だった。ちなみにお姉ちゃんは私のセカンド故郷であるイグリーシアにいるわ。なぜかっていうのは長くなるから省略ね。
「もしもしお姉ちゃん、何かあったの!?」
『ん~~? 何もないよ~? そんなに慌ててどうしたの~?』
「いやだって、珍しくお姉ちゃんから連絡がきたものだから……」
『あらあら~ゴメンね~? こっちは元気にやってるから大丈夫だよ~。それよりアイリちゃん困ってるでしょ~?』
「え……い、いや、困ってるのは確かだけれど……」
お姉ちゃんはいつもそう。私が何も言わなくても鋭く感付いちゃうのよ。普段はおっとりしてるのに不思議よねぇ。
『やっぱり困ってたんだね~。うんうん、そんな気がしてたんだ~。だからね~、お姉ちゃんが助けてあげなきゃって――あ!』
「あの……今の【あっ!】と言うのは……」
『ゴメンねアイリちゃ~~ん。実は私も困ってたんだぁ。ガルドーラの冒険者ギルドが移転するらしくって~』
いやそれ、今はどうでもいいです。移転とか勝手にやらせとけとしか……。
「……他はある?」
『取り敢えずはないかな~。あ、それでね~、アイリちゃんって宇宙にいるじゃな~い? 凄いよね~、イグリーシアってどんな風に見えるの~? ちょっと興味あるよね~』
「私はまだ見てないわよ。それより話が脱線してるから……」
『あ、ゴメンゴメ~ン。多分だけどね~、探し物ならあの子たちが協力すればいいと思うの~』
「あの子たち――って、ギアヒューマンの4人のこと?」
『さっすがアイリちゃ~ん、話が早いわ~』
お姉ちゃんは遅いけどね――とは言わないでおこう。
『い~い? 絶対に4人で協力させること~。そうすれば何とかなると思うから~』
「いや、何とかなるって……ホントに?」
『ホントだよ~? とにかく頑張らせてみて~』
「分かったわ」
今さらだけど、ギアヒューマンというのはGA、RU、DO、RAの4人のことよ。彼らは銀河メンフィス共和国に開発された兵器だから、それに関連するであろう女神ロージアにも何らかの影響を与えるのかもしれない。
『それじゃあ頑張っ――あ、重要なことを忘れてたわ~』
「え、何!?」
『お土産宜しくね~♪』
「…………」ズルッ!
最後に宇宙のお土産を要求され、スマホを切られた。ったく、どこまでもマイペースなお姉ちゃんだわ……。
さて、お土産はテキトーに選ぶとして、さっそくGAとDOも召集してみた。
「……我、何をすればいい?」
「お姉ちゃんが言うには、とにかく頑張れ――だそうよ」
「ま~たアイナちゃんってば意味不明なことを……。マスターも大変よね? 天然なアイナちゃんに振り回されて」
「そう思うんなら頑張って」
私の口からはそれしか言えないし。
「そんじゃま、とりあえず念じてみっか?」
「うん、ボクもそれしかないと思う」
そう言って4人が円陣を組み、集中力を高めだした。いったい何が起こるのか、もしくは起こらないのか、私には見守ることしかできない。
シュゥゥゥ……
「ん?」
すると一分も経たないうちに4人の中心に白く輝く光の玉が現れ、壁を突き抜け何処かへと飛んでいってしまった。
「……今のは?」
「それよりこれ、玉が飛んでいった方向に向けて光が続いてるわ。マスター、これを辿ればいいんじゃない?」
コスモアイリーンの外を覗けば確かに光が続いていた。
「アイカ、この光が示す方に!」
『お任せください』
少なくともこの先に何かあるのは確定よ。待ち受けるのはキャプテンキースか、はたまた女神ロージアか。いずれにしろ、必ず倒してやるんだから!




